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2008.11.13
 
 


マイナー商品を支えるコミュニティが無い…


 だいぶ前だが、「ロングテールは成り立っているのかね?」との質問を受けたことがある。もちろん、雑談。
 ハーバードビジネスレビューに本音話が掲載されたが、(1)あんたはどう見ているの、といった程度の軽い話。
 そこで、つい、日本では、そうした議論に、たいした意味はないと思うとお答えしてしまった。質問の趣旨とは全く違うが、その方が本質をご理解頂けると思ってのこと。

 と言っても、たいした主張がある訳ではなく、特徴あるマイナー商品が次々と消えていく社会で、ロングテール話でもなかろうと言うに過ぎない。

 実は、昔、そんな社会の実態を教えてくれたのは、大手出版社勤務の若者。800部確実に売って採算がとれる事業を進めたいとの夢を語ってくれたのである。外部の人間から見れば、若者にしては、ずいぶん小さな「夢」だと感じたが、話を聞くと、他社ヒット企画の物真似や、下手な鉄砲数打ちゃ当たる式の一発狙いは御免被るというだけのこと。
 それなら、頑張ってやったらと声をかけたくなるかも知れないが、これが結構難物。ベンチャーを立ち上げても、この産業のインフラを使えなければ事業は成り立たないし、そもそも、そんなビジネスにお金を出す投資家もいそうにないからだ。
 マイナー商品のビジネスを立ち上げるのは、実は、大事なのである。その後、この若者がどうされたのかは知らぬが、とうの昔に、夢は諦めてしまったかも。

 インターネットが普及すると、こんな状況を突破できると考える人もいるようだが、日本には適用できない。
 それどころか、日本では、おそらく逆に進む。残念ながら、これが日本の実情である。

 それは、インターネット販売は、検索システム型での情報伝達を旨としているからだ。つまり、メジャーなものが自動的に目立つ仕組みになっているということ。マイナー商品は、より目立たなくなるだけ。
 ただ、埋もれているかに映る商品が並んだり、突如流行ったりするから、これを勘違いする人が多い。こうした動きは、それこそ当たるも八卦型や、一時的な“流行”で様々な商品が登場しただけのこと。普通は、早晩、死屍累々。
 マイナー商品がマイナーなまま生きている例は極めて稀である。
 データがないからよくわからないが、日本では、マイナー商品は尻すぼみ一途ではないか。

 小生は、これこそ日本社会の特徴という気がする。
 そう思うのは、携帯メールに異様に集中する人が余りに多いから。こんな文化が続く限り、マイナー商品は生きていけないと思ってしまう。
 こんな説明では、なにがなんだかわからないか。

 携帯メールがいくら便利だと言っても、一日中連絡しなければならないことがあるとは思えまい。どうでもよい内容の交信が横行しているということだろう。だが、そんな行為を大人が飽きもせずに続ける理由は一つしか考えられない。「仲間」であることを、互いに交信を繰り返すことで確認しているのだ。皆に合わせて群れていないと不安なのである。おそらく、送受信を怠れば、村八分の憂き目に合うから、一心腐乱にメールを繰り返すのだ。

 お気付になると思うが、この手の文化は、マイナーなコミュニティ作りの流れを許容できない。マイナーなコミュニティは、理由なく「群れ」ることを嫌うからこそ、できあがったもの。皆で大騒ぎすることなど、衆愚と見なすに違いない。両者は、それこそ水と油である。
 要するに、「群れ」が、マイナーなコミュニティを駆逐しているということ。

 マイナー商品を支えてくれるのは、一般にマイナーなコミュニティだが、それが生まれない社会なのである。

 こんな、つまらぬ話をしたくなったのは、この質問者に、あるコミュニティの実態を教えて頂いたから。
 ボランティア的に参加しているそうだが、衆愚体質そのものだという。メンバーのほとんどは、いかにして有名になるか互いに競争しているが、その一方で、ともかく皆で「群れ」ようと動くそうだ。提言を旨としている組織だが、なんの創造性も感じられないので、嫌になってくるとか。しかし、この組織に参加しない訳にはいかないという。

 --- 参照 ---
(1) Anita Elberse: “Should You Invest in the Long Tail?” Harvard Business Review [July-August 2008]
   http://harvardbusinessonline.hbsp.harvard.edu/hbsp/hbr/articles/article.jsp?ml_action=get-article&article
  ID=R0807H&ml_issueid=BR0807&ml_subscriber=true&pageNumber=1&_requestid=44112
  議論に興味ある方は、Anita Elberseのブログを参照されるとよいだろう。
(イラスト) [Wikipedia] by Husky http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Long_tail.svg


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