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2003.6.27
 
 


メジャーリーグとの違い…

 2003年6月、科学的根拠が無い「日本独自の薬」が治療に使われている、とのニュースが流れた。厚生労働省研究班の白内障診療指針の話しである。(http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20030624it01.htm)
 治療の実態が、ようやく表にでてきた。

 白内障は水晶体が濁る病気だが、簡単な眼内レンズ手術で解決できる。従って、手術できない特別な人を除けば、進行を遅らせる治療に意義などない。そもそも、「飲み薬」で白内障の進行が抑制できる、との理論自体が理解できない。欧米で、そのような薬が存在する訳があるまい。
 さらに驚くことに、素人でもあるまいし、医者が、白内障予防と称して、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチンを推奨しているという。

 要するに、「効果の不明な薬が、定期的に通院させるための手段として使われている」のだ。(茨木信博・日本医大千葉北総病院教授)
 こんなことは、業界では「常識」だが、改革の動きはほとんどない。ようやく、当たり前の発言がマスコミに登場し始めたというところだ。
 
 と言うと、正確でないかもしれない。
 2001年度に、当時の厚生省が「診療指針」のデータベースを作成してインターネットで公開する計画を提起した。当然のように、医療費削減に利用されるとのことで、猛反対にあった。そして、日本の政治の特徴である、うやむや型で決着した。それが、いまもって続いているのだ。
 実は、「科学的根拠(evidence)に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究」はすでに行われている。
 患者用説明書も含めた形で、学会のリーダーがまとめた。[「平成13年度総括・分担研究報告書 2002」(主任研究者:小原喜隆),厚生科学研究費補助金:21世紀型医療開拓推進研究事業(EBM分野)]

 しかし、部外者には、この報告書の存在自体全く知らされていないし、どこで閲覧できるのかもわからない。インターネットで公開する人もいない。
 これが、医療関係者の基本姿勢なのである。

 日本以外の国々では、普通は、「診療ガイドライン」は一般に公表される。と言うより、さまざまな機関が診療ガイドラインを発表し、互いに切磋卓磨している、と言った方が正しい見方だろう。
 日本だけは、この逆を行く。「日本独自」の遅れている治療方法を、できる限り温存したいのだ。

 「科学的根拠に基づく診療ガイドライン」の普及は、情報公開時代の必然である。ところが、日本では、いつまでたっても、この動きが見えてこない。2003年2月に行われた「EBM普及推進公開討論会」では、その理由が公然と語られた。

 黒川清東海大学教授(日本学術会議副会長)が、野球を例にとって、状況を説明したのである。(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/02/txt/s0214-3.txt)

 ・・・日本の野球がメジャーリーグと違うことに、国民がなんとなく気付き始めたのは、野茂をライブで見るようになってから。
 その後、佐々木、イチローと続き、遂に松井が行った。読売ジャイアンツの選手が行くまでに、なんと8年かかった。冒険するのは、ジャイアンツじゃない人だ、とも指摘している。

 ということは、日本版「診療ガイドライン」をインターネットで見ることができるのは、早くて2010年なのかもしれない。


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