表紙 目次 | ■■■ 本を読んで [2014.10.28] ■■■ 古今Haiku集を眺めて そういえば、Kauffman Economic Outlookの"Haiku"をご紹介したことがあった。 → 「Haikuのご紹介」[ 2012.2.3] その業界では"3 line lyric"は結構人気だったから。 例えば、・・・ Euro Haiku February 9, 2012 Welfare states' debt due Ratings downgrades, states default Euro muddles through --- Arthur Diamond 季語など無いのが秀逸。なにせ、時がカネなりの世界が題材だから、季節感というか、時節感紛々である。 言うまでもないが、Haikuの本流はこのようなものではなく、芸術性を追求した作品である。 Shodou brushstrokes sweep inked words stirred as summer birds wing far horizon --- Siobhan McKinney 第5回日EU英語俳句コンテスト[2014年8月13日@外務省] ということで、たまにはHaikuでもと、まことに殊勝な態度で、俳文集@Red Moon Pressを覗いてみることにした。 → "Contemporary Haibun Online" なかなかものである。英文読解力不足の人間にも、読ませるものが揃っているではないか。読んでの楽しさという点では、和文俳句を凌駕している。 よく考えれば、それも道理。 "Haiku in English The First Hundred Years"という題名のアンソロジー本が出版される時代に入ったからである。 要するに、気楽に、先人達の作品を楽しむことができるようになった訳だ。と言うか、様々なタイプに触れることができるようになったということ。ようやく、Haikuが何たるものか、全くの初心者にも理解可能になったということでもあろう。 本格的なHaiku文壇ができあがりつつあるということではなかろうか。 折角だから、小生好みの、鬼籍に入った方の作品を2句引用させて頂こう。 WINTER ECHO Thin air! My mind is gone. --- YVOR WINTERS (1900-1968) Mid-Summer Dusk Swallows twittering at twilight: Waves of heat Churned to flames by the sun --- JOHN GOULD FLETCHER (1886-1950) ここだけ眺めていると、季節感が伝わってくる訳だが、それは日本的な情緒とは違うかも知れない。様々なHaikuに触れると、そんな気がしてくるのだ。季語を余り意識してしないせいもあろうが、詠んでいる対象が違うのかも。 俳句における季節感とは、大概は季節の移ろい。それこそ、「ようようしろくなりゆくやまぎわ」の世界。 一方、Haikuでは、そうした感興とは違って、ヒトと自然との触れ合いを描いている作品が多いのでは。雪がうっすらと被る山懐に抱かれて、というところ。似てはいるのだが。 ただ、それは文化の違いというよりは、そのような100年の進化だったということかも。 ラフカディオ・ハーンの訳とは、うろ覚えだが、確かこんなところだった筈。 Old pond frogs jumpingin sound of water これだと、正直なところ、味わうといっても、なかなか難しいものがあろう。 しかし、1912年のパリにおけるHaikuは絶品である。いうまでもないが、575調まで踏襲されており、カタカナ発音でもよさげ。 まあ、そういったシラブル表現がどれだけ意味があるかはなんとも言えぬが、Japonismeに傾倒すると、ここまで追求しないと気がすまぬのだろう。 In a Station of the Metro The apparition of these faces in the crowd; Petals on a wet, black bough. --- EZRA POUND (1985-1972) それから一世紀である。 この本も、さらに一世紀経つと、古今Haiku集となるのかも知れぬ。 そう想いつつ、最後の紙本として、記念に購入というのは、余りにノスタルジックか。 (本) J. Kacian, P. Rowland & A. Burns [Editors]:"Haiku in English The First Hundred Years" W. W. Norton & Co. 2013 (同書掲載) J. Kacian:"An overview of Haiku in English" 本を読んで−INDEX >>> HOME>>> (C) 2014 RandDManagement.com |