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2004.4.1
 
 


インドへの雇用流出の意義…

 米国大統領選挙を見ていると、論点は2つに絞られているようだ。1つは、言うまでもなく、対テロ/イラク戦争である。もう1つが、民主党が争点としている雇用問題である。
 後者は、ブッシュ経済政策による雇用増が上手くいかない点をつく、というより、インドへの雇用流出を放置していることへの痛罵が目につく。

 民主党がグローバリゼーション反対派に変貌したように映る。
 票目当てとはいえ、とんでもない動きだ。

 そんな背景下で、THOMAS L. FRIEDMAN 氏がNYTimes に面白いコラムを書いている。(「Realizing 'The Great Indian Dream' 」2004年3月11日)(1)

 9年前、自動車を作っている所を尋ねたら、子供が「デトロイト」ではなく、「日本」と答えたそうだ。
 今、ソフトウエアでも同じことが言えそうだ、という。もちろん、答えは「インド」だ。インドの強さはあまねく知られている訳だ。

 従って、民主党がここを争点にするのは、当然かもしれない。

 しかし、雇用流出を政治的に封じたところで、この流れを止めることはできまい。
 そもそもが、極く自然にできた流れなのである。

 FRIEDMAN 氏は、以下のような要因が成功に結びついたと指摘している。

(1) タイミングがよかった。(1991年に、社会主義から、開放経済に移行)
(2) もともと教育が盛んだった。(息子/娘を医者かエンジニアに育成する社会風土)
(3) エンジニアの言語が英語だったので、シリコンバレーとの円滑なコニュニケーションが可能だった。
(4) 米国と昼夜が逆なので、グローバル24時間労働体制が敷けた。
(5) 「glocalization」を進めた。
(6) 幸運にも、dot.com フィーバーで光ケーブル網が完備し、データ通信が安価になった。
(7) 米国のエンジニアと比較して低賃金だった。
(8) 致命傷を負いかねないY2K 問題への対処に、大量のプログラマーが必要となった。

 その結果、インドへのアウトソーシングが一気に進んだ訳だ。

 インドは大国だが、資源が欠乏している。その上、地理的/気候的に見ても、環境は余り良くない。それでも、自由市場を作り、一応の民主主義と政治的安定を実現した。そして、教育を重視した。
 これだけ揃えると、チャンスが巡ってくれば、国富を生み出すことができるのだ。
 これこそが、グローバリゼーションの意義ではなかろうか。

 と言っても、発展途上国の発展を褒め称えているのではない。

 インドのエンジニアが頑張り、インド経済が発展しただけでは、大した意味はない。
 一番重要なのは、インドとの競争に晒され、先進国のエンジニアがさらに深く学び始め、より高度な問題に挑戦するから、意味があるのだ。
 この動きが、さらに大きなイノベーションを生むことになる。
 この好循環を作れるかどうかが、今、問われている。

 RIEDMAN 氏が引用しているように、インドの成功は、まさに、米国の労働者に対する「wake-up call」なのだ。

 そして、これと同じことが、中国と日本の関係にも言える。

 --- 参照 ---
(1) http://www.indianembassy.org/US_Media/2004/mar/Realizing%20'The%20Great%20Indian%20Dream'.htm


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