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2003.11.1
 
 


裏社会化 (1:地下経済)…

 ここ1年、地下経済問題を語る人が急に増えた。

 火付け役となったのは、「日本の地下経済 脱税・賄賂・売春・麻薬」(講談社 2002年1月)である。
 [より詳細な記述の続編:「日本「地下経済」白書―23.2兆円!驚異のアングラ・マネー」(祥伝社 2002年2月) 、「日本アングラマネーの全貌―地下経済の隠し総資産」(講談社 2003年1月)]

 著者は、マクロ経済分析の専門家(浜銀総合研究所エコノミスト)門倉貴史氏。外国人記者クラブで講演した位で、今や、裏経済専門家と言われている。(著書によれば、望むところではないそうだが。)
 緻密な現場実態調査(特に、風俗産業)をベースとした産業規模(フローとストック)の試算書であるから、読めば、「そんな程度か」という感慨に浸ることができる。
  ・闇労働従事者は少なくとも300万人
  ・地下経済はGDPの4.5%

 初の「まともな」推定データだから、面白く読める。情報が欲しかった人には役立つ。といっても、それ以上でも、以下でもないから、闇社会に対する問題意識を持って読む人には多少物足りないかもしれない。

 一方、毒になるのか、薬になるのかわからないが、強烈な主張の闇経済批判本もある。日本の裏社会問題を指摘した本で、こちらも流行っている。
 タイトルは「日本がアルゼンチンタンゴを踊る日」(光文社 2002年12月)
 ¥667のペーパーバック版で、金融業界のサラリーマン中心に、よく読まれているようだ。著者は、雑誌Forbesの東京ビューローのチーフを勤めるBenjamin Fulford氏。
 [続編:「ヤクザ・リセッション さらに失われる10年」(光文社 2003年10月]

 正直なところ、読後感から言えば、データ本ではないから、多少、雑という印象を受けた。
 しかし、「闇社会(ヤクザ)が、政・官・財と組み、不良債権処理をはばんで、不況を長びかせている(Yakuza Recession)」という一点に主張を絞っているから、日本社会が抱える問題点はひしひしと伝わってくる。
  ・人口動態から見て日本はピークアウト
  ・日本の仕組みは社会主義型
  ・不良債権の1/3〜1/2はヤクザ絡み
  ・政/官/財の権力構造にヤクザがとり込まれており、これにメディアが癒着
  ・過去を否定しない限り改革不能

 要するに、今のままなら、日本は国家破産・預金封鎖・資産凍結に進むと見ているのだ。にもかかわらず、何もしないのはどうかしている、という訳だ。
 この主張が、ビジネスマンの共感を呼び、流行っていると思われる。

 但し、この本を、ヤクザ経済論という観点に絞って読むと、難点がある。 (本の趣旨が違うから当然だが。)
 読んでも、変化の方向感がつかめないのである。
 読者にとっては、先ずは、ヤクザの社会への影響力が増しているのか、減っているのかが、はっきりしないからだ。

 そもそも、日本の社会は、ヤクザの存在を必要悪として容認してきた。便利に使ってきたとも言える。
 県警幹部が広域ヤクザの会合に招かれ、批判を浴びた時代もあった。昔は、喫茶店でさえ、法に触れない形でショバ代を払うのが常識だった。ショバ代さえ払えば、取り締まりニュースを貰える、と平然と嘯くヤクザ系風俗店主がいた位だ。(昔は、産業界でさえ、総会屋が跋扈していたのだから、特殊な事象ではない。)

 こうした状況を正当と思う人などいまい。そして、時間はかかってはいるが、常識外れな動きは、次第に排除されて来たと思う。・・・確かに腐敗したボスばかり目立つが、ヤクザを抑える流れを作ってきたのも、ほかならぬ政/官/財の内部勢力である。遅々とした歩みとは言え、ヤクザ経済を一部の領域に押し込める方向には進んでいた。

 重要なのは、このような動きが続いているかだ。バブルで逆行があったこのは紛れも無い事実である。その結果、裏社会の力がとてつもなく強大化しているのかも知れない。


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