→INDEX ■■■ 曼荼羅を知る [2019.2.10] ■■■ [3]金剛界曼荼羅 微細会 金剛界曼荼羅中央の成身会、三昧耶会に次いで、微細会を見ていこう。 ❺ ❻ ❼…四印会 一印会 理趣会 ❹ ❶ ❽…供養会 成身会 降三世会 ❸ ❷ ❾…微細会 三昧耶会 降三世三昧耶会 ❸微細会 仏を象徴する持ち物や印相で描いた曼荼羅の三昧耶会で明らかなのは、37尊像のシンボルとしての持物が金剛杵だらけの点。大日如来にしても、持仏を持たないから塔になるが、その土台は金剛杵。金剛杵が特別扱いされていることがわかる。 (そう言えば、胎蔵界曼荼羅の中心の中台八葉院でも金剛杵が花弁の間から見えている。) 【金剛杵系】塔@五鈷杵, 独鈷開敷蓮華@五鈷杵, 十字金剛杵@五鈷杵, 五鈷杵@五鈷杵; 蓮華首独鈷杵, 十字金剛杵, 五鈷杵; 舌中三鈷杵, 蓮華独鈷杵; 笑口葉+横金剛杵; 甲冑三鈷杵, 三鈷牙形, 十字金剛杵; 五鈷杵, 双立三鈷杵; 十字金剛杵, 若干屈折三鈷杵; 鎖輪三鈷杵, 五鈷杵, 鉤形三鈷杵. 索頭上独鈷杵 【他の武器】双立金剛鉤 金剛剣 【宝, 等】三弁宝珠; 三弁宝珠; 幢幡上三弁宝珠, 三弁宝珠 輪宝; 日輪 【その他】二拳弾指 三鈷縄(華鬘), 六弦三鈷箜篌, 盛華器, 燈燭, 塗香器, 焼香炉 その金剛杵だが、密教・修験道で良く知られた法具であり、禅宗でも用いる宗派があるし、顕教寺院でも金剛力士の持物だから仏教では極めてポピュラーな呪器と考えて間違いない。しかし、その使い方は秘儀らしくよくわからない。 ただ、現代でも製作されており、密教に関心を持つ人の間では人気の品である。 →金銅三鈷杵@12世紀[川端康成旧蔵品] (C)奈良国立博物館 種類は色々あるが、全体は杵形をしており、中程の握って持つ部位[把]と両端の鉤爪部位[鈷]からなる。把には紐結びと蓮連弁装飾が施されているものが多いようだ。その中央には必ず標章[鬼目]がある。一方、鈷[=金+古(口[祭器]+十[縦])]は、神に捧げる神聖な言葉が入った容器を蓋となって護る呪術用金属具なのだろう。根元に龍・獅子・鬼のデザインがなされることがあり、口にあたる訳だ。 (異形としては、片側の鈷が音器の金剛鈴[鐃]がある。) 発祥はインド古代信仰時代で、雷霆神であるインドラ/帝釈天の武器ヴァジュラ[Vajra"稲妻"]とされている。 (「リグベーダ」に、巨大蛇との戦闘で劣勢になり、ヴィシュヌの助言で聖仙から体内の骨を貰い受け骨器を作ったと書かれているという。) (参照) 国立文化財機構 監修:"金剛鈴と金剛杵"@「日本の美術」541号 至文堂 2011年 それを究極にまで強調したのが、微細会である。全尊が金剛杵を光背にして描かれているのだ。 梵字(悉曇文字)曼荼羅と同じで、文字や法具といった単純な対象に魂を凝縮させることができると考えるらしい。そのため、"微妙法曼荼羅"とも呼ばれる、と。 空海:「即身成仏義」823年によれば、有名な二頌八句の偈文によれば、曼荼羅は4種ある。 六大[地水火風空識]無碍常瑜伽…互いに縦横無尽に関係しあう。 四種曼荼各不離…四種曼荼羅も繋がり合っている。 三密[身口意]加持速疾顕…手に印、口に真言、心に佛を修めれは験が顕れる。 