→INDEX ■■■ 曼荼羅を知る [2019.2.22] ■■■ 婆羅門 [1] 方位護法神 密教は、婆羅門(司祭階級)の様々な儀軌や修法をいち早く体系化したものと見られてもおかしくない。 広大なインド亜大陸の各地の祭式はバラバラであったろうが、基本姿勢だけは共通していたと思われるからだ。その基盤は神話であり、風俗と一体化した信仰が深く浸透していたということにほかならず、それを思想/哲学の次元に昇華させると宗教として独り立ちし始める訳だ。 密教の核も、いわば啓示書である吠陀/ヴェーダ(本集は歌詠, 讚頌, 祭祀, 禳災からなる.)に基づいているのは間違いないところ。 「護摩」…火神アグニへの供犠< 「灌頂」…四大海の水儀式 「真言」…聖なる言葉の霊力 ただ、婆羅門は世襲であり、仏教はそれを外したのである。しかし、制度的には沙門という身分があり、釈尊もそこから宗教家への道を進んだ訳である。曼荼羅にしても、もともとは宇宙模型を指す用語だったのでは。 そう思うのは、宗教・哲学・神話が混然一体となっている史詩的叙事詩「摩訶婆羅多/マハーバーラタ」にはすでに婆羅門の方位護法神群/ローカパーラが登場するからだ。 密教の天部の護法神群だが、これこそ曼荼羅表現の基礎をなすものだろう。 梵天を囲む護法神は例えば、以下の様に記載される。(どこまで正しく引用されているか不明。そもそも原典が寄せ集め書だし、原典毎にも神の名称が変わる。それらを再構成した様々な書がある訳で、それを纏めた情報を眺めている可能性が高いので注意が必要である。) 雷と水(氣候・戰爭のインドラIndraと宇宙天・海水のヴァルナVaruna) 法と富(死者審判のヤマYamaと財富のクベーラKubera) 火と風(火焔・淨化のアグニAgniと風・大氣のヴァーユVayu) 日と月(スーリヤSuryaとソーマSoma=チャンドラChandra/戰達羅) [ソーマの発祥は酒神] 本来的にはこの8神は自然神だったと考えるなら、以下が入っていた筈。 天と地(牛雷神) 天空神 ディヤウスDyaus/特尤斯/天空父 地母神 プリティヴィーPrthivi/頗哩提毗/地天 ただ、おそらく天空は天界との概念で、天界+空界+地界と考えていたと見れば、もう一つ追加しておく必要があろう。 空界 Antariksa さらに、日と月があるのなら、星を無視する訳にはいくまい。 星宿 ナクシャトラNakshatra 尚、ヒンドゥー教では神話における主要8神という見方があり、ヴァスVasuと称されるが、どうもインドラ待尊のようだ。もちろん、8尊には様々な説がある。 これについては、別途見て行くことにしよう。ここでは一覧だけ。 《8 Vasus》 ■ディヤウスDyaus/特尤斯/天空父 (天) ■プリティヴィーPṛthivī/頗哩提毗/地天 (地) ■ヴァーユVāyu(風)…大氣 ■アグニAgni(火)…祭祀/淨化 ■ナクシャトラNakṣ.atra (星) ■Antarikṣa (空) ■スーリヤSūrya/蘇利耶(日) └ヴィシュヌVishnu…陽光神 ■チャンドラChandra/戰達羅(月) └[祭祀]→ソーマSoma[ソーマの発祥は酒神] □ヴァルナVaruna(水)…海-宇宙 どうあれ、何と言っても主神 梵天あっての8尊。おそらく、方位自体にそれほどの意味はない。 ヴェーダでは宇宙精神主宰とされており、実在の根源との哲学的意味があるようだ。もちろん、同時に祈禱主でもある。宗旨的には「梵我合一」を目指すことになるが、仏教は「一切法無我」で大きな違いがある訳だが、ご祈祷中心の密教が拡がればその主旨は衆生にはよくわからないものになっただろう。 《ローカパーラ/方位護法》 ○○○○○○○Ⓔ ○ソーマ__○インドラ_○アグニ ○クベーラ_○ブラフマー○ヤマ ○ヴァーユ_○ヴァルナ_○スーリヤ ○蘇摩__○因陀羅_○阿耆尼 ○俱毗羅_○梵天__○閻摩 ○伐由__○伐楼拿_○蘇利耶 上記では、クベーラだけが、自然神ではなく異質。ご都合主義的に、どこからか登用されたと見てよいだろう。 インドでは力のある神にとっては配偶神は不可欠な筈。情報は錯綜しているが、揺らぎ無き地位の神の妃は、名称も伝わっている筈だ。 ○____○シャチー_○スヴァーハー ○____○サラスヴァティー○ヤミ ○____○ヴァルニ_○サランユー ○____○舍脂__○薩婆訶 ○____○辯才天女○閻蜜 ○____○伐楼尼_○薩拉尼尤 仏教はこの導入を図った訳である。しかし、理屈で自然神を並べているのではなく、定着した神として方位を考えながら選定している風に見える。よりインターナショナル感を与えるものに仕上がっており、「ベーダ」教的価値観とはズレがありそう。 《十二天》 ○伊舍那天○帝釈天_○火天 ○毘沙門天○梵天__○焔摩天 ○風天__○水天__○羅刹天 ただ、中央は佛になるので、梵天は上方護神扱いにして、下方護神を加えたと考えられる。 プリティヴィー/頗哩提毗/地天 日天と月天も外した訳である。八方+上下の10尊にする都合上。 ラークシャサ or ニルリティ/羅刹天 イシャナ/伊舍那(=濕婆) それに伴って、名称変更も加わったり。 帝釈天 ヴァイシュラヴァナ/毘沙門天 or 多聞天 (C) 2019 RandDManagement.com →HOME |