■■■ 健康の考え方 2014.2.20 ■■■


禁煙ができぬ理由とは

「禁煙に成功した人は、不安やストレスを感じている人が抗うつ剤を服用したのと同じぐらい、精神的な安定を感じることができる」との論文が発表されたとのこと。

小生は、この手の理屈は大嫌いである。
「タバコ依存から逃れヨ」という指摘は真っ当だと思うが、その理由を補強するために、この手を使うのは止めて欲しいもの。目が曇るだけだと思うから。

何故なら、「たばこでリラックスできる"気がする"」のは事実と見ているから。もちろん、全員に当てはまる訳ではないが。

当たり前だが、喫煙で、実際にリラックスできる筈がない。ミソは、あくまでも、"そんな気になる"点。
的確な比喩ではないが、伝統的大衆薬にも似たところがある。作用機作上は効能があるという理屈が見つからないが、服用すると、効く気がするのである。それはそれで大きなメリットと言えよう。
要するに、ヒトは、体への薬物刺激を、都合よく解釈してしまうことがあるということ。但し、その解釈は個々人の体質というか、感受性で相当に違う筈。

つまり、禁煙できない人とは、意志が弱いとか、事実を知らないとかいった問題のせいではなく、体質のせいが大きいと見ている訳。

「たばこでリラックスできる」というのも、体質的なものがあるのではなかろうか。
作用機作から考えれば、リラックスする筈はない。しかし、そんな体質の人もいるということ。
と言うか、そういう体質になってしまう場合も少なくないと言うに過ぎない。ニコチン依存症とはそういうこと。
ニコチンが欠乏すれば当然ながら精神的に落ち着きを失う。そんな方々に、禁煙すれば、精神的な安定を感じることができるというのが事実と語ったところでなんの意味もなかろう。

逆に言えば、禁煙者は精神的に安定しているとの指摘は当たり前の話とも言える。・・・精神的安定を図れる人だからこそ、禁煙ができたのである。

換言すれば、日々、不安感に満ちている人や、精神的余裕に乏しい生活をしている人は、タバコに跳び付く可能性はとてつもなく高いということ。

従って、大元が改善されない限り、禁煙は難しかろう。
そんなことなど、一寸考えれば、すぐにわかること。・・・少なくとも喫煙時間だけは、ストレスに晒されている現実からしばし離れることができるからだ。それを「リラックス」時間と見なすのは自然な流れ。

低所得者や人口稠密地域の喫煙率が高いのは、このせいでもあろう。教育の問題はマイナーではないか。
高等教育を受けた裕福な人々であっても、ストレスに晒されている層は喫煙かドラッグに嵌る例が極めて多いことはよく知られている。タバコの悪影響を知らない人達ではないのだ。

従って、日本で喫煙率を下げるのは、かなりの難題と見る。
ストレス発散の場が、飲み屋と喫煙空間なのは明らかだからだ。

(記事)
禁煙は抗うつ剤より精神の安定に効果的 2014年02月17日 15:58 発信地:パリ/フランス AFP
(論文・・・小生は未読)
Change in mental health after smoking cessation: systematic review and meta-analysisBMJ 2014; 348 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.g1151 (Published 13 February 2014) Cite this as: BMJ 2014;348:g1151

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