表紙 目次 | ■■■ 本を読んで [2014.10.11] ■■■ 96歳女史の指摘に感服 たまには、流行作家本も取り上げてみようと思いたって。・・・ 吉沢久子さん(96歳)の本。 たて続けに本を出版されており、今年はすでに8冊目。 どうも、"年を重ねても若々しい あの人の健康習慣"[婦人公論2014年10月22日号特集]といった点で、注目されているようだ。 主婦の友社創業100年記念企画として、人気ベストセラー企画を詰め込んだという「主婦の友Deluxe」[11月20日刊行予定]でも、「吉沢久子さんに聞く! ニッポンの主婦100年の歩み」が入っている位だから、今や売れっ子作家と言ってよさそう。 お名前は存知あげてはいるものの、著作を読んだ覚えが無いので、「明日も前へ」を読んでみた。 面白いと思ったのは、「私の目の前には、まだ道が続いている」という表現。「あきらめず道を進みたい」とおっしゃるのである。 この世代だと、言い方が決まっているものだが、それとは違う。 たいていは、「もともと地上には、道はない。歩く人が多くなれば、それが道になる」という言葉。エスペラント語まで習得した女史の頭に入っていない訳がない。 そして、「僕の前に道はない。僕の後ろに道は出来る。」も。 ただ、ちょっと意味も背景も違うが。 吉沢さんの道はそのような社会的なものではなかったのである。 「辛い出来事が今の自分の道へと導いた。 私が「食」とかかわる人生を送ることになった 最初のきっかけは、ある人との出会いと、 辛い別れがもたらしたものでした。」 そして、 「料理を中心に、 家事全般に関するアイデアを伝える」 仕事へと。 言うまでもなく日本のパイオニアである。日本はエピゴーネンが履いて捨てるほど生まれる社会だが、輝きが違っていたので、現在も第一人者の地位におられるということだろう。 その辺りはどうでもよい。肝心なのは、「家事評論家廃業宣言」と言われてしまった頃の話。 道を切り拓いてきたにもかかわらず、現実社会はその方向に背を向けていることに気付いたというのだ。おそらく、忸怩たる思いがあったに違いない。 「それまでの家事の知恵というものは、・・・ とてもプライベートなものだったのです。」 それが、 「・・・マスコミによって、 家事のノウハウが オープンに伝えられるようになりました。」 「新しい家事の形をつくるものだったと言えます。」 「私はその未開拓な世界に分け入り、・・・」 ということだった訳。 ところが、常識でわかりそうなことを電話相談してくる主婦がいたのである。 「なぜそんなことも 自分で判断できないのでしょう?」 と思うのは当然のこと。 そこで自省し、ひとつの結論を出したのである。 「もしかすると、 受け手の「考える力」を奪うことだったのでは」 そこで、新たな高みに。 「「考えて行う家事」というものを 意識してもらいたい。」 ということで、それから40年。 はたしてどうなったか。 「家事の担い手の方々は、 さらに「考えない」傾向を強めている 気がします。」 流石の指摘。 おそらく、皆で同じことを真似て、それを、皆で大いに嬉しがる社会が出来上がってしまったのだ。 だが、それは家事の担い手に限るまい。 エリート大学でも同じ現象が見てとれるからだ。つまり、「考えない」からこそ、頭がよいと評価され入学できたのである。大学でもそのスタイルでテストに対応することになる。(最優秀ドングリを増産するシステムだから致し方ないといはいえ。) この問題が深刻なのは、本人は「考えている」と思っていること。(簡単に言えば、教えてもらった手法で分析し、早く正確な結果を出せるだけ。)そして、実は、「考えない」方が世渡りには便利であり、それがどうも体に染みついてしまっていそうなこと。 僅か50年前は、台所にはフライパンさえ無く、油脂不足にあえいでおり、そうした環境下でいかに良き食にするか考え抜いた時代。それが、今や、ただただカロリーオフ。 歴史観なくしては、家事の意義もわからなくなっていくことになろう。・・・小生は、人真似ファッション化家事の時代が到来したと見る。綺麗すぎる台所が尊ばれるということであり、吉沢流とは逆。 ここは、女史の「台所の戦後史」に期待したいところ。 ─・─ 吉沢久子著 出版物(2014年) ─・─ 「心を届ける。和菓子と暮らしの歳時記」 主婦の友社 「人間、最後はひとり。」 さくら舎 「ひとりの老後は大丈夫?」 [岸本葉子との共著] 文春文庫 「96歳のらくらく家事暦」 朝日新聞出版 「いきいき96歳! ひとり暮らしの妙味」 [飯塚照江との共著] 新日本出版社 「96歳 いまがいちばん幸せ」 大和書房 「96歳。今日を喜ぶ。一人をたのしむ」 海竜社 「明日も前へ」 PHP研究所 [Amazon 検索結果:正確性は保証できない.] 1983 1冊 1984 1 1986 4 1987 1 1988 1 1989 4 1990 2 1991 - 1992 1 1663 - 1994 - 1995 1 1996 - 1997 - 1998 2 1999 5 2000 4 2001 4 2002 3 2003 4 2004 1 2005 1 2006 4 2007 1 2008 3 2009 2 2010 2 2011 4 2012 4+ 2013 5+ 2014 8+ (どういう方かわかるエッセイ) 藤原房子[元日本経済新聞婦人家庭部編集委員]:「2011年11月 : 私が会った若き日の吉沢 久子さん ごまかしのない暮らしを紡いで 93歳 いまも現役」@日本記者クラブ (本) 吉沢久子:「明日も前へ 歳を重ねても楽しいことがいっぱいある」 PHP研究所 2014年2月19日 本を読んで−INDEX >>> HOME>>> (C) 2014 RandDManagement.com |