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■■■ 本を読んで [2014.10.24] ■■■

家族と知り合いが支える車椅子生活記

神足裕司さん(1957年-)と言えば、「マル金・マルビ」の渡辺和博(1950-2007年)イラスト書「金魂巻」を思い出してしまうが、それは84年のこと。丁度一世代前。
その後は「恨ミシュラン」か。こちらも、一昔前の、西原漫画である。息子の「ゆうたろう」君が登場するが、当時5歳だったそうである。
そして、蝶ネクタイ姿で様々な形でメディアに登場し、誰でもが知る人になった訳である。
その、神足裕司さんと息子さん、お二人の著作を読んでみた。

奥付けを見る習慣なので、そこを捲ると、その前頁に自筆原稿写真が。
なるほどそういうことかと妙に納得。

そう、裕司さんは2011年9月にくも膜下出血で重体に。深刻な状況で、意識不明が1か月半続いたし、頭蓋骨を一部外して、冷凍保存し、再度挿入するなど、高度な治療のおかげで回復。リハビリも果たし、車椅子生活とはいえ、ものを書けるまでに。

それにしても、冒頭は、金銭的な苦労があったという話が続いたので、ビックリ。入ってくるおカネも多いが、出るおカネもそれに引けを取らないということだろうか。
差額ベッド料金の支払いも大きな負担だったので、個室から移動させてもらったのこと。(機内で倒れ、羽田から病院直行だから、東邦大大森病院か。)・・・これはご本人が責められるべき問題ではないか。「美しき」家族愛で片付く問題ではなかろう。
深酒とヘビースモーカを続けるなら、保険を掛けるなりしておくのが男の最低限のたしなみだと思うが。

家のローンが重かったのかも知れぬが、高校生の妹の学費工面に頭を悩ますほどだったのだから。

まさに淡々と、そのような金銭的な大問題や、病院選定、食事の話が息子の目から語られる。そして、住宅内介護の難しさも。バス・トイレから、歯磨きのまで。
父親が倒れた時、「ゆうたろう」君は、入社2年目の24歳。看病や介護をするということは並大抵のことではなかろう。
おそらく、問題が発生し、対処策もわからず右往左往の繰り返しの日々だった筈。
しかし、それはどんな家庭でも同じことであり、一歩一歩進むしかない。

こういってはなんだが、小生には、それが「羨ましき状況」に移った。神足家の場合、色々と助けてくれる人達が、周囲に大勢存在しているからである。人徳であろう。
徳を欠く、一般人はそうはいくまい。

よく考えれば、だからこそ、人脈を通じて幅広い仕事がこなせたということか。
そんな場合は、普通はマネジメントの専任者がいるものだが、お一人でスケジュール管理までされていた模様。ご家族は、一切知らなかったので、本人が突然意識不明に陥ってしまったため、対応に苦慮したようだ。
結局、裕司人脈の方々がお手伝いしてくれ、ことなきを得たとか。

そんなお宅でも、柔軟な対応でお助けしてもらえそうなことがかなわず、こまったという話がいくつか書いてあった。なんの感情表現もまじえずに。
実は、ここでホッとした。
素人的には、ちょっとした労力で可能なことだが、プロフェッショナルサービス側からすれば、危険があるからそのようなことはできないとなる訳である。そう、ここは極めて重要なことである。神足さんだから、ちょっとしたことですむので、お助けしますとはならないのである。不便この上ないだろうが、それは我慢して頂くしかない。そして、その問題を解決するために、補助器具やロボットが登場することになる。時間はかかるが、それを地道に進めていることがよくわかった。
実際、「ゆうたろう」さんの目からみると、家にロボットが入ってきている感じがするそうで、それは実際威力を発揮しているのだという。
ただ、神足家の現実を見ると、ロボットができそうなことはまだまだ沢山ありそうな感じがする。着々と前進してはいそうだが、団塊世代が大挙して車椅子生活に入る時代はすぐそこであり、急ぐ必要がありそう。

それと道路問題。
通りにくいところだらけとの感想だが、まあ、いわずもがなの世界である。
こればかりはどうにもならない。
モラルがとんでもなく低いから、我慢する以外に手はない。視覚不自由な人のための表示板など有名無実そのもの。その上に平然と危険そうなモノが置かれていたり、バイクや自転車も長時間駐輪とくる。注意したりすれば、それじゃどこに止めろというのだと脅される社会である。そう、自転車で道をあふれさせる政策を追求している国なのだから当然の結果である。

(本) 神足裕司+神足祐太郎:「父と息子の大闘病日記」 扶桑社 2014年9月20日

(「くも膜下出血から復帰したコラムニスト・神足裕司――“書くこと”への思い」より コラムを掲載していた「週刊SPA!」)
原稿用紙:http://nikkan-spa.jp/wp-content/uploads/2014/09/6.jpg
近影:http://nikkan-spa.jp/wp-content/uploads/2014/09/10643440_885320034831272_944199351_n-1-225x300.jpg

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