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2013.6.21
 
 

日本のギャンブラー文化…

溜池通信のオマケなのか、はたまた、もともとは本体だったのか、定かではないが、気紛れで「上海馬券王のページ」を眺めることがある。当然ながらレース予想と結果の話だから、馬の名前さえ知らぬ者にとってはまさにチンプンカンプン。しかし、競馬好きの方々の感性がなんとなくわかるので、それなりに面白い。
なかでも、6月2日の、大阪の元会社員による脱税事件に関する話はえらく参考になった。もちろん、公認ギャンブルの税法上の取り扱いがどうのこうのということではなく、不運にも摘発されたギャンブラーの勝ち方への関心の持ち方。

なんらインサイダー情報にも係わらず、簡単に入手できる勝馬予想のための分析ソフトを使っていただけ。賭けで稼ぐことには熱心だが、競走馬自体には全く興味を持っていなかった可能性もある。馬券を現金購入せず、インターネットで賭けていたため、余りに巨大な儲けが知られてしまった結果の顛末だ。・・・正確な戦績は、"5年間、約35億986万円の馬券を購入"。"差益は1億5507万円"で、"5年間平均で驚異の4.4%プラス"なのだそうな。

競馬はゼロサムゲームではなく、−25%ゲームなのだから、常識的には長期に渡って投資すれば、トントンなどありえない。必ず損をするが、それも又愉しからずやの世界の筈。大当たりを吹聴する人がいるが、それは見栄。
ハズレ臭さ紛々の馬券を購入する人達が大勢いるレースだけに絞って買えば、当たる確率は高くなるとはいえ、−25%の壁は高い。1割損程度でおさめたら画期的というのが通り相場。にもかかわらず、この投資家はプラスなのだ。
・・・常識は覆されたのである。

そうなると、競馬屋さん達は、アイツはどうしてそこまで勝敗がわかるのだと、大いに気になって心中穏やかでいられまい。それが宿命。
なにせ、この世界、掛け金と同じ位、大枚はたいて、ナンダカネーの宣伝文句が踊る予想の方法論や、様々な識者や有名人の予想を入手して勉強を怠らない人だらけなのだから。

上海馬券王氏もご多分に漏れずといったところと拝察。しかし、流石インテリ。言うことが違う。
"この意味するところは本当に恐ろしい。「馬に対する思い入れ」と言う情緒性はもとより、「パドックの気配」とか「厩舎コメント」とか「馬体重増減」とか言う馬券購入者が定跡としてありがたがっている現在情報までが、これすべて一笑に付されていることになるのである。"

ハハハ。
そうなのである。なんと、自宅に不在の時もPCで馬券購入するシステムなのだから。しかも、それが、30%のリターン。
どうしてこんなことが成り立つかといえば、単純至極。
"一般の馬券購入者のよって立つ定跡型に潜む、「嘘」「無知」「矛盾」を見破り、これにつけ込んだと言うこと。"
ようやく気付いたようである。この賭け事、実は馬などどうでもよく、実態は馬券購入者間の心理ゲームだったということ。
でも流石に負け惜しみ。・・・「そんな買い方して何が楽しいんだ」

これこそ、日本文化の「粋」そのもの。上海馬券王氏にはそこらの感覚はなさそうだが。もともと、輸入の高貴な方々のお遊びという歴史があるので、仕方はないが。
競馬に限らず、日本のギャンブラーの面白いところは、矢鱈研究熱心なところ。西洋型教育を受けてきたにもかかわらず、そんなことに精力を使う位なら他に回したらという風には頭は回転しないのである。
但し、これは男の文化である。女性にとっては、ギャンブルで確率を高める研究など馬鹿馬鹿しくて、なんの関心もなかろう。
しかし、決して、日本の女性が"研究"を嫌いな訳ではない。どの占いが当たるかの薀蓄は山のよう。日本の男性にとっては、馬鹿馬鹿しくて、なんの関心もなかろう。

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