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2004.12.28 |
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KENTAROが切り拓く新世界Jason Toynbee 著 安田昌弘訳「ポピュラー音楽をつくる ミュージシャン・創造性・制度」(みすず書房 2004年11月(1))は、ポピュラー音楽美学的スタイルや創造の過程を社会学的視点から分析した本だが、この産業がどうなっていくか考える上で役に立つ論考が溢れている。特に、最近の音楽にうとい人間には、まさに目から鱗という感じの記述が続く。 まず驚いたのは、ロックの時代が特異な数十年であるとの主張である。 なんとはなしに、音楽は変わるものだと思っていたが、我々の時代は今までとは相当違う文化を作りあげているのかもしれない。 そして、昔のスイングジャズの流れが、現在のクラブ・シーンに受け継がれているという指摘にも、「なるほど感」を覚えた。 言われてみれば、我々は、演奏を静かに座って聴くだけという習慣から離れつつあるようだ。確かに、「踊る身体」の集合体に意味を見出しているし、どのように音楽を聴くかという点での独自性を楽しむようになってきた。 こんな思いをめぐらすのは、日本に、世界に誇れるDJ KENTARO(岡本健太郎)がいるからだ。(2) 13才から始め、2002年には、弱冠20才にして「DMC WORLD FINAL」でHIP HOP DJ の王者に上り詰めた逸材である。 その構成力と音楽性、場を盛り上げる力は絶大である。 なんと、16人のジャッジ中15人が1位(3 points)と判定した。残り1人(DJ YODA)の評価も2位(2 points)だ。結果、合計は47 points。2位は21 points、3位が12 POINTSだから、ダントツの優勝だった。(3) ターンテーブルと言えば部外者には極めて狭い分野に見えるが、実は、DJ KENTAROの主張は、“NO WALL BETWEEN THE MUSIC”である。 実際、その通りだと思う。 もともと、ポピュラー音楽創造過程には、剽窃と創造が入り混じっている。 作曲した内容すべてが、新たな創造物ということなど稀だ。もちろん全くのコピーは行われないが、常に他の音楽に影響される。言うなれば、気に入った作品の真髄を取り込むということに他ならない。 この混沌から、新しい音楽が生まれてくるのである。 音楽ジャンルを見ても、ブラック・ミュージック、ダンス・ミュージック、クラブ・ミュージックや、ハウス、テクノ、クラブ・シーンといった流れは、違いの発生と言うより、連続・発展の世界と見ることができる。 こんなことを考えると、ターンテーブル技術を駆使して、「少しだけ創造」する「演奏」とは、実は、現代における「大きな創造」と言えそうだ。 --- 参照 --- (1) http://www.msz.co.jp/titles/06000_07999/ISBN4-622-07102-9.html (2) http://www.djkentaro.com/ (3) http://www.dmcworld.com/technics/archive/2002/index.asp 文化論の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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