重々帝[帝釈天]網名即身…あたかも、網のよう。それを即身と呼ぶ。 法然具足薩般若[智] 心數心王過刹塵 各具五智無際智 圓鏡力故實覺智 この四種曼荼とは、「大曼荼羅」「三昧耶曼荼羅」「法曼荼羅」「羯磨曼荼羅」を意味するそうだ。対応はこうなるとか。 大曼荼羅=❶成身会 三昧耶曼荼羅=❷三昧耶会 法曼荼羅=❸微細会 羯磨曼荼羅=❹供養会 悟りの境地を種子/種字(梵字)やマントラ(真言)で表示したものが法曼荼羅。文字は1っずつ異なるから尊像毎にあてはめることができるし、それは妙なる音でもあるから、耳から実感できる仏の姿と考えることができよう。しかし、尊像の背景に描かれる金剛杵は法具であり、当然ながら皆同一形状だ。どうしてそれが文字と同一カテゴリーになるか、はなはだ理解に苦しむところ。 そうなると、金剛杵を持ち尊像を念じながらマントラを唱えヨという意味と違うか。要するに"呪文"の世界である。 つまりこういうこと。 大曼荼羅=身密 三昧耶=意密 法=口密 羯磨=身密からくる行為 つまり仏毎の讃歌を詠ずる訳で、それは微細というより、微妙という言葉が当たっていよう。 おそらく薄暗いお堂のなかで護摩木の焔炎に照らされた金剛杵の光が尊像を輝かせ、讃歌(声明)が響き渡る荘厳そのもののなかで佛との一体感を味わう修行なのだと思う。従って、微細会とは一種の声明三昧用の曼荼羅と違うか。 ちなみに、五如来、等のの種子はこうなる。 大日如来 "バン" …胎蔵曼荼羅は良く知られる"ア"になる。 阿弥陀如来 "キリーク" 不空成就如来 "アク" …金剛薩埵と同じ。 阿閦如来 "ウーン" 宝生如来 タラーク" 微細会の解説は様々あるようだが、小生にはピンとこない。それが逆にこのような発想を生み出してくれる。日常言語でいくら説明されても、凡人には色々な用語を繰りだすトートロージにしか映らず、何を言っているのかさっぱり理解できない訳で。言葉をいくら多用したところで、何も伝わってこないどころか、なんでもかんでも同じ概念と言っているようにしか聞こえないのである。釈尊は言葉で説法を行ったとはいえ、文字をあげつらうだけでは、何も体得できませんゼというのが、この曼荼羅の意味するところでは。 三鈷の金剛杵を背負っている姿とは、手に持った法具のなかに宿る微細な魂、即ち佛を感じ、観想すべしということと見た。 種子を描いてはいないから法曼荼羅には該当しないが、4つのカテゴリーで分けるなら、そう言えないこともなかろう。 登場する尊は三昧耶会と同じだが、人格表現の仏像になる。再掲しておこう。 ┼○┼○┼○○○○Ⓢ←Ⓦ→Ⓝ ┌─────────────────────┐ │○┼■┼○○■○○○■○○○■○○┼■┼○│ │○┌─────────────────┐○│ │■│●┼○◎○◎○○●○○◎○◎○┼●│■│ │○│○┌─┬─────────┬─┐○│○│ │○│○│◆│○○○○○○○○○│◆│○│○│ │○│◎├─┘○○○○●○○○○└─┤◎│○│ │■│○│○○●○○●●●○○●○○│○│■│ │○│◎│○○○○○○●○○○○○○│◎│○│ │○│○│○○○○○○○○○○○○○│○│○│Ⓦ │○│○│○○●○○○●○○○●○○│○│○│↑ │■│●│○●●●○●●●○●●●○│●│■│Ⓝ │○│○│○○●○○○●○○○●○○│○│○│↓ │○│○│○○○○○○○○○○○○○│○│○│Ⓔ │○│◎│○○○○○○●○○○○○○│◎│○│ │■│○│○○●○○●●●○○●○○│○│■│ │○│◎├─┐○○○○●○○○○┌─┤◎│○│ │○│○│◆│○○○○○○○○○│◆│○│○│ │○│○└─┴─────────┴─┘○│○│ │■│●┼○◎○◎○○●○○◎○◎○┼●│■│ │○└─────────────────┘○│ │○┼■┼○○■○○○■○○○■○○┼■┼○│ └─────────────────────┘ ┼○┼○┼○○○○Ⓢ←Ⓔ→Ⓝ ●五如来 大日…塔@五鈷杵 "バン" 阿弥陀…独鈷開敷蓮華@五鈷杵 "キリーク" 不空成就…十字金剛杵@五鈷杵 "アク" 阿閦…五鈷杵@五鈷杵 "ウーン" 宝生…三弁宝珠 タラーク" ●四波羅蜜菩薩@大日如来 法…蓮華首独鈷杵 業(羯磨)…十字金剛杵 金剛…五鈷杵 寶…三弁宝珠 ●十六大金剛菩薩@阿弥陀如来 語…舌中三鈷杵 因…輪宝 法…蓮華独鈷杵 利…金剛剣 ●十六大金剛菩薩@宝生如来 幢…幢幡上三弁宝珠 宝…三弁宝珠 光…日輪 笑…笑口葉+横金剛杵 ●十六大金剛菩薩@不空成就如来 護…甲冑三鈷杵 拳…二拳弾指 牙…三鈷牙形 業…十字金剛杵 ●十六大金剛菩薩@阿閦如来 薩捶…五鈷杵 王…双立金剛鉤 喜…二拳弾指 愛…双立三鈷杵 ●四供養妃 金剛菩薩(内側) 鬘…三鈷縄(華鬘) 歌…六弦三鈷箜篌 舞…十字金剛杵 嬉…若干屈折三鈷杵 ●四供養妃 金剛菩薩(外側) 華…盛華器 燈…燈燭 塗…塗香器 香…焼香炉 ●四門護/四摂 金剛菩薩 鎖…鎖輪三鈷杵 鈴…五鈷杵 鉤…鉤形三鈷杵 索…索頭上独鈷杵 ○賢劫十六大菩薩 Ⓦ 無量光…光明 光網…羅網 賢護…賢瓶 月光…半月 Ⓝ 無尽慧…梵篋 弁積/文殊…五色雲 金剛蔵…独鈷四井字 普賢…剣 Ⓔ 慈氏/弥勒…群持 不空見…独鈷杵(両脇に眼) 滅悪趣…梵篋 除憂闇…無憂樹枝 Ⓢ 香象…鉢器 大精進…独鈷戟 金剛幢/虚空蔵…三弁宝珠 智幢…如意智幢 《密號》 Ⓦ 大明/離染金剛 巧護/離垢金剛 方便/普願金剛 清涼/適ス金剛 Ⓝ 定惠/無盡金剛 巧辯/大惠金剛 持教/立驗金剛 普攝/如意金剛 Ⓔ 迅疾/正覺金剛 普見/真如金剛 普救/智滿金剛 淨智/解脱金剛 Ⓢ 大力/護戒金剛 勇猛/不退金剛 福貴/圓滿金剛 智滿/法滿金剛 ◆四(開敷)蓮華 ■二十天 Ⓦ 羅刹…棒上火炎 風…幢幡上火炎宝 金剛衣…《象頭像》⇒弓箭 火…《仙人形》⇒三角火炎 毘沙門…《冠装着》⇒宝棒 Ⓝ 金剛面…《猪頭像》⇒三鈷鉤 炎摩…人頭棒 調伏…《象頭像》⇒三鈷剣 毘那夜迦…《象頭像》⇒歓喜丸 水…龍索 Ⓔ 那羅延…宝輪 俱摩羅…三鈷鈴 金剛摧…傘蓋 梵…紅蓮華 帝釈…《冠装着》⇒独鈷杵 Ⓢ 日…日輪 月…半月綸 金剛食…《象頭像》⇒華鬘 彗星…棒上火炎 熒惑…火聚 (参照 ママ引用でなく改変していますのでご注意のほど) 越智淳仁:「図説・マンダラの基礎知識―密教宇宙の構造と儀礼」大法輪閣 2005年 (C) 2019 RandDManagement.com →HOME |