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2007.2.6 |
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異文化コミュニケーションの難しさ語学学校の“外国人講師7人、大麻など所持で逮捕”(1)とのニュースが流れた。さもありなん。 と言っても、この学校に関する特別な知識がある訳ではない。至るところで看板を見かけることと、一度見たら忘れられないテレビコマーシャルを見たことがある位。 ただ、この学校が、何を目指していたのかを聞いていたから、ありそうなことだ、と思ったのである。 どんな学校か、と言えば、いわゆる教える「学校」とは違い、通い易い所にあり、ネイティブスピーカーとの交流カリキュラムを中心とした、楽しいスクールということになろうか。 今では、こんなコンセプトは珍しくはないが、創立の1981年頃は、そんな学校はなかったのである。そして、今では、語学スクール業界では売上高で圧倒的なナンバーワン。(シェア5割(2-1)) ビジネス評論家が成功の秘訣を語るのに好適な企業でもある。 しかし、この説明だけでは、この企業の出自はよくわかるまい。 実は、“異文化コミュニケーション”を追求したという点が特徴なのだ。 “世界中の人々が、その国家や民族の属性を超えて、 お互いの文化的バックグラウンドと言葉を理解し合い、 世界の文化についての多彩な教養と理解を身に付けていくことのできる 国際機関となることを目指そう。”(2-2) 宣伝のためのキャッチコピーと誤解されかねない生真面目な文章だが、これが事業発祥の原点である。 色々な国を訪ね歩くと、言葉がわからなくても、様々な人達と愉しくすごす機会はいくらでもある。後になって、それこそが旅の嬉しさだと、気付くことも多い。 でも、そんな交流で、もし会話ができたらもっと嬉しいのではないか、と思うのは極く自然な感情だろう。 これが、この会話学校の起業の精神だという。 実にわかりやすい。 この結果、“世界中の人材が、入れ代わり立ち代わり通過する、人材のジャンクションとしての「駅前留学」の環境を全国の駅前に整備する”(2-3)事業が始まったのである。 昔から、駅前に、学生やサラリーマン相手の様々な会話学校があったから、「駅前留学」と聞かされても、面白い言い方と思っていたが、そこには思想があった訳である。 しかし、色々な国を訪ね歩くと、大麻を勧める若者ともでくわす筈。海外では、珍しくはないからだ。 そんな文化を、日本にだけ入れないようにするのは、極めて難しい。 とんでもないものでも、異文化は流入してくるものである。 その典型例は、制服ズボンを下げる「腰パン」。(4) なにが面白いのか、さっぱりわからぬが、高校で大流行。 今では、作業着の「尻パン」もよく見かけるし、小学生までが体操着で「腰パン」だという。 もっとも、どこまで本当か知らぬが、「腰パン」先生も少なくないという話もある。 すでに根付いてしまったのである。 なにせ、ポケットデザインを工夫して、下げなくても、下がったように見えるズボンが売られているそうだ。履きにくても、皆に合わせて履かねばならぬのが、日本社会の掟だから、そんな製品まで登場する訳だ。 言うまでもないが、ここには、異文化コミュニケーションのボタンの掛け違いがある。 「腰パン」とは、英語では“sagger”。抑圧されたアフリカ系やヒスパニック系のヒップホップファッションを指す。 かたや、日本の高校生など、何の苦労もなく学校に通わせてもらい、アルバイトすれば潤沢なお小遣いが稼げる身分。ファッションでどんな反抗をしたいのだろうか。 まったく、これには“ムカツク”人も多かろう。 もっとも、当人達にとって見れば、歩きづらいハイヒール・ファッションで決めている女性の方が余程“ムカツク”のかも知れないが。 これを見てわかるように、グローバル化が進めば、風俗や慣習は無批判的状態で入ってくると思って間違いない。止めようと思っても、簡単ではない。 ともあれ、このファッション、全世界で定着しているようだ。異文化コミュニケーションが進んだ結果、世界的な文化に育ったらしい。 BBCが、健康に悪いから、是非止めてとばかりに、記事にしたが(5)そんなものに影響力がある筈もない。 グローバル化の時代、異文化コミュニケーションは、極めて重要である。しかし、大概の場合、誤解と摩擦を生む。 これを対立にまで進ませないためには、寛容の精神で望むしかない。 --- 参照 --- (1) http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070131i305.htm?from=main3 (2) http://www.nova.ne.jp/ir/pdf/02market_share.pdf http://www.nova.ne.jp/corporation/01visions/visions.html http://www.nova.ne.jp/corporation/05gaiyou/enkaku_1981.html (3) http://www.berlitz.co.jp/company/company_history.html (4) Wikipedia「腰パン」 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%85%B0%E3%83%91%E3%83%B3 (5) “Hip-hugging trousers 'are health risk'” [BBC 2003.1.9] http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/2643185.stm 文化論の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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