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2004.3.27 |
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レトロな街の復活とは…ここ数年、昭和30年代のノスタルジーに浸る風潮が目立つ。時間とお金に余裕がある世代が昔を懐かしみ始めた上に、昔を知らない若い世代も過去への好奇心が湧いてきたようだ。お蔭で、昔の街並みが流行っているそうだ。 実際、昭和30年代の風俗・生活を見せる博物館は、全国に点在している。(1) コストを考えなければ、街歩きの楽しさが増えるので、皆喜ぶ施設と言えるかもしれない。 そして、全国至る所に、昭和30年代記念館ができるのだろうか。 人が入らない、民俗資料・郷土博物館が衣替えするだけに終わらなければよいが。 どのみち、博物館で産業を興そうと考えている訳ではなさそうだから、地域の人達が欲しければ、作ればよいだけのことだ。 しかし、折角、このような流れがあるのなら、産業化も検討したらよさそうに思う。 と言うより、昭和30年代イメージの商店街はすでに作られている。首都圏には5例あるとされる。(1) どのようなものか見てみよう。 一つ目は、千葉市美浜区新港の施設である。実態は、「ミハマ・ニューポート・リゾート」というスーパー銭湯である。 お風呂場へは、「湯快爽快 湯けむり横丁」と名付けられた飲食店街を通り抜けて行き付く造りになっている。 広場の中央に、座敷やテーブルを設置し、周囲に飲食店、駄菓子屋、タバコ屋が取り囲む構造である。この街のイメージが、昭和30年代という訳だ。(2) ウリは商店街とは思えまい。どう見ても10種類以上のお風呂を堪能するための施設である。 話題性があるデザインを登用したにすぎないと思う。 続いては、東京・東池袋のサンシャインシティ・ワールドインポートマートビルの2〜3階を占める、有名なナムコの「ナンジャタウン」である。 ここに、昭和30年代の餃子ブームに沸き立つ街、とのコンセプトで作られた「福袋餃子自慢商店街」がある。(3) 「6つの街に26のアトラクション」というテーマパークの中の一部である。メインではない。昭和30年代の民俗を楽しむというより、本物の餃子の匂いがムンムンするなかで、活気が感じられるデザインとして選ばれたに過ぎないと思われる。 飲食店街のコンセプトという点で見れば、もっと純粋な食のテーマパークがある。 新横浜にある「新横浜ラーメン博物館」だ。2004年3月で、開館10周年を迎える。(4) こちらは、ラーメンを食べるために、わざわざ出かける気にさせる企画だ。たいしたものである。国民的人気食だから可能だったともいえるが、B級食を楽しんで食べる環境としては、昭和30年代の雰囲気は確かに合っている。 映画で観たような、ミナトヨコハマ波止場町の飲食街を再現するとのふれこみの「HATOBA横丁」も同じようなものだ。気取らずに食べられる雰囲気作りといえる。 もっとも、ここは、みなとみらい21/横浜ワールドポーターズの2階のデッキ部分である。1〜6階には、世界のファッションやフードが揃っている訳で、全体から見れば、付けたしと見なされてもしかたあるまい。(5) しかも、ラーメンとは違って、メニューの統一性は図れないから、来客のニーズに合わない店はつらい。ここで昭和30年代の飲食店街の雰囲気を保つのはかなり難いと思う。 トリは、港区台場・デックス東京ビーチにある「台場一丁目商店街」である。こちらは、B級食飲食街色をできる限り消している。昭和30年代調の本格的商店街といえる。成功が難しそうな企画だが、著名人の出店を図ったりして、街全体の魅力を上げ、集客力を維持しているようだ。(6) とはいえ、この街だけで成立している訳ではない。 この施設は、ビーチリゾート、異国情緒をウリにする街(「台場小香港」)や、近未来的アトラクション(「東京ジョイポリス」)も併設した、1日遊べる複合パークなのである。ショップやレストランも、もちろん充実している。これだけ揃える必要があるのだ。 どれもこれも、ビルの商店街である。作り物だが、楽しいのである。 ということは、昔の文化に浸るというより、商空間デザインにおけるひとつのファッションに過ぎないと言えそうだ。ラーメンを食べるのに、ポップ調と、レトロ調の、どちらの店装がよいかという程度の話しとも言える。 これは、昭和30年代の風俗を振り返って、文化を楽しむセンスとは、全く別物だ。 ということは、本格的に昭和30年代の風俗が楽しめる場ができれば、人が集まる可能性もありそうだ。 おそらく、それは、ビル内の、人工の街では無理だと思う。寂れた、レトロそのものに映る商店街にチャンスがあるような気がする。ここで、文化的な特徴を打ち出せば、昭和30年代調の魅力的な街に変えることができるかも知れない。 もっとも、今まで変革を避けてきたから、街全体が寂れた訳で、今更変える気は無いかもしれないが。 --- 参照 --- (1) 「『昭和』にタイムトリップ 懐かしの30年代に出会えるスポット」三井グラフ 134号 2004年1-3月 一部画像掲載予定 http://www.mki.co.jp/mitsuiPR/graph/index.htm (2) http://www.yukaisoukai.com/sisetu/yukemuri.html (3) http://www.namco.co.jp/tp/nt/park/fukubukuro/index.html (4) http://www.raumen.co.jp/home/institution.htm (5) http://www.yim.co.jp/shop/2_53.htm (6) http://www.odaiba-decks.com/ichome/ 文化論の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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