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2004.7.9 |
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米国大統領選挙の「怖い」対立軸…米国大統領選挙運動が本格化してきた。赤(共和党)と青(民主党)の対立が激化している。両者の反目は今までの選挙を越えているように映る。 民主党はJohn Edwards 上院議員が副大統領候補に決まり、論戦はさらに熾烈なものとなろう。 Edwards 候補は、南部の貧しい育ちで、若くて人気があるから、北東部エスタブリッシュメント出身で、経験豊富なJohn Kerry 候補は、おそらくコンビを組んで現職大統領に挑むことになろう、との下馬評通りの進展になった。 ・・・と考えながら、紹介されている履歴(1)を見ていて、ふと、NewYorkTimes のDAVID BROOKS 氏の評論(2)を思い出した。 Edwards 上院議員が「弁護士」という点で、この評論が指摘した、両党の対立を象徴するような人物だったからである。 と言っても、論評の中味は単純で面白いものではない。 どの社会にも2つのaristocracy が存在するという陳腐な説と言えないこともない。 aristocracy という単語は日本人には馴染みが薄いが、democracy という言葉なら誰でも知っている。democracy は、demo(民衆)とcracy (統治)からなる。一方、aristocracy は、aristo とcracy の造語だ。aristoは「最善」を意味している。要するに、統治のエリートである。日本語訳は「貴族」となる。 言葉の定義はどうでもよいことだが、ともかく、統治のエリートが2種類いる、と言うのだ。 1つ目は「mind 貴族」。・・・アイデアを産出し、知識を提供する人達からなる。 2つ目は「money 貴族」。・・・モノを生産し、組織を管理する人達である。 ロー・スクール卒業生John Kerry 候補 v.s. ビジネス・スクール修了の現職大統領という、冗談にも聞こえる対立軸だが、実はポイントをついている。 確かに、この2大勢力は、考え方が大きく違うのである。 共和党と民主党の政治的対立の根源も、このエリートの対立からきているというのだが、一理ある。 この説は、共和党=保守、民主党=リベラルという常識と似ている点もあるが、基本的な考え方が違う。 共和党の支持者基盤は金持ちで、弱者は民主党という見方とも大きく異なる。 又、共和党は、規制を撤廃し、小さな政府を目指すが、民主党は、政府介入の必要性を重視し、大きな政府をいとわない、といったステレオタイプの見方とも、違う。 新しい対立軸を指摘していると言えそうだ。 今迄は、高度な教育を受けた人の多くは、裕福になり、共和党支持者になる、と言われていた。ところが、社会が変わり、裕福なプロフェッショナルの数が増えた。このため、裕福な層に意識が違う人達が現れてきたと言える。 つまり、プロフェッショナルとマネージャーの対立軸が、民主党と共和党の対立の根源になってきた訳だ。 こうなると、論争の焦点は経済ではなくなる。「文化」そのものである。指導者の資質が問われることになる。 政策論争に見えるが、内実は文化的対立に変わってしまったのだ。 もう一度、まとめておこう。 「mind 貴族」は、知識階級である。当然ながら、情報を分析し、論理を重視し、解決策を案出するような政治を好む。知性を尊ぶことになる。 一方、「money 貴族」は、他人を使う能力を重視する層だ。日頃から、直裁・単純な主張をする指導者を好む。忠誠心を重視することになる。 この貴族間の対立が、今回の大統領選挙という訳である。 ここまで、はっきり記載してしまうと、怖さを感じてしまう。 一般に、文化的に合わない人達が一緒に行動するのは難しい。どちらかの文化を優先すれば、対立は深刻化する。 従って、両者は、徹底的な戦いを繰り広げるかもしれない。 「money 貴族」は、「mind 貴族」を道徳的に退廃した人々と見なすだろうし、逆に、「mind 貴族」は「money 貴族」を単純で低能力な人々と見なすことになる。 貴族は力を持っているから、社会の底辺まで、その文化を浸透させようと、注力するだろう。 その結果、対立は社会全体に及ぶことになる。もしかすると、米国社会は分裂するかもしれない。 「知」で食べる社会への移行期には、このような文化的対立が不可避なのかもしれない。 --- 参照 --- (1) http://www.johnkerry.com/about/john_edwards.html (2) 「Bitter at the Top」http://nytimes.com/2004/06/15/opinion/15BROO.html 文化論の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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