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2010.9.9 |
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発掘音楽を聴いた…
正味40分に内容が凝縮されており、製作者の情熱がこもっている感じがしたからである。 よく考えれば、それも道理。 映像対象のピアニスト、金澤攝(おさむ)さんの、文字通り凄まじいとしか言いようがない演奏を眼前にすれば、いくらプロフェッショナでも冷静にしておられまい。 時間的制約があったとはいえ、演奏家の演奏そのものをできるだけ長く収録しようとしていない点も秀逸。音楽の余韻が残っている状態で、演奏家の思想が伝わってくる仕掛けと言ったらよいかも。 と言っても、小生は金澤攝さんのファンでもないし、せいぜいのところ、エピック・ソニーから“聞きなれない作曲家”アルカン選集全8巻なるものが出たが、その演奏家であるという程度の知識しかなかった。印象としては、それ以後はメディア露出を避けてきた方という感じがしないでもない。 履歴を見ると、音楽学校出身者ではないし、華やかな師事経歴もない。独学が長いから、そうならざるを得なかったのも知れない。日本とはそういう風土の国だから。 → 金澤攝ホームページ プロフィール それが、NHKの放送に登場ということで、初めて、この方の音楽に接することになった訳である。知る人ぞ知るの世界に触れることができたのは有難い限り。 有名な人が出演すれば、聞くにたえない音楽でも“ブラボー”の声がとび、会場は割れんばかりの拍手に包まれるという、とんでもない国であるのだが、その一方で、余り表に出ないところで、素晴らしい人達が大活躍しているというのも日本の一大特徴。ここら辺りが日本の魅力でもある。 番組を見ながら、つくづく感じいってしまった。 もちろん、初めてなのは、ピアニストばかりでなく、曲そのものも。聞きなれないというか、初耳の作曲家だらけ。Alkanだけでなく、Heller、Lefebure-Wely、Hillerと続く。なかには、とてつもない技巧を要求される曲もあり、驚かされた。 このような特殊な曲の演奏までこなすのは大変なことだが、金澤攝氏がそこに力を入れるのは、氏は演奏家というより、19世紀の音楽史研究家だからである。(自分なりの解釈を打ち出す演奏ではなく、作曲家の当時の真意を汲み取った演奏をするということ。例えば、金澤ショパンではなく、現代解釈されない当時のショパンスタイル再現演奏になる訳だ。) ショパン、シューマン、リストだけしかいない“作られた”音楽史を、楽譜発掘と再現演奏によって、“より真実に近い”歴史に書き換えるべく苦闘されていると言う方が正確かも。実に、素晴らしい仕事である。 → 金澤攝: 「蘇る系譜」 (C) PianoTeachers' National Association of Japan [出版物紹介頁] 金澤攝: 「失われた音楽 秘曲の封印を解く」 (C) 龜鳴屋 まあ、こういった分野はマイナーであるのは間違いない。しかし、取上げられている作曲家は当時はメジャーだったのである。素人でも、それがどうして消しさられたのか大いに気になるところ。 ・・・インターネットのインフラを活用して、このようなマイナーな分野でも、愛好家が活発な活動ができるようになるとよいなと思った次第。そして、そんな活動を全く知らなかった人でも、気付いて興味を覚えたら、気楽に入っていける世界ができたら素晴らしいのだが。 ちなみに、ピティナYouTubeチャンネルでは、金澤攝さんの演奏が試視聴可能である。 → 金澤攝: 「登録音源」 (C) PianoTeachers' National Association of Japan 文化論の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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