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■■■ 本を読んで [2014.8.9] ■■■

ルビだらけ小説には降参

第57回群像新人文学賞(2014)は、横山悠太「吾輩ハ猫ニナル」に。
「日本語を学ぶ中国人を読者に想定して書かれた」新感覚小説とされる。(「群像」6月号)

「序」によれば、・・・
数少なき友人の一人から、外来語の片仮名無しで、今の日本語の語彙水準で、辞書を使わずに読める本を紹介してくれと言われた。
そこで推奨したのが漱石本。

ところがその評価は、惨憺たるものだった。
 ・仮名が少ない。
 ・言葉も表現も古い。
 ・時代遅れの漢語だらけ。
 ・漢字の使い方が出鱈目。
結論として、「馬々虎々」

ハハハ。
ズバリ、その通り。

漢語とは、日本語であって、中国語ではないのだから。単語をそのまま借用しているからといって、概念が同じとは限らないのである。ご存知の通り、西洋概念の漢語化も沢山あり、中国に輸出されて定着しているものも少なくない。
カタカナ英語も同じこと。それこそが日本文化の特徴ともいえる。
小生は、それよりは、ルビ付き記述が一番「馬鹿馬鹿」しいと見る口。(児童学習用も、できる限り、止めた方がよいと思う。)

ともあれ、日本語を学ぶ中国人用小説という設定が秀逸。

それに、「漢字詩」が面白い。
 原野大海大天空 のばらうなばらあまのはら
  :
 櫻花花瓣虚擬詞 さくらはなびらはなもげら

まあ、日本語の表現は、なにがなにやらなのは確か。
その典型たる漱石の一句が〆となっている。
  別るゝや 夢一筋の 天の川

これには思わず苦笑。
なんだかわからなくても、その気持ちよくわかると語る人だらけの社会だから。どうしてそんなことが可能なのか、中国人にはさっぱりわかるまい。
早く言えば、日本人として生きていくために不可欠な処世術なのだが。
中国語社会とはえらく違うのである。そこは、明快な言語だけが通用する世界。
  同一个世界 同一个夢想

小生は、本の挿入写真、全12枚にも惹かれた。
こんな感覚で、・・・
・鼠子的招財
・水牛子的流眄
・虎子的凶心
・兎子的怯弱
・龍子的乗雲
・蛇子的偏屈
・馬子的跳梁
・山羊子的頑固
・猿子的好桃
・鶏子的三足
・垂耳狗子的温厚
・豚子的素餐

(本) 横山悠太「吾輩ハ猫ニナル」 講談社 2014.7.15

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