表紙 目次 | 2014.10.22 洞窟壁画に想うスラウェシ島のカルスト地形の洞窟群の壁画表面付着堆積物を年代測定したところ、手形絵の一番古いものは4万年前、バビルサ(鹿的猪)絵は3万5千年前とわかったという。(昔は、洞窟内焚火跡の年代測定であり、絵の年代を示してはいない。この方法だと、絵の作成年代はさらに古い可能性もある。)出典は、Natureだが、BBCやナショグラで取り上げられ、もちろん日本の新聞も報道。 一瞬、島の名前から、ご近所の島で発掘されたヒト類の化石Homo floresiensisと関係するお話かと思ってしまったが、そういうことではないようだ。 スラウェシ(セレベス)島といえば、東南アジア系とオーストロネシア系の動物や文化のぶつかり合いの地であり、アフリカ的でもあるとされる地。この先、東南アジアで同じような古さと認定される壁画が見つかる可能性があるということではないか。 と言うのは、スペイン北部の洞窟壁画も同様な方法で測定されており、そちらもほぼ4万年前だからだ。 そのため、3〜4万年前まで住んでいたHomo neanderthalensisが描いたとの説も生まれた。ロマンを感じさせることもあり、なんとなく受け入れたくなる雰囲気があった。しかし、スラウェシ島でも同じような古さとなると、やはり、6万年前に出アフリカを敢行したHomo sapiensが洞窟壁画を描いたと見るのが自然だろう。 と言うか、出アフリカ以前にそのような文化が形成されていた可能性ありという見方が出てきてもおかしくないのである。 なにせ、衝撃的なのは、絵のモチーフがほとんど同じという点。・・・「手のステンシル」。 「普遍的な行為」として、Homo sapiensの習慣となっていたとの推論が成り立つからだ。 → 【絵を見るための参考サイト】Lean leang洞窟壁画(ステンシル手形) 洞窟壁画の奥深さ by PHILIA-kyoto | 2009-07-01 10:32 小生は「バビルサ(スラウェシ島固有種)」の登場も気になった。欧州と違って、原牛/オーロックスや野馬はいなかったから、単に、バビルサが狩りの対象だったということでしかないが、生活を共にする仲間意識もあったのでは、と考えてしまうから。 時代は極めて新しいが、銅鐸に鹿や猪狩りの絵があるのも、古代から連綿と続いてきた一種の信仰によるのではと考えたりする。日本の場合、去勢したり、品種改良する家畜豚は、大陸から移入したくなかったのは明らかで、それはHomo sapiensの古代精神と違うか。 そんなことをつい考えてしまうのは、現代にまで「手」信仰が残っているから。 そう、仏像の手の形。釈尊の教えは偶像否定であり、その象徴は車や塔。仏像には、別な思想が流入しているのは明らか。 それに、東南アジアの踊りでは、手による表現が重視されており、同根の文化が流れている感じがする。ポリネシアにはその感覚が伝わっているが、大陸だと、せいぜいが手相位で全く異なる信仰と言わざるを得まい。 西洋的見方で踊りを眺めると、どうしても腰の動や、顔の表情に注目することになるが、この地域での表現では、掌こそが表情そのものとなるのではなかろうか。日本の盆踊りも、もともとはそこが肝だったと思うが、今や忘れ去られていそう。 そうそう、邪馬台国も手文化が特徴的な国とされていた。・・・「見大人所敬 但搏手以當脆拝」(魏志倭人伝)言うまでもないが、古層を大事にするから、現在も「二拝二拍手一拝」の風習は全国津々浦々まで広がっている。それは音を出すことに意味があるとされるが、開手の場合もある。 これは、どう考えても、無音で霊を呼ぶ仕草。ヒト、動物、神は同列に並び、共食し、喜びを共にする文化ならではの決まり事。Homo sapiensの古代精神生活に根差しているものだろう。 それを護り続けてきたのが日本文化。おそるべし。 (参照) Cover Story: 熱帯で見つかった氷河期の芸術:インドネシアの洞窟壁画は、更新世後期の世界の両端に具象芸術が存在したことを示しているブックマーク Nature 514, 7521 2014年10月9日 + photo:バビルサ(シカイノシシ)の絵と手形ステンシル Cover photo:ICE AGE ART IN THE TROPICS Nature Volume 514 Number 7521 "Pleistocene cave art from Sulawesi, Indonesia" by M. Aubert, A. Brumm, M. Ramli, T. Sutikna, E. W. Saptomo, B. Hakim, M. J. Morwood, G. D. van den Bergh, L. Kinsley & A. Dosseto; Nature 514, 223-227 (9 October 2014) マロスの古代壁画は世界最古? 2006-3-8 〜 2014-10-16 スラウェシ島-インドネシア-情報マガジン 「最古の洞窟壁画、考古学者に聞く」by Dan Vergano, National Geographic News October 14, 2014 「スペインの洞窟壁画、世界最古か?」by Ker Than for National Geographic News June 15, 2012 文化論の目次へ>>> 表紙へ>>> (C) 2014 RandDManagement.com |