↑ トップ頁へ

2003.7.22
 
 


日光浴文化…

 ガングロブームは去り、肌色の流行は黒から白に変わって久しいが、日焼けサロンビジネスが堅調なようだ。

 業界人によれば、日本全国の店舗数は300程度だが、スポーツ施設など1,000箇所以上にマシーンが設置されており、サンタン族が定着してきたという。本場米国では毎日100万人近くが日焼けサロンを訪れるとの話しもあるそうで、市場はまだ膨張するとの期待感を語る人もいる。
 サロンの繁盛期は7月らしいから、小麦色の肌を健康とエネルギッシュな生活の象徴と考えている人は多いのだろう。

 しかし、米国の医学界は日焼けは皮膚のDNA損傷に繋がると主張している。この考え方を変えようとの動きが始まっている訳だ。
 しかも、最近は、日焼け防止クリームの効果に疑問を投げかける論文まで登場し、健康議論が盛んだ。
 (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=10537017&dopt=Abstract)

 ライフサイエンスの進歩で、3段階の生体防御システム(メラニン色素沈着システム、UVによる細胞損傷を修復するシステム、修復不能なDNA傷害細胞を殺すシステム)が次第にわかってきた。この結果、UVAでも、過度な曝露がこのシステムを働かなくさせる可能性が指摘され始めているのだ。もし、UVAも健康に問題あり、となれば、UVAの日焼けマシーンの安全性は否定されかねない。

 米国では、医師は、まずは、日中の強い日光からの回避を推奨するらしい。その上で、できる限り日光が遮断できる衣類を着用するようアドバイスするという。
 要するに、日焼けするな、に変わってきたのである。

 WHOが、日焼けの危険性を明確に指摘したのが、2002年のことだ。
 毎年、皮膚癌発症例が200〜300万にのぼり、13万人にメラノーマが発生しているという。1970年代から患者数は顕著に増加しており、日光暴露を好むライフスタイルと、オゾン層破壊の進行がその原因とされている。(http://www.who.int/inf/en/pr-2002-60.html)
 米国では、毎年54,000人のメラノーマ患者が発生し、7,600人が死亡する。
 日焼けは、小さな問題ではない。

 俗に言う「サンタン」文化は、もとをただせば、ココ・シャネルの提案から始まった、と言われている。
 昔は、日焼けとは肉体労働を意味しており、日焼けしない肌こそがステータスシンボルだった。
 ところが、戸外労働者が少数派になると、今度は、余暇を戸外で過ごしてできる日焼が、逆にファッショナブルと見なされる。  (http://baltimoresun.com/news/nationworld/bal-te.sunscreen14jul14.story)

 この文化が変わるようだ。

 日本でも、ほんの少し前までは、健康のために、日光浴が推奨されていた。
 母子健康手帳から「日光浴」の必要性の記述が消えたのが、つい最近の、1998年である。

 消えてわかったのは、どうも、ヒトにおける日光浴のメリットをはっきり示す科学論文が無いらしい、という点である。
 にもかかわらず、今までは、日光浴でビタミンDが作られメリットが語られて続けていたのである。くる病防止との、時代錯誤的主張さえ横行していたのが実情である。
 オーストラリアでは、子供に対して「No Hat No Play」運動がおきていても、母子健康手帳に記載されているから、「日光浴」の必要性を語る人が大勢いたのである。・・・これこそ、日本の風土そのものと言えそうだ。


 文化論の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2004 RandDManagement.com