表紙
目次

2015.6.5

神道視点での道教考(八百の神々)

道教も仏教も、とてつもない数の神様や仏様を抱えている。前者は、俗に800神をリストアップしていると言われているし、後者は、曼荼羅で知られる。特に、前者は聖数"8"が使われているということで、八百万柱の神を有するとする神道と似ており、類縁関係があるのではないかと言う人もいる。
そこで、本当に類似と言えるのか、800柱すべてを検討したいところなれど、そこまでの力量はない。しかし、気にはなるので、大雑把に眺めてみることにした。

道教神祇列表@維基を見ると、地位が確定しているらしい神が596柱規定されており、未確定がさらに76柱あるので、都合682柱の神が記載されている。ただ、現代感覚からすれば、天文学的コンセプトを神化しているだけに映るものもあり、宗教経典の体裁を整えるために、思弁的に無理に作った体系と言えなくもない。(数字はあてにならないのでご注意。)
 天仙上位18柱=3x2+4+5+3
 天仙372柱=4+5+6+7+3+3+32+9+4+4+6x2+4+5+4+28+12+36+72+60+9+9+36+10
 地仙189柱=5x5+10x2+9+3+(3+5x4+24+36)+4+5+8+4+4+5+5+9+5
 鬼仙17柱=12+5
 未確定 天仙44柱 地仙32柱

ともあれ、並べてみると、神道との発想の違いがよくわかる。

最高神はトリオという点では、古事記の最初もそんな感じの記述だ。ただ、その後は似ているところがない。
まず、現実的にその意向を体現するのが4神。ここが最高位とされていると見てよいだろう。この辺りの内実は別途検討したい。
驚くのは、最高位の神々の補佐体制。分野別に管理統括する3官僚(天官 地官 水官)が付いているのだ。道教の体系はほとんど官僚機構に近いと言ってよいのでは。統括神が集団合議に従ったり、突如上層の神から指示がでたりと、秩序性に欠ける古事記の神々とはおよそ対極的。神の世界の考え方が全く異なると見てよいだろう。

次に、大きな違いは、道教の神々のほとんどが、であり、それに関係する方位である点。それらの神々が、最高位の神と同じ「天」に所属すると見なされる訳である。高天原は星神だらけというようなもの。古事記など、星の存在そのものに関心が払われていないというのに。
太陽神もこのヒエラルキーに位置付けることができない訳で、文化が全く違うことがよくわかる。

古事記では、「天ッ神」と「国ッ神」が対比的に登場するが、道教の「天」と「地」を対応させようとしても、無理筋のように思える。
「地」には、確かに、山岳、河川、湖があがってはいるものの、地形的な自然をカバーしたいのではなく、地域の象徴をカバーすることと、東西南北中央「五」組の神を設定する2点に注力しているとしか思えない。天変地異や天候に係る自然現象に関する神々の存在感は軽いもので、「天」の星々が様々な現象を分割して担当していることを示すことに注力しているのは間違いなかろう。
そんなことを考えると、鬼界あるいは冥界の存在も特徴的といえる。一般に、道教や神道は現生のご利益志向とされ、死後の安寧への関心は薄いとされる。実際、古事記でも、根の国、黄泉の国、常世の国が登場するが、せいぜいが黄泉の国の統治者とその配下の状況は桃や石でその世界への道を断ち切る話がある位。死の世界については淡々としたもの。
道教の場合、その世界は、冥司や鬼が取り仕切る体系になっている。ここでも官僚的統治が行われているのには驚かされる。ヒトと冥司が死を巡って交渉する体制が整っている訳である。死後、霊は肉体から離れ、はるかに見える島や地元の山に移動して漂うとの思考とはおよそかけ離れたものと言わざるを得まい。

もう1つの大きな特徴は女神が恣意的と思えるほど除外されていること。ヒエラルキーの中に組み込むことができないのである。(西王母や斗姆元君が外れる。)
土着の地母神とか、太陽女神は基本的に組み込まない思想がありそう。宗派的体裁を整える過程でそうなったと考えるのが妥当だと思われる。
そうだとすれば、道教は農耕民的な宗教とは根源的に違う可能性が高かろう。一見、なんでも取り込む融通無碍の土着信仰の寄せ集めと解釈しがちだが、実態はそれから程遠い。大陸の人々の心情は、島嶼における情緒的な信仰とは根本的に違うのかも知れぬ。

---天仙 上位--
 【三清】【三洞教主】【四御】【五方五老】
 【三大帝】上元 中元 下元
【四御】には地母神である后土皇地祇(后土娘娘)が含まれている。
---天仙 ---
 【四極大帝】北極紫微 南極長生 太極天皇 東極青華
 【五斗君】【南斗六君】【北斗七君】
 【三台君】【福禄寿三
 【三十二天帝】【神霄九宸大帝】【四聖真君】
 【四大天君】
 【六丁(陰神玉女)】+【六甲(陰神玉男)】
 【四聖功曹】【五方謁諦】【四靈】
 【二十八宿】【十二宮辰君】
 【三十六天】【七十二地
 【六十甲子神(太君)】
 【九天生神上帝】【九天監生司諸神】
 【九三十六土皇君】
 【天医司諸靈(10)
---地仙---
 【五神】【五方君】【五神】【五方神女
 【五方靈童】田昌 宥亨 周忠 高思 顔章
 【十方无極飛天神王】【十神真君】【火部帝君】
 【九】+【三
 【雷部神】
  雷祖座下侍者 五方雷王 五方雷帝 五雷 五方雷
  雷部二十四位催云助雨護法天君 雷部三十六神将
 【四大天師】張道陵 葛玄 許 薩守堅
 【五岳五帝】東岳泰山 西岳華山 中岳嵩山 南岳衡山 北岳恒山
 【八仙】【四源王】
 【四海龍王】【五帝龍王】【五龍神】
 【九江水帝】浙江 揚子江 松江 呉江 楚江 湘江 剩江 漢江 南江
 【五湖大神】洞庭湖 彭蠡湖 丹陽湖 謝陽湖 太湖
---鬼仙---
 【冥神靈】
  都大帝 閻王 判官 孟婆
  牛頭馬面 K白無常 陰陽司 日夜遊神
  東嶽大帝 城隍爺 賞善司 罰惡司
 【五方鬼帝】

上記ヒエラルキーに位置付かない文昌帝君のような天仙44柱と地仙32柱は記載していない。(当然ながら、女神が多い。)

 文化論の目次へ>>>    表紙へ>>>
(C) 2015 RandDManagement.com