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■■■ 曼荼羅を知る [2019.2.14] ■■■
[7]金剛界曼荼羅 理趣会


突然、部分的にハイライトを当てたのではないかと思われる区画が登場する。
理趣会である。
 ❺ ❻ …四印会 一印会 理趣会
 ❹ ❶ ❽…供養会 成身会 降三世会
 ❸ ❷ ❾…微細会 三昧耶会 降三世三昧耶会

❼理趣会
主尊は大日如来だからこその曼荼羅だと思っていると、金剛薩が登場してくる。それなら初めから、そうすればよさそうなものに、と思ってしまう。
総勢17尊と小振りである上に女尊だらけで、突然、どういうことか考えあぐねる箇所だ。

○○┼┼Ⓢ←Ⓦ→Ⓝ
○○┌───────┐
○○┼○○┼
○○┌───┐│Ⓦ
○○│ ↑
○○│Ⓝ
○○│ ↓
○○└───┘│Ⓔ
○○┼○○┼
○○└───────┘
○○┼┼Ⓢ←Ⓔ→Ⓝ

触金剛女菩薩愛金剛菩薩愛金剛女菩薩
○○触金剛菩薩★金剛薩慢金剛菩薩
欲金剛女菩薩欲金剛菩薩慢金剛女菩薩

○○金剛鬘菩薩金剛鎖菩薩金剛歌菩薩
○○金剛索菩薩○○○○金剛鈴菩薩
○○金剛嬉菩薩金剛鉤菩薩金剛舞菩薩
○○○(金剛戯菩薩)

金剛薩の周囲を男女の愛欲に関する菩薩が取り囲んでいる。日本を除けば、一般には仏教の僧侶は妻帯などしないし、不淫の戒ということで性的欲望を抑制するように努めるもの。それとは、全く逆の展開を進めようとしているとしか映らない図絵である。しかし、この姿勢こそ密教らしさそのものと言えよう。

●四金剛菩薩
 欲
 触
 愛
 慢

●四金剛女菩薩…要する上記金剛菩薩の妃である。
 欲
 触
 愛
 慢


本来的に愛欲とは清浄なものであって、それを無闇に遠ざけて抑制すべきではなく、積極的に智慧の世界に投じるべきという積極性を旨とする訳だ。愛欲が苦悩の原因だからといって、それを否定したり逃避せず、あるがまま直接対峙することにしたとも言える。
と言っても、その表現が"良識的風俗"に反するほど露骨だと、即、異端カルトとされるのは間違いないから解説は歯切れが悪い。

ただ、現実には、愛染明王というポピュラーな尊像を誰もが知っている訳で、この曼荼羅の本質はそこで語り尽くされていると言えないこともない。(燃え盛る日輪を後背として紅蓮蓮華座に座す六臂の赤色身体。憤怒相の一面三目で、怒髪天を突く状況にあり、五鈷鉤が突出する獅子冠を装着。)

外周の8尊は三昧耶会ですでにお馴染みだが、供養妃は8尊ではなく、4尊にしている。
●四供養妃 金剛菩薩(内側)
 鬘…三鈷縄(華鬘)
 歌…六弦三鈷箜篌
 舞…十字金剛杵
 嬉…若干屈折三鈷杵

●四供養妃 金剛菩薩(外側)
 華…盛華器
 燈…燈燭
 塗…塗香器
 香…焼香炉

●四門護/四摂 金剛菩薩
 鎖…鎖輪三鈷杵
 鈴…五鈷杵
 鉤…鉤形三鈷杵
 索…索頭上独鈷杵


この曼荼羅の元は「理趣経」とされているが、空海が最澄に借用を断った経典としてよく知られている。合理的な思考だけで読破しても修行が無いととうていわからぬと言ったことで、決別の切欠になったと言われる話は有名だ。
男女の交合の性の歓びも清浄なものというだけの話と言えばそれに過ぎぬが。
(「理趣経」初段の説一切法C淨句門 "十七清浄句是菩薩位"…妙適 慾箭 觸 愛縛 一切自在主 見 適ス 愛 慢 莊嚴 意滋澤 光明 身樂 色 聲 香 味)

(ご注意)
胎蔵曼荼羅の金剛手院で金剛薩が登場するが、名称的には【混淆】が生じているとの解説もある。・・・
 Vajrasattva/金剛薩
 Vajrapani/金剛手菩薩
 Vajradhara/執金剛
 Padmasambhava/ヴァジュラパーニ[蓮華生@西蔵密教始祖]=インドラ/帝釈天


(参照 ママ引用でなく改変していますのでご注意のほど) 越智淳仁:「図説・マンダラの基礎知識―密教宇宙の構造と儀礼」大法輪閣 2005年

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