■■■ 健康の考え方 2013.12.4 ■■■

癌治療の方向性について

癌が遺伝子変異で生じるというのは常識とされている。
そうなると、その変異に関係する作用機序に影響を及ぼす方法を考えれば、癌を叩くとか、成長を抑えることができるのではないかと考えるのは自然なこと。
まあ、一般的な薬剤開発方針である。

どうも、その考え方は、こと癌に関しては余り役に立たないことがわかってきた模様。
素人の感覚からして、そのうち、そんな結果が出始めるのではないかという気がしていた。

抗癌剤と称するとハイテクな感じを受けるが、その原理はえらくプリミティブなものに映るからだ。
「画期的」なほど良く効くのは、血液癌用抗癌剤。この作用仮説など典型と言えよう。要するに、細胞を殺す「毒」を血液に注入するだけ。当然ながら、まともな細胞も死ぬが、壊死確率が癌細胞の方が少し高いというだけのこと。患者の容態を見ながら、上手にコントロールすれば、正常細胞生成能力が温存されている限り、癌は徐々に退治されていくことになる。自己免疫能力で生まれる癌細胞に対処できる状況になれば全快。

今のところ、効果が顕著な治療とは、この手の発想のもの。放射線照射にしても、できる限り癌細胞だけ殺すだけのこと。

根本的なものの見方を変えて、研究を進めないと拙いということではなかろうか。

癌に関して、確実に言えることとは、遺伝子変異はなんらかの刺激で発生するということ位。そして、長期間の炎症や、強烈な異物の存在が癌を生むことが知られいる訳だが、そのプロセスが判明している訳ではない。現段階の科学のレベルはこの程度と見てよいのでは。
こうして発生してしまった、勝手に自己増殖する腫瘍を癌と呼ぶことになっているが、刺激は千差万別だから、「癌」と呼ぶが、同じ変異が生じているとは限るまい。遺伝子変異のパターンはとてつもない数の可能性があると見る方が自然ではないのか。普通は、そんな異端細胞は免疫機能で消されるのだが、それが上手く働かないから癌になる訳だろう。
従って、そんな癌の、たった一つの遺伝子変異に注目したところで、それ以外の変異が色々と存在しているのなら、すべてを調べるのはえらい労力である。しかも、癌とはその変異の総体として生まれているとしたら、いくら調べても本質はつかみようがないかも。
五万とある癌のパターンのうちの一つを見ているだけということになりかねないからだ。

他に研究する方法が思いつかないからといって、いつまでも同じやり方を続けているのは如何なものか。

癌を壊死させる生体内微量物質が効かないことがわかったのは1980年代のことである。・・・その瞬間、癌とは単一のものではなさそうと感じるのが普通ではなかろうか。そうなれば、最初に手をつけるべきは研究戦略だと思うのだが。

まあ、そういうこともあって、免疫療法に期待が集まった訳だが、いかんせん、癌細胞の数が大きいから、期待するような効果は得られない。癌細胞を毒で減らせば、免疫作用に関係する細胞の活動も低調になってしまうから、なんとも難しい訳である。

要するに、単純明快な解答を求めるやり方は上手くいっていないということ。これを続けていても、徒労に終わりかねないのではと危惧の念を抱かざるを得ない。

素人からすれば、ハダカデバネズミ研究に一番興味が湧いてくる。これは、癌細胞と正常細胞の境に注目したもので、発想が全く違うからである。

(Source: 癌研究の話)
Personalized cancer treatments suffer setback─Analysis suggests studies give conflicting answers about whether cancers respond to targeted drugs. by Erika Check Hayden 27 November 2013 Nature NEWS
(Source: ハダカデバネズミの話)
Simple molecule prevents mole rats from getting cancer Sugar matrix surrounding cells traps would-be tumours in long-lived mammal. by Ewen Callaway 19 June 2013 Nature
Naked mole-rat gives cancer clues By Helen Briggs BBC News 19 June 2013 Last updated at 17:01 GMT Catania Lab.


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