表紙
目次

■■■ 絵が語る 2016.1.27 ■■■


青絵の世界

葛飾北斎の冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏に魅了されるのは、擦り色の濃い「青」が鮮やかであることも大きく寄与しているのは間違いない。

もともと青色は、植物性染料の露草青を用いていたらしい。退色するので、次第にJapanblue/藍を用いるようになったようだ。ただ、Indigo/インド藍[植物染料]より色調は柔らかな割に、強力でよいのだが、色の濃淡を出したい絵画には生憎と不向き。役者絵の青がベタ的に強烈なの藍しかなかったこともありそうだ。
そこで登場したのが、北斎ご愛用の「Berlinblue/ベロ藍」ことプロシア発明品のフェロシアン化鉄合成顔料。Prussianblue/紺青のこと。これが一世風靡。フランスでも印象派の画家達が広重ブルーと持ち揚げ大人気を博した訳だ。(製造方法等の違いによる別名同色:Turnbull'sblue.Miloriblue.Chineseblue.Parisblue.Bronzeblue)
同類だが、少々異なる色としては、Ironblue。

この青と対比されるのが、ヨハネス・フェルメールの「真珠の耳飾りの女」で知られるブルー。
こちらは、ラピスラズリ(瑠璃)から。通称、Ultramarineblueだが、微妙に違う。言うまでもなく、それは故郷のデルフト焼のDelftblueでもある。
ただ、ラピスラズリがこの頃に突然登場した訳でなく、交易社会が生まれ、高価とはいえ絵の具に使えるような価格になったということだろう。よく耳にする色名にしても、それは宝石そのもの。
Aquqmarine(蘭玉)やTurquoise(トルコ石)の色である。

そもそも、4,500年前に、青い絵はすでに存在しているのである。顔料の元祖はここにありだが、その後さっぱり進歩がなかったのである。Egyptianblue[壁画]であり、Nileblueでもある。
   Egyptian blue: the colour of technology By Philip McCouat 2013, 2014
要するに、コバルト系の顔料が使われていたということ。Smalt/花紺青[コバルトガラス](最古)Enamelblue[コバルトガラス]。もっぱらそれは陶磁器の世界な訳だが。そして、西洋貴族は東洋の青に惹かれることになる訳だ。それが、Orientalblue[磁器青絵磁器]

現代でも、こうした色材で勝負をかける画家は存在する。青色の染料こそ非物質を現す色だというのである。
Yves Klein(1928-1962年)International Klein Blueはそんな色材を用いたモノクローム絵画で知られている。
IKB 191 - Monochrome bleu@Wiki
一種の、Blue Heavenということかナとも思うが、オレンジ色のモノカラー絵画もあるそうだから、本当のところはよくわからない。

絵画ではないが、現代の「青」とは間違いなく、「地球は青かった」の一語。ガガーリンはソ連共産党員の威信を背負っていたから、科学的に観察しているかのような言い回しをしているが、唯物論を超越した感覚を覚えたのではないかと推測する。1961年には、その時の印象として、「青い絵」に言及している。・・・"Rays were blazing through the atmosphere of the earth, the horizon became bright orange, gradually passing into all the colors of the rainbow: from light blue to dark blue, to violet and then to black. What an indescribable gamut of colors! Just like the paintings of the artist Nicholas Roerich."
言うまでもなく"Himalayas-Blue mountains"のこと。
   (C) Nicholas Roerich Museum NY

 絵が語る−INDEX >>>    HOME>>>
 (C) 2016 RandDManagement.com