■■■ 健康の考え方 2013.8.10 ■■■

「食の健康話」の反科学性

こんな会話が聞こえてきそう。

 「ネエネエ、あなたサバ缶買った?」
 「スーパーで売り切れだって。」
 「エー、知らないの。」
 「TVで、食べるだけで痩せるって言ってたのヨ。」
[「身体を老けさせない秘密 第4弾 新発見!やせるホルモンで病の元凶【肥満】を解消SP」 朝日放送「たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学」 2013年7月30日]
・・・と言うことで、小生のコメントをつけてみた。
  ・早い話、DHAが含まれているというだけでは。
  ・そんな食材は他にも色々ある。
  ・カロリーを多くとり、消費しないなら、まず太る。
  ・リスクが無い訳ではない。
    -同一魚種の食べ続けによる微量物質の蓄積。
    -塩分摂取量。

似たような会話を創作してみようか。
 「ステーキとホウレンソウは食べた方が良いのヨ。」
 「それだけで認知症リスクが低減するんだもん。」
 「新聞記事に出てたんだから。」
[Daily Mail, August 1 2013]
・・・こちらは専門家のコメントでいこう。
  ・研究対象は料理や食材ではない。
  ・貧血の高齢者は発症可能性が高くなるとの指摘。
  ・当たり前だが、貧血の原因は色々。
  ・貧血対応でリスク低下の証拠無し。
[Anaemia may be linked to increased dementia risk NHS choices August 1 2013]

ついでに、もう一つ。
 「お前、又、朝飯食べてないんだろ。」
 「男は、朝食抜くと心疾患リスクが高くなるんだ。」
 「ニュース位読んどけ。」
[BBC News, July 23 2013]
・・・同様に、専門家にまかせよう。
  ・この研究対象は白人の専門家男性。
  ・この手の手法では、因果関係は証明できない。
  ・健康的ライフスタイルの可能性はある。それだけ。
[Heart disease risk 'higher in men who skip breakfast' NHS choices July 23 2013]

ついでに、「睡眠不足は肥満のもと」というお話も加えようかとも思ったが、止めておこう。
「睡眠不足で太る」脳のメカニズムを解明、米研究 2013年08月07日 07:56 AFP]

英国の大衆紙は、疾病調査結果をみつけだしてきて、いかにも健康維持のコツ伝授といった記事に仕立てるのがお得意と見える。だが、流石英国で、すかさず、それに対抗して識者が「いい加減な理屈で惑わすな」という指摘を繰り広げるのである。
日本にも「NHS choices」が欲しいもの。
まあないものねだりではあるが、他愛も無い面白ジャーナリズムを放置しておくのはいかにも拙い。科学的な話題として取り上げたところで、その手口は反科学というのは始末が悪い。もっとも、それは、今に始まったことではないが。

大企業の加工食品を「悪の根源」として槍玉にあげたがる人は五万といる。胡散臭い話は溢れているが、どうにもならない。なにせ当人は、反科学に染まっているとは思っていないのだから。

こちら、先日、電車で耳にした会話。
「あんたよしなさいよ、あんなパン食べるの。」
「おかしいでしょう、黴も生えてこないんだから。」
「パン屋さんのにしなさい。」
・・・こういう論理を持ち出す人は少なくないが、科学の常識ではこうなる。
  ・日本は、湿度が高く、黴(菌)だらけの国。
  ・巷のパン屋さんは、その環境下。
  ・食品工場では減菌の努力を続けて来た。
  ・黴が生えたら、パン全体は胞子だらけ。
  ・その黴毒リスクの判定は難しい。
黴毒はアフラトキシンのような超危険なものがある位で、大いに注意すべきもの。しかし、日本では、黴を利用した食品がいくらでも存在するから、黴毒のリスク判定は難儀である。とりあえず、食べれぬタイプの黴が生えていそうな食品は捨てるとの原則を貫くのが賢い対処方法と言えそう。つまり、工業製品のパンの場合、期日を越したら即捨てるということ。なにせ、バケットでも、少しでも水分が残っていれば、間違いなく黴が生えてくる。日本はフランスとは環境が違うのである。当然のことだが、街のパン屋さんから購入した製品の場合、工場の製品と同じような期日は期待できない。どのように対処すべきかは自明。

まあ、先ずは反大企業姿勢を見せることが進歩的と勘違いしている人が多いということ。このため、合理的に考えない習慣ができあがっているとも言えよう。
摂取リスク全体を100%として、どう見ても0.1%になりそうもない物質を大騒ぎし、問題かも知れないものについては知らん顔という訳のわからぬ態度が目立つのは、この辺りに原因がありそう。

と言ってもわかり難いから、「素晴らしい玄米食」型思考の問題を示しておこう。あとは、そのアナロジーでお考えいただければ。
小生は、消化の悪さを考えると、健康に一番なとという主張に賛同する気にはなれない。たまに食べるべきもので、精米が気に喰わないのなら、雑穀配合をお勧めしたい。
そんな意見を述べると、驚いたことに、消化が悪いからこそ体に良いと言い返されたりする。繊維分をとりたいなら、胃腸に大きな負担がかからない他のものがいくらでもあろうにと思うが、議論にならないから、ハアそうですかで終わりにするしかない。
とはいえ、玄米を食べることで生まれるプラス面もあろう。だが、常に考えておくべきは、マイナス面。小生は、玄米は要注意食材だと見る。糠からとる米油が酸化し易いことが知られているからだ。脱酸素剤入りで密封状態で保存してないなら、日々油脂酸化物を摂取している可能性もあろう。・・・それで気にならないのかネ。

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