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2014.8.8

若者文化の変質

自殺の話を書いていて、The Economistで読んだ、「Oh You Pretty Things」を思い出した。

言うまでもないが、猛毒歌手のDavid Bowieの作品のタイトル。中味は、こんなところか。
   :
  "No room for me, no fun for you"
   :
  "you're driving your Mamas and Papas insane"
   :

そうなると、酒、煙草、ドラッグ、セックス、暴力、・・・という話かと思いきや、ちょっと違うのである。
イギリスでは、理由なき反抗の時代は終わりを告げつつあるという。・・・
  In 2007,
  111,000 children aged between 10 and 17 were convicted
   or given a police caution for a first offence
   in England and Wales.
  By last year,
  that had fallen to just 28,000.

若者の犯罪激減である。

警察の取り締まり方法が奏功し、コミュニティの若者の扱い方が大きく変わった結果ということもあるのだろうが、それ以上に従来型の若者文化が消えてしまったことがなによりも大きいという。

「独自の価値基準への陶酔」を、"集団"で、大人に見せつけて楽しむ時代は終わったのである。

排他的な感情の発露は、目につく外ではなく、インターネットを介したコミュニケーションの場で行うことになったということか。
若者の疎外感の裏返しでもある「所属」の安心感を得る場は、もっぱらソーシャルネットワーキングサービス内へと変わってしまったのだろう。
そこでは、もともとなんらの統制もない。言うなれば無責任に動き回れる場であり、敢えて道徳的統制への反抗をする必要もないのだから当然の流れと見るべきか。

こうなると、若者相手のビジネスは一挙に萎むことになる。大事になっている企業も少なくなかろう。

よく考えれば、日本でも、そうした傾向は早くから見えていたとも言える。
渋谷の街が大きく変わったからである。
その昔、HMV前の階段には、ガングロのギャルや、ルーズソックスの女子高校生がたむろしていたものだが、すべて今何処。

今や、スマホを通して若者だけで盛り上がる時代。わざわざ大人の面前で主張する気がしなくなったということ。
それに伴い、表にでてしまうサブカルチャーは様変わり。
参加者は大人への毒を消しさり、個性を出来る限り抑え、ただただ「真面目に頑張っている」ことを伝えるまでに。

ナンナンダ感あり。

考えれば、こうなったのは、パラサイト階層が若者の主流になったからでは。自活の見込み薄なら、親や周囲に反抗的な態度を見せる訳にはいくまい。それができるのは例外。

もちろん、自活する以外に手がない層も少なくなかろう。しかし、そこには、反抗するような"間抜け"は多分滅多にいない。特別なスキル、資格、学歴などを持っていないと喰えなくなるとのプレッシャー下に生きている訳だから。以前は、一時荒れた生活をしようが、そこから抜ければなんとかなったものだが、今はそうはいかないからだ。
ロンドンなど、ひょとすると、目につく労働者は移民しかいない時代に入っているのでは。今迄、暴れていた層は必死に生き抜く算段という可能性が高かろう。
潜在的反抗層は、「耐え難きを耐える」しかないのである。

女性の力が強まり、信仰者(イスラム教徒)も増えたので、社会的に寛容性が増した結果とする見方が当たっているならよいが、鬱積した不満を抱えながらグローバル化の流れに翻弄されているというのが実態ではなかろうか。

(The Economistのコラム)
Oh! You pretty things Today’s young people are held to be alienated, unhappy, violent failures. They are proving anything but Jul 12th 2014
(東洋経済 さとり世代は日本を救うか?)
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