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2005.1.24
 
 


中国アパレル産業の転回点…

 中国の繊維産業集積は驚異的なスピードで発展しきってしまったようだ。

 浙江省諸既市大唐鎮(Datang, Zhuji)は日本でも「靴下の郷」と呼ばれて有名であるが、NewYork Timesの2004年12月24日の記事(1)によれば、 年間生産量は90億x2足だという。信じがたい巨大な数字である。

 1970年には単なる農村だったが、家内工業的な靴下生産業からここまで伸ばしたのである。資本家とみなされて政府から抑圧された時期もあったにもかかわらず、世界の工場にまで発展した訳だから、共感を覚える米国人も多いと思われる。

 同州にはネクタイ生産で有名な[山乗]州市(Shenzhou)もある。こちらは、年間3億本を生産するそうだ。金額にして12.1億ドル。
 ネクタイが1,000億円産業になっているのだ。

 もっとも、現実には、10円以下の靴下が売られていたり、先進国で10,000円しそうな絹製ネクタイが100円程度で購入できるといった話をよく聞くから、こうした発表数字は余りあてにならないが、桁違いの生産量という点だけは間違いあるまい。

 ここまで規模が大きくなると、取引ロットが数十万足/本が常態化していると思われる。規模の力が十二分に発揮できるから、圧倒的な競争力を発揮していると見てよいだろう。

 ネクタイや靴下は形態のバラエティが少ないから、このようなことが可能という訳でもない。沿海州には、同じパターンで発展した、他の製品セグメントのアパレル産業集積地が点在しているのである。

 セーター、紳士服、カジュアル、子供服、ダウン、下着、ウエディングドレス、ジーンズ、とまさになんでもござれである。
 もちろん、ボタン/ファスナーの拠点(浙江省永嘉県橋頭鎮)も昔からよく耳にする。

 ここまで急激に発展してしまうと、先がつらい。品質も十分高くなってきており、この先の発展は容易なことではないからだ。

 これだけ巨大な生産能力があるということは、世界中の低価格帯市場に、すでに浸透済みと見てよいだろう。換言すれば、今後は、販売量の伸びは余り期待できない、ということでもある。
 しかも、軽工業だから、ベトナムのような国での、新たな集積地登場による、競争熾烈化の可能性は高いと言わざるを得まい。
 さらには、今まで黙認されていたコピー商品販売も難しくなってきた。
 従って、マクロで見れば、現在のパターンで事業を続ける限り、上手くいって現状維持だろう。

 こうなると、挑戦的な企業は、先進国の企業とは、協業による発展か、高付加価値製品でのダイレクトな競合、のどちらか一方を模索することになるのではないか。
 地域集積の活用方法が大きく変わり始める訳だ。

 これから、いよいよ本格的な国際競争に突入する。知恵を生み出せる集積地に変身できるかが問われるのである。
 もちろん、これは日本のアパレル地場産業にもいえることだ。

 --- 参照 ---
(1) DAVID BARBOZA 「In Roaring China, Sweaters Are West of Socks City」 NewYork Times 2004年12月24日(有料)


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