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2003.6.16
 
 


将来性を買われる台湾IT機器メーカー…

 ビジネスウイークの「Info Tech 100」が話題になり始めてから、約5年経つ。IT業界の企業番付として、定着してきたようだ。
 これは、S&Pのデータを使用した総合評価結果である。従って、日本のIT産業が投資家にどう見なされているかが、一目瞭然である。

 2003年5月現在のリストには、日本から、ヤフー・ジャパン、通信企業3社(NTTDoCoMo, KDDI, JT)、エレクトロニクス機器メーカー5社(キャノン、シャープ、パイオニア、リコー、カシオ)が入っている。(http://bwnt.businessweek.com/it100/)
 日本の大手電機はシャープ以外登場しない。要するに、様々な事業を抱えている日本の伝統的大メーカーのパフォーマンスは余りに悪すぎるのだ。特徴が無い中途半端なモノ作りをしている日本企業の魅力は薄れたのである。(もっとも、1999年はNTTDoCoMoのみだったし、2000年はこれに部品企業1社と半導体装置メーカー1社が加わった程度だから、以前よりは日本企業の魅力は増したと言えないこともない。)

コンピュータと周辺機器企業
日本 5社
(キャノン、シャープ、パイオニア、リコー、カシオ)
台湾 10社
(HON HAI PRECISION IND, COMPAL ELECTRONIC等)
韓国 2社
(SAMSUNG ELECTRONICS, LG ELECTRONICS)
米国 6社
(DELL COMPUTER, WESTERN DIGITAL, HEWLETT-PACKARD等)
 これに比し、台湾企業は大いに期待されている。表のように、コンピュータと周辺機器分野では、10社が選ばれた。しかも、キャノンより上位に2社、キャノンとシャ−プの間には5社がランクインしており、評価が高い。(IBMはサービス分野の企業に分類されている。)

 これは驚くような結果ではない。IT機器/部品業界での地位変化が急速に進んでいるからだ。

 情報ハードウェア製品の2002年生産額は、1位米国、2位中国、3位日本、これに、台湾、シンガポール、英、韓国と続く。(TCA発表データ)
 世界全体の生産額成長率はプラス12%だが、中国(25%)と韓国(24%)が成長を支えたともいえる。韓国の急成長は、LCDモニタとノートPCの出荷量増加といえるが、中国急成長はまさしく世界の工場化といえる。こうしたなかで、日本と台湾だけが、10%を越える大幅なマイナス成長に見まわれた。特に、20%近く落ち込んだ日本が目立つ。このため、日本は中国に2位の座を奪われた。 (2003年6月6日掲載 http://www.ippc.com.tw/itinfor/itinfodeatle.asp?id=903)

 この変化は、台湾企業にはプラス、日本企業にはマイナスに働いている。
 「台湾の情報ハードウェア産業は世界における投資効果が現れ、中国との分業体制も成熟したため、世界市場におけるシェアが上昇」した。ところが、日本企業はポジションをさらに後退させた模様だ。
 これでは、台湾企業が注目を浴びるのは当然と言える。

 例えば、Hon Hai(鴻海)の経営方針では、中国との関係が、始めからはっきりしている。
 「time to market、time to volume、time to money」を考え、バーチャル・プロトタイピングから現実の試作設計に移行するまでを米台間で行い、試作設計/型おこしから成形/組立といった大量コピー作業は台中間で行う体制を早くから敷いてきた。この体制を強化するため、リクルートも積極果敢だ。
 当然ながら、「選顧客」も徹底している。ケータイやPHSのリーダー企業から大量受注を実現している。
 モデル迅速開発と大量コピーの力量を活かせるように、強力なビジネスの仕組みを完成させ、さらに磨きをかけているのだ。(http://www.honhai.com.tw/about/compete.htm)

 ここまで力量が上がれば、特定製品のリーダーでない限り、日本企業のモノ作り技術では、とうてい太刀打ちできまい。特徴無きメーカーに将来性を感じないのは、当然の流れといえよう。

 この先研究開発で勝てそうになければ、日本企業は、大企業であっても、投資家から見捨てられることになろう。


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