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2003.11.20
 
 


プロ野球界のしきたり…

 プロ野球で「無償トレード」が行われた。スポーツ新聞を一通り眺めてみたが、呆れ返ったり、怒ったり、といった姿勢の記事が多い。

 誰でもが驚くのは、球団トップ自らの判断だけで、「無償」で大型選手を放出した点だ。トレード益が稼げる筈なのに、見返りとしての交換要員や金銭要求を放棄したのである。にもかかわらず、何のお咎めもない。
 会社の高額な資源を、経営者が勝手に無償で他社に供与すれば、ビジネス界の常識なら、すぐに経営陣の背任が問われるだろう。プロ野球界は常識が通用しないようだ。

 もっとも、同じプロ野球界でも、米国メジャーの場合は、選手の契約書を選手会事務局に提出することで、第3者が「口約束」や「裏工作」がないように、目を光らせているそうだ。
  (http://www.nikkansports.com/ns/baseball/mlb/shikama/mb-shikama-0026.html)

 日本の野球界は裏取引を正式な交渉と見なすらしい。今回の決着も、経緯は一切藪のなかだ。
 しかも、球団オーナーが涙を浮かべ発表したとの報道もある。悔しいのか、悲しいのか、はたまた演技なのか、部外者には、何の涙かさっぱり理解できない。

 野球界には、立派なお目付け役もいる筈なのに、黙認状態だ。これが、しきたりなのだろう。

 報道によれば、球団の昨年度決算は11億円の赤字だという。そのため、本年度働けなかった選手の年俸2億1,000万円の負担軽減を図り、放出したらしい。
  (http://www.sanspo.com/top/am200311/am1105.html)
 負担が重すぎるなら、放出は、企業なら当然だ。そして、トレードが上手くいかないなら、自由契約にするだけのことだ。払えないものは、致し方あるまい。経営に自信があるなら、恥じることなど無い。
 ところが、何故か裏取引を行ったのである。

 球団の2003年度出費は、選手年俸35億円を含む60億円になるという。一方、収入は、322万人の観客からのチケット代金35億円と、商品ロイヤリティや放映権が10億円であるから、大幅不足である。不足分はパトロンが埋めるしかない。ところが、支払われていないという。
 (http://www.nishinippon.co.jp/nishispo/03kokubo/ren_shock/02.html)

 これでは、給与支払いにことかく状態だろう。これで、どうして球団活動を続行できるのか、部外者には謎である。
 しかも、パトロンが全く機能していないにもかかわらず、経営権譲渡の話しもでない。

 これほど旧態依然たるビジネス文化が通用する分野は少ないのではなかろうか。

 ・・・あるいは、実は、こうした慣行こそが日本社会の主流かもしれない。皆、黙して語らずなのであるから。
   公正なルールを重んじる企業は、ほんの一部、というのが日本の実態かもしれない。


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