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2003.10.14
 
 


「なんばパークス」は脱浪花…

 2003年10月7日、野球場跡地の複合商業施設「なんばパークス」がオープンした。関西空港入口にもあたる地域の再開発だ。バイオリン奏者の葉加瀬太郎氏が総合プロデユースしたそうだ。大阪に少なかった「緑・水・光」の潤いをもたらすと共に、そこに芸術が加わるとの思想のようだ。
 ウリは2つある。中水利用や打ち水施設による緑化(8,000平米の「屋上庭園」)と緑に囲まれた歩行路(「キャニオン」)だ。オブジェ等を配置しており、水/音/光による演出がなされ、誰でもが驚く素晴らしいでき映えだ。
 (http://www.nambaparks.com/project/index.html)
  [設計]
  ・高層ビル(地上30階/地下3階):日建設計
  ・商業棟(地上11階/地下4階):大林組本店一級建築士事務所、The Jerde Partnership International


 今までとは全く違う街作りである。

 コンクリート建物の全面ガーデン化を図ったから、新材料や新技術を駆使した野心的な試みであることは間違いない。

 技術の革新性もさることながら、設計のコンセプト自体も全く新しいものといえる。

 従来型の、生産性一本槍の考え方を止めて、街のシナリオを優先するようになったからだ。無駄を容認した上、個々の建築物に対しても注文をつける。要するに、個々の建築の集合体ではなく、街とその周囲を含めた全体を重視する訳だ。従って、今までないがしろになっていた、建築物間の隙間や、それぞれの開放/閉鎖と連結の仕方を徹底的に考え抜くことになる。

 個性ある街並みを、上り下りを含め、歩きながら楽しむ趣向を極めた設計、といえる。専門デザイナーが担当する建築物やオブジェをランドスケープに取り込み、水、光、音で感性を刺激する方策を練ったのである。この結果、歴史が無い街にもかかわらず、街の持つ独特の雰囲気を味わうことができる。

 ・・・というのは、オフィシャルな誉め言葉でしかない。
 もっとも、マスコミは総じて大歓迎で、こうした見方以外はほとんど見かけない。

 しかし、素人の正直な感想を語れば、残念ながら、誉め言葉はでてこない。
 「なんばパークス」は、どこかで見たコンセプトに映るからだ。

 しかも、大阪のミナミにこのようなコンセプトの施設を作る理由がさっぱりわからない。特に、東京人には、吉本興行のイメージとグランド・キャニオンに見たてた商業施設がどうしても繋がらないのである。
 中味もなんの変哲もない有名店が多数並ぶだけだ。食道楽浪花の特徴を生かした主張もほとんど感じない。7階の「大阪ヌードルシティ〜浪花麺だらけ〜」と8階の大阪発レストランテ「スッド・ポンテベッキオ」が地元臭さを訴えている程度だ。
 大阪府立大社会人大学院も開設されているらしいが、どこからみても文化施設の印象は薄い。
 結局のところ、唯一の大阪らしさは、「有料」貸し菜園位だ。

 このことは、今までのミナミ臭さからの脱皮を目指した街作りが行われているとも言える。古い町とターミナルの大デパートが同居する、雑然とした状況を突破しようと考えたのかもしれない。
 しかし、複合都市と称するものの、住居がある訳ではない。街は新しいが、新しい生活スタイルの住民が登場することに繋がるまい。
 従って、表層的な集客施設、との印象は否めないのである。

 このように眺めると、ともかく目立てばよい、との大阪風発想を重視した施設ではないかと思えてくる。
 思わず、文字通り沈下しつつある関西空港と同じ道を辿ることにならないか、心配になる。これが杞憂でなければよいが。


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