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2003.7.29 |
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自殺問題の議論(その1:原因)…2003年7月25日朝のNHKのTVニュースが、警察庁の発表として、自殺が相変わらず3万人を越えており、その理由の多くが生活問題である、と報じた。一方、インターネット版ニュースでは、以下のように報道された。 [朝日] トップ扱い「経済・生活問題が大幅増」 [日経] 上位扱い「生活問題最悪」 [読売] 一般扱い「生活苦動機が過去最悪」 [毎日] 一般扱い 数字のみ 一番詳しい報道がなされた記事では、原因別の自殺者数まで紹介されている。 昨年1年間に自殺した32,143人のうち、最大が健康問題で14,815人、次ぎが経済・生活問題で7,940人、さらに家庭問題となるのだそうだ。 経済・生活問題については、さらに細目まで記載されている。 増えたのが、負債の4,143人(前年比664増)、生活苦の1,168人(同232増)、失業の683人(同117増)。 ほぼ横ばいが、事業不振の1098人、倒産の97人、就職失敗の155人だ。 (http://www.asahi.com/national/update/0725/006.html) ・・・この数値から、ジャーナリストは何を語りたいのだろう。 東京都立衛生研究所が「日本における自殺の精密分析(1999)」で「自殺の増減は景気の動向と密接に関連している」と指摘したが、おそらく、これを繰り返し伝えたいのだろう。 この報告によれば、日本では50−70歳の年齢域において自殺のピークがある。従って、「団塊の世代が自殺好発年齢域を通過し終わるまで、大幅に自殺者を減少させることは困難」としている。 日本で自殺者数が増えるのは、当然の流れだ。 (http://www.tokyo-eiken.go.jp/SAGE/SAGE99/sage.html) そもそも、経済問題ををすぐに自殺に結びつける報道には問題がある。 というのは、日本以外で、そのような傾向が指摘されたことがないからである。極く自然に考えれば、日本社会の「ゆがみ」に由来するのであり、経済問題ではない。 おそらく、日本では、経済問題が発生して環境が変わると、耐え難いほどの強度のストレスにさらされるのだ。これが引き金になって、うつ病が発生すると考えられる。 ところが、リストラや生活苦に遭遇している人のなかから、うつ病患者を早期に発見する仕組みがない。皆が、冷たく知らん顔をするだけである。 しかも、うつ病患者に対して、「君の能力なら簡単にできる。頑張れ。」と励ます。自殺を引き起こしかねない悪化状態にもかかわらず、皆から、そこら中で励まされる。余りに酷である。 病で動けなくなっている患者に対して、ゆっくり休めと言わずに、逆に励ませば、どうなるかは自明である。・・・こんなことさえ、日本社会では常識化していないのである。 その上、経済苦という名目での「追い込まれ自殺」もある。これはうつ病患者とは違い健常人の自殺だ。生命保険金で工面を強要される、殺人に近い自殺である。 こちらは、年間何件あるのか、未だに、さっぱりわからない。闇につつまれたままだ。 実は、これこそが、日本社会の特徴である。 日本の金融は、担保と保証人で成り立っている。そのため、破産必至であっても、保証人になった知人に迷惑をかけまいと、一縷の望みを賭け、最後の最後まで無理を重ねることが多いのである。そして、結局のところ、保険金しか解決策がなくなってしまう。 皆の生活を守るため、自殺してくれ、と囁やく人がいる訳だ。そして、こうした自殺を「家族愛」と賛美する人さえいる。命より、金に価値を見出す人が大勢いる社会なのだ。 こちらの自殺は原因がはっきりしている。元凶は旧態依然とした金融の仕組みである。保証人制度を無くさない限り、解決はあり得まい。 文化論の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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