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2003.1.16 |
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中国EMS企業の先進性…中国が「世界の工場」化しているのは、まぎれもない現実だ。日本経済低迷で、この流れが加速している。 日本の大半の製造業は、今もって設備過剰と余剰人員問題を完全に解決していない。最低限の対応でしのいできたのが実情だ。換言すれば、過大な需要を前提とした経営を続けてきたのである。しかし、世界的な経済低迷が迫ってきたから、もはやそうした姿勢は続けられない。 まずは、設備除去と人件費カットが不可避となる。そして、債務軽減を急ぐ。この状態で、熾烈な国際競争に勝ち残るためには、中国企業への生産委託を進めることが、一番の早道といえよう。 特に、体力を消耗している企業は、原材料や仕掛品の保管にかかる資金量を減らし、経済変調リスクを生産委託側に負わせるメリットは極めて大きい。生産委託の進展は当然ともいえる。 中国工場の競争力は、すでに、先進国が太刀打ちできるレベルを越えている。 リクルートコスト/福利厚生/交通費等、すべてを含めた実質人件費で見ると、日本でかかる費用の数パーセントにすぎない。従って、生産コスト全体に占める労務費の割合は極めて小さい。 中国では、日本の生産人口に匹敵する位の大量の労働者が、地方の農村地帯から工場地域に短期流入してくる。このため、労賃上昇は発生しないし、雇用調整に伴う労働争議も発生しない。 しかも、労働意欲は高く、学習熱心で、残業大歓迎の状況にある。工場近隣に宿舎を提供すれば、生産量増大にも即時対応できる。コスト以上のメリットがあるのだ。 もちろん、工場は24時間フル操業体制だ。もともとの建設費用も安価だが、この体制で生産するから設備償却は短期間で完了する。償却費負担は極めて軽い訳だ。生産性向上が図れる新型設備導入も容易だから、コスト競争力強化が続く。 さらに重要なのは、中国生産の製品品質の高さである。先進国では、抜き取り検査や、機械化された点検しかできないが、労賃が安いため、必要なら全品検査を行なえる。このため、出荷後の不良率が極めて低いのである。日本製より、安価で故障率が低い可能性さえある。 このメリットを徹底的に生かしたマネジメントを進めたのが、EMS企業である。当然のことながら、在庫圧縮と調達コスト削減についても、徹底的な展開が進んだ。規模の経済を取り入れた、グローバルな最適調達を行っている。 日本企業のように系列や慣行に縛られることがないから、この点でのメリットも大きい。納入業者にコストを移転させる以外に対策が無い日本企業とは異なり、グローバル/ローカルの最安値調達の仕組みを考え続けてきた。労働コストの割合は小さいので、中国EMS企業にとって、調達コスト削減は生命線だ。そのため、効率的な調達体制ができあがっている。 工場周辺には、様々なサポート産業が集積しており、文字通りジャスト・イン・タイムで加工品が納入される。日本でいえば、大田区や東大阪に当る下請け加工の工場群が整備されている。要求性能に合わせて、品質/価格/納期を考えた最適発注先を選定できる。このことは、産業集積が十分進んでおり、完全に製造ネットワーク化が完成した、といってよい。この点では、世界最強と言える。 こうなると、すべての部品を世界最安値で即時に調達できる、と主張する企業が現われるのも当然だ。 実際、EMS企業に納めている日本の部品企業は収益圧迫が顕著だ。ハイテクパーツを大量生産する日本の部品メーカーは利益があがらず、ローテクの組み立てに徹するEMS企業が高収益を謳歌している。巨大なバーゲニングパワーの下で、まともな収益さえ得られない部品企業もあるのだ。 しかも、この製造ネットワークを支える交通インフラの整備スピードが桁違いに早い。[高速公路の統計を見ると、1995年は2,141公里、2000年は16,285、2001年が19,437である。](http://www.highway-china.com/0207103_zong.htm) 当然のことながら、EMSは物流の電子化も一気に進めているし、港湾手続きもこの体制を支えるべく、大きく様変わりしている。このため、中国工場からの運送経費は、日本国内工場からの運送経費とたいしてかわらない。 こうした状況をつぶさに観察すれば、中国の「世界の工場」化を、先進国における不可価値の低い部分の中国移転とは見なせないことがわかろう。どう見ても、斬新なマネジメントによる、新しい生産の仕組みが立ちあがりつつある。しかも、EMS企業間競争が激化しているから、マネジメント水準はさらに高まるだろう。 今や、生産分野のマネジメントを学ぶなら、中国EMS企業を訪問する時代、といえよう。 (付記) 稲垣公夫著「EMS戦略 企業価値を高める製造アウトソーシング」(ダイヤモンド社 2001年)がEMS業界をまとめた本として有名である。 尚、IBMが仏ボルドー工場をソレクトロンに売却したのがEMSのはしりである。 米国では、ファンドが大企業の工場を買収し、EMSへ長期リースする。EMSはコンティンジェント・ワーカーを活用した雇用量調整と、受注量確保により、労働コストを抑制し収益を回復させる。 尚、日本企業も、正規従業員を圧縮して、類似の労務体制を敷き始めている。特定機能サポートのために期間雇用する契約社員、低労賃常勤形態のパートタイマー、即戦力の派遣人材、雇用調整のための短期契約の請負人材の4本柱だが、請負人材を増やすことで競争力の維持を狙っている。 アジアの先進性の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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