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■■■ 本を読んで [2015.8.30] ■■■

中華料理の見方を学ぶ

どうも、日本語の中華料理解説書を眺めるだけで、全体像が見えるのかはなはだ疑問が湧いてきたので、中国語の本に目を通してみた。これなら、現代感覚に触れることができそうということで。

どうせ、各地料理のご紹介かと思っていたら、そうではなかった。面白かったのは、十大海鮮。

ほほう〜。
現代中国人はこのような魚介に関心があるのか。
 蟹・・・カニ
 烟熏三文魚[塩]漬生鮭魚
   ・・・スモークサーモンシオジャケ
 [蝦]、小[龍][對]・・・エビ
 [鰌]魚・・・イカ
 牡蛎[蠣]・・・カキ
 扇貝・・・ホタテ
 ・・・イセエビ
 胎貝・・・イガイ(ムール貝)
 章魚・・・タコ
 海螺蛤・・・バイハマグリ[文蛤]/アサリ[蛤蜊]

人口の割には海岸線が短いから、貝類の供給能力は限定的なので、関心は薄いかと思いきや、ホタテ、イガイ、バイ、ハマグリと結構好まれているようだ。身の旨みに反応するのかも。イカ、タコもそんなところから来ているのかナ。
ただ、肝(ウニ)が選ばれていないのが気にかかる。加熱調理文化には不適ではあるものの。
垂涎モノの海産物という視点では、鮑、參、翅は必ず入る筈だが、乾燥品を調理する料理だから、「海鮮」には入ってこないのだろう。
甲殻類のエビ、カニも大好きなようだ。
ということで、相対的に「魚」には食指が動かないということかも。骨があったりして面倒ということもあるような気がする。日本でも若者は細かく箸が使えないから、骨がある魚料理は苦手なようだし。中国の箸では、そもそもそれは無理ということもあろう。そんな心配がない鮭だけが選ばれている。
日本的発想だと、スモークサーモンや塩鮭を「鮮」とは思えない、乾燥品でないといううことなのだろう。
刺身はまだまだということか。湖南料理のピーナッツオイルかけ的な刺身はマイナーな扱いなのだろうか。

注目されている魚介の名物料理も見ておこう。
北から、海沿いになにが選ばれているか眺めると、なかなか面白い。
[遼寧]
[河北&天津(北京)]
[山東]
 葱焼海参(なまこの葱煮込み)
   小型の干した海鼠(海の人参)
   豚脂と湯(スープ)の旨み
   生姜と醤油/酒/砂糖での調味
   とろみ(片栗粉)つけ
[江蘇]
 黄汪豆腐
 黄湯包
[上海]
 (上海蟹の紹興酒[老酒]漬け)
   各種調味料入り酒に1週間浸漬
    <生は寄生中感染の危険性あり>
 (母藍花蟹揚げ)
[浙江]
 西湖醋魚(西湖の草魚甘酢煮)
   柔らかい白身魚
   甘酢あんかけ
   生姜と醤油/紹興酒での調味
 清蒸大(上海蟹の姿蒸し)
   最高級は秋〜年末採の陽澄湖産
   雌は卵、雄はみそ
 (卵白の炒めもの)
   超細切り白身魚
   紹興酒を加えた卵白で固める
   炒めた葱と生姜で香り付け
   湯(スープ)、塩、砂糖で調味
   彩野菜と生卵黄をつける
 梭子炒年(梭子蟹と餅の炒めもの)
[福建]
 紫菜(焼き海苔)
[台湾]
 烏魚子(焼きカラスミ)
[広東]
[海南]
 香煎馬鮫魚(サワラのフライ)
[広西]
 螺鰤粉
 黄豆酸筝小黄魚(イシモチ/シログチ)

内陸にも淡水性の魚料理がある。
[安徽]
 
   淡水棲桂花魚(高級食材)のまるごと塩漬発酵食品
   (骨が外れているので、中国箸でも食べやすい。)
[湖南]
 苗家魚(酸甜味鯉料理)
[四川]
 藤椒魚(草魚煮込み)

中華帝国の都の料理は、やはり手の込んだものになる訳だ。「葱焼海参」は北京料理と言ってもよいだろう。フカヒレやアワビは本来は南の料理ではあろうが、乾燥品をじっくり調理した高級料理にはあっているから、それなりのものが揃っていよう。

江蘇〜上海〜浙江になると、驚くほど蟹好きである。「賽蟹」に至っては、白身魚を用いて蟹肉風に仕立て上げる訳だ。そこまでするのか。
こちらは、手の込んだ料理ではないものが好まれていそう。「西湖醋魚」など、いかにも簡単にできそう。魚米の地であるから、おそらく、単純な煮魚料理が供される土地柄なのだろう。(もともとは、労働者的な料理が主導してきた筈だし。)

広東〜海南は、それほど海産物に熱心な訳ではなさそう。
換言すれば、ゲテモノ愛好の地ということになるか。従って、「香煎馬鮫魚(サワラのフライ)」といった珍しくもない魚を使った料理では、この地域の風情が感じられないのでは。まあ、海だとそうそう面白い食材は無いが。小生的には、「汁蒸油追(ウツボ[]の蒸籠蒸し)」を選びたいところ。偏見過ぎるか。
そうそう、[広東]には、「清蒸魚(生姜/葱だけの草魚単純蒸し)」を入れて欲しかった。生抽[ピーナッツ油+醤油]をかけてトッピングが香菜というものであり、魚の鮮度が勝負の料理。蝦にしても「白灼蝦」(単なる塩茹で蝦)たるべしの世界。
草魚では、「西湖醋魚」や「藤椒魚」と好対照。

四川での魚料理は基本的に煮込みだろう。それなら、多少癖のある臭いがついていても、香辛料でなんとかなるから。

福建辺りは、海外展開の地でもあり、大金持ちが生まれておかしくない地である。洗練した料理を目指すとは思えないが、高級食材をこれでもかと使用する料理を名物にした方が特徴がでるように思う。「佛跳牆」(多種高級食材長期間壺煮込みスープ)のこと。もっとも、食材は、海鮮だけでないから、拙いか。

(本) 中央電視台紀録頻道編:「舌尖上的中国」第一集 治大国若烹小鮮 在美食的地史、文化、統与温情 中央電視台出版社 2014
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