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2003.12.28 |
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Vogel流中国論…Ezra F. Vogel氏が2003年12月5日付けWashingPostに「China's Intellectual Renaissance」を寄稿している。ケ小平が中国を開放したのは、1978年。ケの死後18年後にして、早くも目標にしていたGNPを達成した。・・・と指摘し、中国の将来性を力強く語っている。 (http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A37127-2003Dec4.html) 中国にとってのルネッサンスが到来したと見ている訳だ。Vogel氏によれば、中国社会は完璧に変わるらしい。 どこかで聞いた話ではないだろうか。 そう、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」である。 「学ぶ」姿勢の日本を徹底的に褒め称えた本である。日本でベストセラーになったのは1979年のことだった。 さらに、1986年には、Pax Nipponicaの時代とまで持ち上げてくれた。 (http://www.foreignaffairs.org/19860301faessay7788/ezra-f-vogel/east-asia-pax-nipponica.html) 結果はいわずもがな、である。 今度は、西洋と中国の文化が融合して、新しい中国ができる、と期待している訳だ。 Vogel氏の主張は、アメリカに留学して知識を十二分に吸収してから帰国する中国人達が改革の核となるというもの。 HarvardのKennedy School of Governmentでの象徴的な動きを示して、その意義を力説している。 ここには、通常の留学生以外に、人民解放軍から送り込まれた学生や、中堅官僚が参加しているそうだ。米国流の効率的な行政の進め方を学ぶ訳である。 もちろん、Business Schoolで学ぶ留学生もいる。 こうした留学生が本国に戻って大活躍するのは間違いないだろうが、そのことで文化が変わる、という理屈には、飛躍を感じる。 日本の実例を見るにつけ、そう簡単に改革ができるものだろうか、との疑問が湧く。 少なくとも、日本の場合、数多くの米国留学帰りが活躍していたにもかかわらず、文化はたいして変わらなかった。 問題に直面しても変身することはなかった。優秀とされていた人達の実像も明かになってしまった。問題解決能力ゼロで、真面目に対処する意志さえない人達が大勢いたのである。 日本は駄目だが、中国なら大丈夫、とは思えないのだが。 しかも、中国が抱えている問題は、1990年代の日本とよく似ている。社会の仕組みを変えないと、解決できない問題に直面しているのだ。 なんといっても、銀行の巨大不良債権問題が大きい。債務者の国営/公営企業の解体/再生と、金融システムの大改造が急務である。 次ぎに、国際競争力の無い業界の保護問題を解決しなければならない。WTO加盟で、市場開放が迫られているからだ。 その上、国内経済は好調を通り越して過熱状態に入ってしまった。バブルと言って間違いないだろう。このバブルを潰して安定成長路線にのせるのは簡単ではなかろう。 日本にとっては、なつかしい問題ばかりだ。といっても、日本は、未だに解決できないままだが。 ところが、問題はこれだけではない。独裁政治と発展途上国としての悩みが重なるのだ。 バブルの裏側には、地方と都市との格差の急拡大問題が存在する。社会の不安定化要因である。 そらに、SARS騒動で隠蔽体質が暴露され、AIDS問題が顕在化してきた。暗部が暴かれ始めると、政権も揺らぎかねない。 そもそも、共産党独裁の仕組み自体が変更を迫られている。といっても、人民解放軍の力で成立している政権だから、簡単には体制変更がきかない。 その上、台湾独立運動や、チベットや蒙古での民族闘争の火種を抱えている。対応を誤れば、戦乱を引き起こしかねない。 このような大きな国内政治問題を抱えているだけでも大変なのだが、外国との政策調整も山場に入っている。 人民元切上げ圧力は増す一方だし、隣国北朝鮮の政治/軍事状況も流動的だ。 中国はエネルギーや食糧の輸入国でもあるから、この確保問題も頭が痛い。 これだけ深刻な問題が山積みになっている国が、米国留学で学んだ知識を生かす位で、解決できるとはとうてい思えない。 ・・・と深刻に考えるのは馬鹿げているのかもしれない。 Vogel氏は、中国がグローバル経済圏にさらに一歩入り込み、米国政権が中国政府と緊密で良好な関係を築くために、影響力を行使しているだけなのかもしれない。 Harvard引退後は、Lee Kuan Yewやケ小平のように引退後も影響力をふるうつもりは無いと語っていたのだが・・・ (http://www.fas.harvard.edu/~asiactr/mas/summaries/MAS_050500.htm) アジアの先進性の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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