表紙
目次

2015.6.11

神道視点での道教考(女神)

巫女とは神道用語。道教には這種風俗に該当するシャーマニズムは存在していないとするようだ。要するに、その手の信仰は、周辺域の蛮夷族だけで、中華圏では有りえないと見なしたいのだろう。・・・突厥-蒙-満-通古斯薩蛮教、朝鮮巫教、日本神道、西藏教、苗族巫、泰人精靈崇拜といったところ。

それだけが理由ではないが、道教は女神をできる限り排除する方針をとってきた。その辺りを確認しておきたい。

面白いのは、古代王朝(殷と周)の起源神話の核は女神という点。知られていても、それを重視することは無いのである。
 簡狄・・・[殷] 契の母親(聖玄鳥による処女懐妊)
 姜・・・[周] 后稷の母親

ただ、最高神の三清・四御に1柱だけ女神が入ってはいる。産に出す力が期待されるので、地母はあっても、地父は有りえず、当然と思いがちだが、よくよく定義を見ると地母神概念とは違うようである。帝国の宗教としては、それぞれの地域の土着化神の乱立は避けたいから、その統合神という位置付けの神にはしたくなかったのかも知れぬ。
 后土・・・守墳土地神

但し、完全排除の姿勢を見せている訳ではなく、神の序列というか、ヒエラルキーのなかで、付けたし的に存在する神はある
<最高神グループの系譜/夫人>
 太元玉女 or 太元聖母・・・元始天王の妻子
 玉清神母元君
 玄妙玉女 or 无上元君・・・老子李耳の母親
 太真夫人
 紫微夫人
<星神の母親>
 斗姆元君・・・北斗星の母親
 「先天斗姥紫光金尊摩利支天大聖圓明道姥天尊」
<雷公の妻子>
 電母

ヒエラルキー上、居場所を獲得している女神は、后土と斗姆元君だけではなかろうか。

太陽と月の扱いは、もともと、ヒエラルキー上の位置が一般の星に比べて冷淡である。当然ながら、女神も軽視されていそう。
【太陽】
 ・日宮炎光太陽星君
 ・女神@扶桑神樹・・・太陽神母を示唆
 ・金烏 or 三足烏@扶桑神樹
  [仏教(密教)]大日如來
  [バラモン教]スーリヤ(仏教化→日天)
  [神道「古事記」]天照大神女神+天火明命
  [北朝鮮]首領=太陽化身
【月】
 ・太陰星君 or 嫦娥女神
    「月宮黄華素曜元精聖后太陰元君」
 ・月下老人・・・婚姻神
  [仏教]月光菩薩@薬師如来脇侍
  [バラモン教]チャンドラ(仏教化→月天)

---神仙系---
<統率>
 西王母@崑崙山 [東王父は存在感薄し。]
<様々>
 七仙女・・・玉皇大帝と西王母の七人の娘
 素女・・・性愛と養生
 九天玄女・・・戦術と兵法
 瑶姫・・・武術
 百花仙子@蓬莱山
<八洞神仙の女仙>[男,女,老,少,富,貴,貧,賎]x[上,中,下]
  驪山老母、何仙姑、麻姑
 三聖母@西岳華山
 三霄娘娘
<泰山>
 (東岳山泰山天仙玉女)碧霞元君 嫦娥
<水神>
 瀟湘二妃

西王母だけは絶大なる人気を維持しているが、それ以外は特殊なお話で知られるといったところのようだ。女神がこれほどマイナーな宗教もそうそうないのではないかと思うほど。
そもそも、方士や道士が男性だらけであり、女性が関与する場が欠落していたせいもあるか。
---女教師---
 ェ姆・・・晉代の道教人物
【神化先秦方士】老子[道コ天尊 or 太上老君]@「道コ経」,關尹子[文始真人] @「文始真経」,文子[通玄真人] @「通玄真経」,列禦寇[冲虚真人] @「冲虚真経」,莊子[南華真人] @「南華真経」,庚桑楚[洞靈真人]@「洞靈真経」,鬼谷子[玄都仙長]
【祖師的道士】張道陵[正一真人],許遜[旌陽祖師],葛玄[葛仙翁],薩守堅[全陽子],魏伯陽[云牙子],魏華存[紫虚元],三茅真君[茅盈、茅固、茅衷],葛洪[抱朴子],寇謙之,陸修静,郭璞,陶弘景[華陽隠居],王文卿[冲和子],劉海[海蟾子],張伯端[紫陽真人],王重陽[重陽子],丘處机[長春子],張三豐[三豐子]


結局、例外的な女神だけが信仰対象になっていて、それは道教のヒエラルキーとは全く無縁になっている。
---別な神話の取り込み---
 織女 - 牛郎
 百花仙子・・・草木神@「鏡花縁」
---特異的発祥---
 媽祖 or 天后・・・福建発祥海神
 蚕女・・・蜀発祥養蚕神
 無極老母・・・羅教[明代禅宗系新興宗教@江南]天道最高神
 慈航真人@普陀落伽巖・・・観世音菩薩と習合

結局のところ、女性特有の問題に対処する女神と、男神担当にはしたくない分野のみが残ったということのようだ。
---生育[出産・育児・小児病治癒]神---
 註生娘娘@台湾
 金花娘娘@廣東
 臨水夫人・・・福建江流域郷里女性子供守護神
 床母・・・広東南発嬰兒幼兒平安神
---他---
 女魃・・・旱神
 紫姑・・・廁神
 孟婆・・・冥界遺忘管理神

古事記の神々の場合は、男女ペア神が多いし、性別が自明ではない場合もある。女神を軽視する姿勢があるとは思えない。

 文化論の目次へ>>>    表紙へ>>>
(C) 2015 RandDManagement.com