■■■ 健康の考え方 2013.8.19 ■■■

癌対処法の一例

まずおことわりしておくが、小生は、系統だって「癌」を学んだことはない。ただ、膵癌について、日本語の専門書とインターネットの英語の文献をかなり広く目を通したことがある。もちろん、素人の視点で。
もう一つ付け加えると、ある種の脳腫瘍についても同様に調べたことがある。癌とは違うが、対処法の意思決定について、考えさせられる点が多々あった。
尚、両者とも21世紀に入ってからの話。

先ずは、この辺りの話からしておこう。そうでないと、考え方がおわかりにならないだろうから。

膵癌についてだが、極めて発見されにくい癌である。従って、体の具合がよくないので診断した結果発見というのが普通。ところが残念なことに、どのような手を使おうと癌の進行は止まらない。僅かな例外はあるものの。それに該当するかは調べればわかる。
にもかかわらず、日本では手術が結構行われていた。今はどうだか知らぬが。
手術は予後が悪くなる可能性があるのだから、摘出手術はすべきでないと考えるのが常識と思ったら、そうではないのだ。しかも、抗癌剤投与も行われていたのである。合理的な判断とは思えない医療なので驚いたが、日本なら、さもありなんという気になった。

たいていの患者は、「望みなし」ということで放置されるのを一番嫌うからだ。効いたとの例が一つでもあると聞けば、挑戦して見たいと考える人がいてもおかしくない。そして、医療産業とは、医療行為の提供が業務なのだから、患者がそうした態度を示せば、これに応えることになろう。

こうした論理、わからぬでもない。血液の癌たる急性リンバ性白血病や、小児癌では、薬剤治療で治癒することが知られているからだ。癌として、すべてを括ってしまえば、癌細胞を叩けば、上手くいく可能性はゼロではなかろうということになる。そして、成功確率は低くても「挑戦」してみたいとなるのでは。

さて、もう一つの腫瘍の話をしておこう。
脳腫瘍は癌ではないが、危険な疾病である。腫瘍が大きくなると、脳を圧迫し始めるので、人間らしい生活ができなくなる可能性が高いからだ。しかし、場所が場所だけに、薬剤での対処はできかねる。従って、手術による切除か、放射線照射による細胞死を狙うことになる。もちろん、放置という手もないでもない。進展速度が遅ければ、生きている間、重篤な問題を引きおこさずに済むかも知れないからだ。従って、予測余命期間と体力を勘案すると、経過観察で結構という患者もでてくる。しかし、若い方だと、遠からず切除が必要となるだろうから、腫瘍が小さいうちの対処の方が負担が少ないので良かろうと考えるのが普通。しかし、そう簡単に意思決定できるものでもない。脳内だから、切除とは、脳にかなり大きなダメージを与えることになるから、その結果、何がもたらされるかは定かではないからだ。実際、手術後に重篤な問題が少なからず発生しており、かなりのリスクがあるのは間違いないところ。
・・・まあ、この辺りまでなら、常識的な話に聞こえるだろう。

しかし、よくよく調べてみると、放置したままでも腫瘍が縮退する人が結構いることがわかる。信頼できる統計数字がある訳もないが、1割ほどではないかという感じ。その一方で、急に成長してしまい緊急手術が行われた例もあるのだ。バラつきは小さなものではないということ。おそらく現場の医師の見方もバラついており、経験則は余り参考になりそうもないことがわかる。
この状態で、患者は決断を迫られる訳だ。

癌にしても、同じようなものでは。
と言うことで、これだけの知識で、癌の場合、どう対処すべきか考えてみよう。

先ず、押さえておくべきは、「癌」は様々な部位にできるし、進展状況も様々であり、一様ではない点。特定の遺伝子異常で発生する癌の存在は知られているが、それは全体のほんの一部でしかない。つまり、バラバラ。
全く違うものを、一緒にして、大雑把に眺めて作られた治療指針が機能する可能性は低いと考えるのが自然である。
しかし、分類ができている訳ではない。なにせ、「癌」と「癌モドキ」の2種類があるとの、概念なき解説が通用する世界なのだから。(要するに科学ではないということ。)
従って、どのような状況の癌なのかは、自分で評価するしか手はない。その上で、それに合うような対処策を選ぶことになる。

この場合、極端な例を考え、それにどう対応すべきか決めると、意思決定し易くなるのではなかろうか。
例えば、こうなる。・・・

○進行性癌の疑い濃厚と判断した場合:
余計な手立てをしない。もちろん、理屈では、抗癌剤の微細コントロール投与を選ぶ道もよさげに映るかも。しかし、その効果を期待するなら、専属に近い形で専門医につきそってもらうか、自ら投与量を判断できる自信が必要だろう。漫然とした薬剤投与では逆効果の可能性が高かろう。基礎体力増強を図りながら、免疫能力向上に寄与しそうな生活スタイルの採用が最善では。

○非進行性の小さな癌の場合:
これが良性腫瘍だったとしても、除去手術を決行するような部位なら、手術による除去がベストだろう。手術による機械的刺激で進行性癌を生み出す証拠があるとは言い難いし、患部切除で細胞がばら撒かれたところで、体内の奥に入る可能性は限定的だろうから。体力を落としかねないないと感じるなら、薬剤は使わないのが無難である。癌細胞の方が活発に増殖しかねないから。

あとは、両者の中庸ということになる。要は。自分が持っている治癒力のレベルを考慮しないで、無理な癌細胞叩きには挑戦しないというだけのこと。
以下の論文を、そんな感覚で眺めると、納得感が得られるかも。
臨床判断も、ようやくここまで来たのである。
Overdiagnosis and Overtreatment in Cancer: An Opportunity for Improvement by Laura J. Esserman, etc. The Journal of the American Medical Association July 29, 2013 [FREE]

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