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2003.6.23 |
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時代錯誤感…「大都市地域における宅地開発及び鉄道整備の一体的推進に関する特別措置法(宅鉄法)」という長い名前の法律がある。「つくばエクスプレス(常磐新線)」を走らせるために1989年につくられたものである。鉄道整備と地域開発を一気に進めるために、土地交換などの仕掛けを組み込んだ、なかなか優れた内容である。(http://www.mir.co.jp/ensen/index2.htm) 日本社会を象徴するような法律である。 といっても、法律の内容ではない。施行側の社会の体質の話しだ。 これは、中曽根民活の延長上の法案だが、今となっては、どう見ても時代遅れである。もう意味の無い法案だと思っていたが、まだ生き続けている。 日本では、一端決まると、なにはともあれ最後まで進む。この体質にはメリットもあるが、歯車が逆回転し始めると奈落の底まで付き合わされかねない。 この法律も、このデメリットを発揮した典型例といえよう。 人口膨張期には、大都市郊外の住民にとっては、心地よい住宅地と、早くて安い大量鉄道輸送は悲願だった。しかし、政治は、何も手を打たなかった。ところが、どうしようもなくなってから、ようやく常磐新線構想が打ち出されたのである。しかし、この構想が実現する頃は、人口減少の時代で、環境は全く変わってしまった。 おそらく、この手の鉄道としては、日本で最後になるのは間違いあるまい。有終の美を飾った法律といえよう。 結局のところ、当初の構想よりは遅れたが、予定通り2005年に開業するようだ。 ところが、今もって、詳細が開示されない。これでは、とても駅前ビジネスを始めることはできまい。鉄道事業にとってはマイナスだ。にもかかわらず、開示しないのだから、魅力のない運行内容なのだろう。批判をかわして、ともかく開業するのだろう。 このような状況を見る限り、新線の乗車人員低迷は確実と言えよう。 そもそも第3セクターの鉄道になったこと自体、鉄道業者がペイしない路線と判断したことを示している。補助無しには、大混雑で有名な常磐線と競争していく力は無い訳だ。 時間短縮だけはウリだが、それは終着駅までの特急の話しである。常磐線の利用者地域からの通勤時間が大きく短縮できる仕組みがあるとは思えない。通勤客にとっては魅力の薄い路線となろう。 事業コンセプトは「常磐新線」ではなく、「つくばエクスプレス」なのだ。 しかし、このような通勤新線のコンセプトが、時代錯誤感を醸し出しているのではない。 圧巻は、宅地開発方針と鉄道建設が一体化している点だ。まさに、大昔のコンセプトである。 これから宅地を次々開発しても、完成は2010年以降になる。その頃、一体誰が移住してくるのだろう。首都圏では、すでに都心回帰が始まっている。海外からの移住者でも考えているのだろうか。 住宅地域の基本インフラから新住民向けの公共サービスの提供基盤まで揃えて、結局のところ、住民はいない、ということになりかねない方針である。 民間企業なら、とても考えられない計画である。 といっても、つくば―秋葉原間は45分で結ばれるから、渋滞必至の東京駅発高速バス利用者にとっては大いに嬉しい話ではあるが。 文化論の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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