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■■■ 本を読んで [2018.3.5] ■■■

一語一慧

白川静の画期的字書「字統」記載文に合わせた、手書きフォントが描いてある本を眺めた。
著者は自称"画工"。
"hanmoto.tameshiyo.me"

28の漢字を対象とした現代版絵草紙と言ったらよいだろうか。
白川静論は、論証的に不十分なところもあるので強引さが感じられことが少なくないが、素人からすれば面白いのでついついハマル。
そういう人は、つい目を通してしまうといった類の本。

小生が気にいった文字は「芸」。
なんということもなき文字だが、絵が素晴らしい。

この文字だが、言うまでも無く、繁体字は「藝」。日本でも十分通用する文字だ。
「藝」=「」+「木」+「土」+「丸」+「雲⇒云」。

簡体字は形聲で、「芸」ではなく、「」=「」+「乙」。現代中華帝国の文化的魅力度ゼロ路線を象徴するようなつまらぬ略字化。

と言って、日本語新字の「芸」=「」+「云」ならマアマアと言うことでもない。
こちらも略字体として通用していて、対応する繁体字は「藝」ではなく、「噤vなのだ。もちろん意味が全く異なり、蜜柑類縁の植物。(蘭語由来のヘンルーダ["common" Rue or Herb-of-grace]:グラッパ賦香用等、中国では書籍防虫剤)
マ、日本では柑橘の代表は蜜柑であり、魅力を欠くとして無視されてしまったのであろう。
五十歩百歩だが、雲気が立ち上げる感という点で「芸」に軍配をあげたくなる。

マ、ついつい、こんなことを考えてしまったのは、絵的文字を見詰めていて、略字にするなら、「」がよかったナ、と思った次第。

ここで、「丸」は、"両手を添えて持ち上げた"状況の象形である。つまり、ヒトが若木を両手で捧げもち、これから植えようとしている姿を意味している。まさに気が立ち上がっている姿そのもの。
園芸シーンの表象と考えることもできよう。

素晴らしい樹木に育ってくれよと祈りながら、若木を両手で抱えあげて、スピリッツを吹き込んだ古代人の意気を感じさせる文字に仕上がっているといえよう。

(本) 金子都美絵:「【文字場面集】一字一絵: 絵で読む漢字の世界 」太郎次郎社エディタス 2017年12月1日
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