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2003.10.19
 
 


ビダンの流行…

 「BiDaN」という雑誌をご存知だろうか。
 (http://www.indexmag.co.jp/bidan/index.html)

 ファッション誌のジャンルに入るのだが、発行部数が35万部と言われている。

 といっても、感覚がつかめないかもしれない。
 この分野に興味ない人でも、海外雑誌日本版の「ヴァンサンカン25ans」や「VOGUE NIPPON」、古くから見かける「装苑」「流行通信」「MEN'S CLUB」といった名前は知っていると思う。これらの雑誌は30万部に届かないらしい。

 この雑誌は、渋谷/原宿/青山のビューティサロンの紹介と、美容/ファッション情報で埋まっている。なかでもヘアスタイルとメークに関する新潮流やテクニックの紹介は図抜けているらしい。
 ・・・と言うと、女性向けと勘違いするかもしれないが、題名でわかるように、男性用雑誌である。

 若者のブームは、一気に広がるから、この現象も一過性と思っていた。
 例えば、コギャルお好みのガングロはすぐに広まったが、安室奈美恵が消えて、浜あゆが登場したら、すぐに美白系への転向が始まった。
 男性の「キレイ」志向も同じで、すぐに飽きがくると見ていたら、裏切られた。
 いまや、メークは、完全に若者の生活の一部として定着した。若い男性が「キレイ」を目指して化粧ポーチを持ち歩くようになってしまった。

 お蔭で、この層にターゲットを絞り込んだメンズコスメが絶好調のようだ。機を見るに敏な、コンビニの棚を見れば、この傾向は一目瞭然だ。

 但し、メンズコスメといっても、昔の男性化粧品とはコンセプト違う。ヘアファッション用化粧品は当たり前で、今や、「つるつるお肌に、細い眉」の実現、がコスメの訴求の要になってきた。
 と言っても、知らない人が多いから、若者のコスメの生態をまとめておこう。

 眉には特に思い入れがあるらしく、時間をかけてメークする。アイブロー、眉カット鋏、眉毛抜きを、好みで選定し、メークのスキルを始終磨いている模様だ。もちろん、眉用のコーム/ブラシも必須用品だ。眉を目立たせるために、睫毛メークも重要になっている。マスカラも使う人もいる。睫毛カットと、カールは当たり前になっている。従って、ビーラーは必需品で、専用ローションと共に、日常用品化が始まっている。
 お肌のお手入れは、女性とほとんど同じである。美顔、美肌、美脚が鉄則だ。
 顔は脂分が多いから、洗顔フォームと毛穴パックが重要らしい。顔パックも適宜行っている。当然ながら、脂取り紙は必携品である。
 ヒゲ剃りは徹底的に行う。場合によっては、脱毛処理するという。
 唇は美しい輝きが生まれるように、常にリップクリームを塗って、お手入れを怠らない。口内も、歯磨きだけでなく、歯パックを使うらしい。清潔感が長続きするように、美容歯科クリニックで表面塗布や張り合わせする人も少なくないそうだ。
 手足は、もちろん、脱毛が原則。脱毛クリームを使う人が多いと言われているが、美容クリニックでの脱毛も急増しているそうだ。爪は専用鑢で磨き、透明マニュキアを塗る。

 ・・・何故ここまでするのか、不思議に思う人が多いだろう。

 確かに、その通り。不思議な現象だ。
 オーストラリアほどのマッチョ志向は例外だろうが、ほとんどの先進国では、若い男は「強さ」願望を持つ。「キレイ」願望など聞いたことがない。
 日本で突然変異が発生したのかも知れない。

 しかし、よく考えると、これは若者が変わったというより、親の価値観を見ながら育った子供の当然の姿勢と言えそうだ。

 というのは、「キレイ」の内容をよく見ると、偏向した「清潔」感に基づいているからだ。
 典型は、分泌物に対する態度だ。若ければ分泌物が多いのは当然だが、徹底的に嫌う。おそらく、この感覚は、親の教育を通して身についたものだ。不潔と見なしたら、徹底的に排除するように、指導されてきたのである。過度な清潔を追求させたため、歪んだ感覚を持つ若者が生まれたのである。
 例えば、若い女性のほとんどが、オヤジ臭さを嫌う。昔から年齢臭はある。しかし、その臭いを排斥し始めたのは、最近になってからである。
 年寄りになれば、誰でも独特の臭いを放つ。一方、赤ん坊も相当ヨダレ臭さい。しかし、前者は不潔で耐えられないが、後者はかわいくてOKなのである。
 要するに、老いは不潔だという訳だ。親の価値観が受け継がれたのである。

 特に、若い女性にこうした偏見が広まっている。そして、本人達は偏見だと思っていない。

 現実を直視すると、この偏見の異常さが見えてくる。
 「清潔」好きな筈なのに、自分自身は「清潔」な生活を送っていない若い女性が増えているのだ。
 つまり、自分はかまわないが、他人に対しては、過度ともいえる位「清潔」を強要するのである。子供のころ、親に強要されてきた習慣が、大人になって現われてきたといえる。

 若い女性に好かれたい、と思うなら、「キレイ」でなければ、そばにもよれないことになる。

 若い男が、「キレイ」にこだわるのは当然である。


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