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2005.4.26
 
 


若者の宗教観に驚かされた

 世代間の感覚の違いは、何時の世でもあるものだが、日本の若者の宗教的行動に大きな変化がおきていることを知った。
 普段見ているだけだとほとんど気付かないが、調査データには、はっきり現れている。(1)

 データを見るまで、何故気付かなかったのだろう。

 その理由を考えてみた。

 神社の参拝状況を見る限り、世代間に信仰の差があるとは思えない。
 データを見ても、“お守りやおふだなど、魔よけや縁起ものを自分の身のまわりにおいている”人の割合は、若年層(16才〜29才)が32%、高年層(60才〜)が31%だ。ほぼ同じである。

 もっとも、お墓参りになると、流石に差がでる。  “年に、一、二回程度は墓参りをしている”人の割合は、若年層が52%、高年層が75%。だが、若者の半数がお墓参りを習慣にしている訳だ。若者が、お墓参りに行かない、という数字ではなかろう。
 若者ならそんなものではないか、という感じがする。親が必ず墓参するから、今回は勘弁してもらおう、という気になってもおかしくないだろう。

 但し、お墓参りに行くからといって、宗教を重視している訳ではない。
 聖書や経典を読む人は極く一部に過ぎないからだ。若年層は2%、高年層で9%、平均では6%だ。1973年の数字が11%だったから、宗教離れが進んだといえる。
 と言っても、全体の1割を対象した話である。
 こんな数字で議論してもたいした意味はないだろう。

 もともと、大多数の人にとっては、宗教的行動とは生活上の慣習にすぎないのである。

 おそらく、こうした見方にとらわれていると、若者の変化に気付かない。

 それでは、どこを見ればよいのか。
 特徴的な項目で、調査結果を引用してみよう。

 先ずは、“この一、二年のありだに、おみくじを引いたり、易や占いをしてもらったことがある.”という人の割合。
 これを見ると、若年層は44%なのに、高年層は11%なのである。
 一瞬、見間違ったかと思った。逆の数字を予想したからだ。

 “お守りやおふだの力”を信じているデータも同じ傾向を示している。若年層20%に対し、高年層は12%にすぎない。

 お年寄りは、迷信にとらわれがちで、易や占い好きというのは、偏見であることがわかる。実際は、若者の方が易や占いの結果にとらわれているのだ。若者は遊び半分で易や占いをしてもらっているのではない。本気なのである。

 若い人が、普通の宗教以外の神秘的なものに強く惹かれていることがわかる。

“信じているもの” (若年層)(1)
1973年 2003年
神か仏を信心 29% 25%
他を信心 23% 41%
無信心 41% 26%
 そのことを端的に示しているのが、若者が信じている対象に関する暦年推移データだ。

 1973年には、神仏以外のものを信じている人は少数派だったが、2003年になると、多数派になってしまった。
 つまり、「神や仏は信じないが、あの世や奇跡は信じる」人が急増している訳だ。

 若者の宗教離れが進んでいるとよく聞かされるが、無信心者が増えたと勘違いしてはならない。無信心者は増えるどころか、激減だ。

 以上を若者の考え方にまとめあげると、次のようになるのではないか。

 “宗教離れなど考えていない。神や仏とは、風習として、今後も、適度にお付き合いするつもりだ。
 しかし、ご利益が保証されない限り、神や仏のお説教を聴くつもりはない。
 一方、易や占いは、具体的な指針を与えてくれるから、ご利益がありそうだ。これなら、信心の対象となりうる。”

 --- 参照 ---
(1) NHK放送文化研究所編「現代日本人の意識構造[第六版]」日本放送出版会 2004年12月
  2003年6月の第7回調査結果の分析報告書である. 第1回は1973年.


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