■■■ 健康の考え方 2014.1.23 ■■■

良き睡眠について

睡眠研究の成果のニュースが目にとまった。
脳味噌を刺激するようなタイトルだったので、無視できなかったのである。
読んでみれば、この領域では有名な研究者によるもの。常識的な線で、日本人の睡眠の問題点を指摘されてきた方であり、奇をてらった研究話ではなかった。

まあ、誰が聞いても正論と思えることを指摘しているに過ぎない。
もともと、この方は、社会生活を営むために、人々は自ら生活習慣を変えており、それがもたらす副作用こそが睡眠問題の本質との見解である。ソリャそうだとなるが、対応はそう簡単ではない。

さて、そのタイトルだが、「深い睡眠」は体に良いとは言えないというもの。
ココだけ聞かされれば、小生もそうだが、驚く人は多かろう。それじゃ、浅い睡眠の方が体に良いのかネと、どうしても短絡的な反応をしてしまうからだ。
冷静に考えれば、この研究結果は実は常識の範疇内。そう感じないのは、いかに自分が非常識な発想で睡眠を眺めているかを物語っているに過ぎない。

こんなことを書いても、わかりにくくなるだけか。

例えば、睡眠薬服用が必ずしも「眠れた感」を与えるとは限らないのは知られた話。"頭で"、眠らないと体に悪かろうと考えるから、薬に頼ることになる。
眠りの満足感は、"思い込み"のドグマ的「理屈」で対応しても、生まれようがなく、実感とは合わない例など五万とあろう。
このアナロジーで考えれば、「深い睡眠」が満足感に繋がるかは、なんとも言えないのは自明。そもそも、深い眠りという行為が疲労感を取り除くものなのかも、なんとも言い難いのが実情だろう。短時間の軽い睡眠で体の復活感を味わうことが多いのもわかっているのだし。逆に、その程度の睡眠がかえって疲労感を呼ぶこともある。

当たり前だと思うが、「快眠感」を与える、「良い睡眠」条件の個人差は極めて大きい。
従って、自分の体から「聞く」力がなければ、なにがベストかさっぱりわからぬというのが現実だろう。まあ、睡眠不足を続ければ、体が持たなくなる訳で、その能力がゼロではなかろうが。せいぜいのところ、寝過ぎると気分悪しの実感が生まれる程度では。

この認識が出発点だろう。
自分で判断できない状態では、健康に寄与するような睡眠がとれているとは思えないからだ。
「悪い睡眠」あるいは「良い睡眠」がどんなものか、自分で決めるしかない訳で、それができないなら、結構、深刻な健康問題を抱えていると考えるべきかも。

そもそも、一時的な断眠や仮眠、さらには過眠や惰眠が、不快感を呼ぶことを知っているのだから、自分の最良パターン位は確認しておく必要があろう。
それを怠ると、そのうち鈍感になって、悪い睡眠パターンの生活に陥っても、ほとんど気にならなくなる。
おそらく、対応力なない人だけが耐え難くなり、医師に相談に行くことになるのだろう。

要するに、睡眠を犠牲にしても、社会に合わせた生活をしたいので、睡眠の検討はいい加減になっているというだけのこと。しかし、それは、生活の愉しみ追求とか、人生の意義を考えての結果とは限らない。ここが重要な点だと思う。
今の生活は"本当は"嫌いだが、致し方無しなので我慢しているとか、さらには耐え難いので睡眠に逃げ込んで心の平静を保っている可能性もある。これが健康に良い訳がなかろう。

この研究者の方の姿勢が素晴らしいと感じるのは、こうした問題の捉え方。・・・「良い睡眠」を取り戻す方法が全くわかっていない現実を直視しているのだ。

従って、結論は当たり前ものになる。
 100点満点の眠り方などありません。
 睡眠科学に基づいた正しい知識をもとに
 “自分なりの改善法”を見つけてください。
 それが唯一の正解です。


(ナショナル ジオグラフィックの記事)
「深い睡眠」が「よい睡眠」とは限らなかった――睡眠の正しい改善法とは 20140121
【研究室】研究室に行ってみた。国立精神・神経医療研究センター 睡眠学 三島和夫 (第1回 眠らなくなった日本人 2012年12月3日 〜12回 寝過ぎもダメ!なこれだけの理由 2013年3月18日)
(医学書院 週刊医学界新聞 第3043号 2013年9月16日)
【interview】 “治療の終結”を見据えた処方を 「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」がめざすもの 三島 和夫氏(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部部長)に聞く


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