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2014.6.17

中国の料理文化圏

[中華麺の粋 (3)]

中国における麺の話をしてきた。その概念は日本とは異なる。文字でもわかる通り、麦を調理したものである。
 [俗字] [繁体字] [正字] [簡体字]
従って、餃子や雲呑であっても、小麦粉から作られているなら、それは麺である。
ただ、小麦渡来以前にすでに雑穀でも、粉モノ調理が行われていたため、本来は異なる文字を使うべきところをはしょったようである。それほど小麦のインパクトは大きかったということ。

山西(普)麺料理>が矢鱈に、作り方に凝って、様々な種類を抱えているのも、小麦の食感を味わうセンスを大事にしているということだと思う。硬質小麦におけるパンの食感の違いと同じで、軟質小麦の食感の違いを敏感にとらえているのだろう。
これは、日本人が米粒食感に拘るのと同じようなものではないか。

麦でも粒食は可能だが、食べたことがある人は一様にこれは不味いとの評価。どう見ても、慣れの問題ではない。ところが、麦も粉食だと美味しくなる。優れた調理だと、格別な味と言ってよいだろう。その美味しさを殺すようなことはしたくないのである。
日本的発想だと、細い素麺の表面に油を塗り、過度乾燥を防止して、長期間寝かせたりするが、どのようなものだろうが乾麺は嫌われると思う。麺に油を塗るのは、あくまでも伸ばすためだろう。
日本の関西地域の粉モノ愛好状況を考えれば、中国において粉モノへの拘りが生まれるのも自然な流れと思われる。
なにせ、中国では、小麦粉が主食なのだから。

ここはしっかりと理解しておく必要があろう。・・・餃子は、お数というか、副食ではないのである。ただ、間食的なものになることはある。多分、それは、米を主食とする人達の対応から生まれたもの。主食の米を小麦粉で代替する気はさらさらないが、粉モノって美味しいゼということで、「点心」という概念を作り上げたのだろう。いわば、半主食である。

要するに、中国食文化は、「南粒北粉」ということ。

麺文化の広がりを確認したければ、それぞれの地域が主張している名物麺を並べてみるとよい。
流石に、山東のような地域はないが、いずこもコレというお好み麺がある訳だ。それはお数との相性ということも大きかろう。

以下、一瞥すれば感じるところがあろう。

   ─・─・─ 中国の麺料理 ─・─・─
 【ウズベキスタン〜中央アジア全域】
  Lagman(拉条子)
 【新疆維吾尓】
  拉条子
  面片湯

  拌麺
  (大盤鶏)・・・煮込みだが、幅広麺を加える。
 【青海】
  面片

 【甘粛 敦煌】
  驢肉黄麺
 【甘粛 蘭州】
  蘭州拉麺(清湯牛肉麺)・・・回族料理
  子麺(長寿麺)
  漿水麺・・・夏季解暑用の凉食

 【峡西 西安】
  
 【山西 太原】
  刀削麺、他(多種多様)
 【山西 大同】
  烙麺(燕麦)
 【河南 鄭州】
  羊肉
 【山東 済南】
  打滷麺
 【山東 煙台】
  福山拉麺

 【内蒙古】
  (燕麦)
 【北京】
  炸醤麺
 【天津】
  (独面筋)・・・グルテン料理
  (包子)・・・"狗不理"ブランド
 【吉林 延吉】
  (朝鮮)冷麺(蕎麦)

 【河北 故城】
  龍風挂麺・・・明朝宮廷貢品向に開発

 【重慶】
  小麺
 【四川 成都】
  担担麺
 【西蔵】 小麦はとれない。高貴な特別料理だったと思われる。
  Thukpa,etc.[Thenthuk.Gyathuk.Pathug,Drethug]

 【湖北 武漢】
  熱乾麺

 【江浙】
  ・・・煮込み。
 【浙江 杭州】
  片兒川麺
 【上海】
  葱油拌麺
  (生煎饅頭)・・・挽肉入りの一種のオヤキ。
 【江蘇 蘇州】
  蘇式湯麺
 【江蘇 昆山】
  奥竈麺
 【江蘇 鎮江】
  鍋蓋麺
 【江蘇 揚州】
  陽春麺(光麺)

 【福建 廈門】
  沙茶麺
  (猪闇獅意粉)・・・スパゲッティイ
 【台湾】
  仔麺
  瓜乾麺・・・福州料理
  玉里麺・・・日式ラーメン類似

 【両広(広東+広西)】
  伊府麺
 【広東 広州】
  雲呑麺
 【香港】
  撈麺
 【広西壮族 桂林月牙山】
  尼姑素麺
 【貴 貴陽】
  腸旺麺

注目すべきは、米主食地帯であるだけでなく、小麦生産に向かない気候の地域にも小麦麺が入り込んでいる点。それほどまでに、人々の心をつかんだ訳である。

と言っても、実は、米食命の人達は麺料理に浸った訳でもないのである。その話は「続き」で。


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