↑ トップ頁へ |
2003.6.7 |
|
|
パラサイト・シングル文化…パラサイト・シングルの議論が面白い。最近、ようやくグローバルな見方が入ってきたからだ。(参照文献は末尾に記載)この分野は家族問題や女性問題とからむ。そのため、思想対立の上に立った発言が多い。当然、分析結果にも、勝手な見方が入り込む。発言者の背景を理解していないと、間違った見方を押し付けられる可能性がある。 実際、パラサイト・シングルを最近の社会現象と見てよいのか、という主張もある。用語ブームを作った側とは、反対側に立つ人の主張である。 こんな状態では、議論に参加するのは面倒という人も多いだろう。(参照論文では、こうした状況は触れていない。) ところが、珍しく、真正面からの分析が登場したのである。 このような問題は、素人でも意見を述べ易いので、一説を展開してみよう。 まずは、パラサイト・シングルの規模がどの程度か、確認しておこう。といっても、定義が曖昧だから、実態はそれほど定かではない。おおまかな数字が見れればよい。 35才未満の成人で、親と同居している独身者は、約1,000万人。それに対して、独立した人は、約約1,800万人いる。(1995年度国勢調査) 25才〜45才の未婚者で親から経済的援助を受けている人は、男が30%、女性が40%だ。(第2回全国家庭動向調査,1998年) こうした数字が暦年でどう変わっているかを見るとよいと思う人もあるだろうが、都市と地方の問題もあり、かえってわからなくなる可能性もある。素人の分析としては、パラサイト・シングルは主流ではないが、かなりの数であることを確認すれば十分だろう。 この原因は誰でも知っているから、特に分析する必要もあるまい。昔なら、とっくに結婚していた筈の女性が、未婚のまま親と同居し始めたから、これだけの規模になったのである。 そして、この傾向の底流をなすのが、経済状況といえよう。 1つ目は、女性が、結婚しなくても経済的に貧窮することはない、と自信を持った点。 2つ目は、親の側が、子供の同居で経済負担が重くなる、とは余り感じなくなった点。 どちらも、経済力がついてくれば発生する類のものだ。 従って、パラサイト・シングルは日本だけの現象の筈がない。 しかし、日本の独特な点は、親が子供の寄生を奨励している点にある。といっても、娘と息子では全く違うことに注意を払うべきだろう。 女性のパラサイト・シングルは、独特な文化を形成している。母娘で出かけることが多いのだ。実際、ショッピングモールや観光地では、母娘のカップルが目立つ。男性より、母とつきあう方が満足感が高いのだ。 娘が「親子の付き合いも友人のような関係であってもよい」と考えているからだろう。(http://www5.cao.go.jp/j-j/wp-pl/wp-pl01/html/13102c10.html) おそらく、母も、職場の世界しかわからぬ夫とつきあうより、娘と遊んだ方が楽しいのだ。 ここには、豊かな人生のためにどう過ごすべきか、を第一義に考えている女性像が見えてくる。間違いなく、仕事に対する姿勢も同じだろう。一生懸命仕事をしないとすれば、仕事が嫌いな訳ではなく、本人にとって意味ある仕事ではないのである。 問題は、このようなニーズに社会が応えているかだ。応えきれなければ、女性労働力の生産性は低いままで、経済低迷は続くことになろう。 しかし、これだけで同居が進む訳がない。親の方にも、将来、娘が老後の面倒をみてくれることへの期待が隠れているに違いない。老後を過ごす仕組みが社会的に不備なのだから、持っている資産を考えれば、娘依存の方が質が高いサービスを受けられることは間違いない。そして、そのような傾向を後押しする、自宅看護政策が打ち出されているのだ。当然の流れといえよう。 一方、男性の方には、女性で見られるような動きは見られない。父と息子だけで楽しむ姿は、滅多に見かけない。 しかも、ほとんどの場合、娘と違って、息子はパラサイト生活に満足していない。おそらく、親の家業を継ぐとか、親の面倒を見る義務感で、親と同居しているのだ。従って、女性の仕事に対する姿勢とは全く違う。自分の意志というより、家のために仕事をしている可能性が高い。パラサイト・シングルと呼ばれているが、シングルというより、ファミリー思想が強い。当然、仕事についても、安定志向、現状維持型になる。 といっても、都会を中心に、一部だが、経済的に楽な生活を送れるから、という理由だけで同居を続けるパラサイト・シングルも存在する。面倒な部分は親に依存し、勝手気ままに、お気軽な生活で、人生を愉しもうという人達だ。といっても放蕩息子ではなく、それなりの仕事をしているから、表面的には、女性と似ているように見える。しかし、思想は180度違う。こちらは、自分に意味ある仕事を探している訳ではない。目立ったり、面白ければ十分なのである。 どう見ても、男性文化は筋が悪い。 パラサイト・シングルと呼ぶ社会現象も、良く考えれば、没落しつつある旧社会の構造にしがみつく真面目な息子、バブル後遺症が垣間見える流行追求型の息子、新しい文化を切り拓きつつある娘、という全く異なる人達の集合ともいえる。 思ったより複雑な社会現象なのだ。 [参照文献---(注)本稿は以下の論文に触発されて記載した。] (J. S. Curtin:「Youth Trends in Japan: Part One ?"Parasite Singles" in the International Context」http://www.glocom.org/special_topics/social_trends/20030526_trends_s38/index.html)(M. Kavanagh & J. S. Curtin:「Youth Trends in Japan: Part Two ? "Parasite Singles" in Europe and Japan」http://www.glocom.org/special_topics/social_trends/20030526_trends_s38/index.html) (D. P. Dolan:「A Fuller Understanding of "Parasite Singles" 」http://www.glocom.org/debates/20030602_dan_com/index.html) 文化論の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
|
(C) 1999-2004 RandDManagement.com |