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2004.4.24
 
 


雑誌に見る東京の先走り…

 2004年4月に東京でメジャーリーグの開幕戦が行われた。選手のウエアにロゴとパッチをつけるために、日本企業が1,000万ドル支払ったとの報道がされている。
 たいして驚くことではないが、米国では、これを広告埋め込み現象と見るようだ。(1)

 何故、埋め込み広告が気になるのかといえば、ASME ガイドライン(雑誌の記事と広告の分離規定)が脅かされる可能性があるからである。

 と言っても、もちろん、メジャーリーグ広告の話しではない。記事と広告の境が曖昧化しやすい雑誌の販売成績が好調だから、ガイドラインの無力化を心配する人がいるのだ。

 そんな危惧感が生まれたのは、女性向けカタログ集大成型の雑誌「Lucky(2)」が大成功を収めたからだ。今や、発行部数は、月90万部だという。
 2003年10月には、Advertising Age のMagazine of The Year に選ばれており、僅かな期間で、マーケッターが注目する雑誌に上り詰めたのだ。

 これは、米国の消費者の変化の兆候だと思われる。

 そして、これに味をしめたようで、2004年3月には、は25〜45才の男性をターゲットにしたショッピング雑誌「Cargo(3)」を創刊した。

 日本ではたいして珍しくもない体裁の雑誌だが、米国では全く新しいジャンルの雑誌だ。
 米国では男性向けといえば、「GQ」/「Esquire」といった類か、「FHM」/「Maxim」/「Stuff」/「Playboy」/「Blender」/「Razor Magazine」と相場が決まっていたのである。

 そのため、それなりの新鮮なイメージがあり、読者には好評のようだ。そして、商品選択のために雑誌を購入する層ができつつあるようだ。
 その結果、こうした雑誌の威力が次第に明かになって来た。(4)

 日本でも、雑誌を見て商品購入を決める層ができあがりつつあるが、米国でも遅れて、同じ動きがおきているようだ。
 ファッショナブルな生活スタイルをおくる層が、世界的レベルで同質化が進んでいると見ることもできよう。

 この勢いが続けば、米国市場のマーケッターにとって、「Lucky」と「Cargo」が最重要な雑誌になる可能性もある。

 もっとも、米国では、このような類の雑誌を忌み嫌う人達もいる。
 WashingtonPostのStyle/Magazine Reader に掲載された記事(2004年3月23日)は、流石に手厳しい。
 「Cargo might be the worst idea for a magazine in human history. It's certainly the worst idea for a magazine since December 2000, when Conde Nast launched Lucky, a shopping magazine for women.」(5)

 従来の価値観から見れば、最悪の雑誌だろうが、溢れる商品群に埋まっている市場のなかで、ファッショナブルに生きたいと考える人にとっては一番便利な雑誌といえそうだ。

 なんとなく、購読層のライフスタイルが見える気がする。
 リビングルームのマガジンラックには「Cargo」だけでなく、「NewYorker」も入っている可能性が高い。さらには、「Wired」も混じっているかもしれない。独自のお洒落な生活を目指しているのだ。

 実は、これらの雑誌は、ニューヨークの出版社、Conde Nast Publications(6)が発行している。
 発行誌一覧を見ると、東京もニューヨークも同じ傾向にあるように見える。都会は世界的に同質化が進んでいる訳だ。そして、「Cargo」創刊でわかったことは、ニューヨークではなく、東京が先鞭をつけている点だ。
 東京が文化の発祥元なのである。

 --- 参照 ---
(1) http://www.adage.com/news.cms?newsId=40248
(2) http://www.luckymag.com/
(3) http://www.cargomag.com/
(4) http://www.boston.com/yourlife/fashion/articles/2004/04/05/advertisers_retailers_closely_watch_cargo_mens_shopping_magazine/
(5) http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A16524-2004Mar22.html
(6) http://www.condenet.com/condenast/

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