表紙 目次 | ■■■ 健康の考え方 2014.2.25 ■■■ ダイオウグソクムシ君の遺訓 鳥羽水族館が6年以上飼育していたダイオウグソクムシ君死去とのニュースが大々的に取り上げられた。 言うまでもなく、そのとてつもない絶食記録に驚嘆していた訳だが、その事態を深刻に悩んでいるキーパーさんへの声援も送りたしといったところ。話題をさらっていた生物である。 皆、気になっていた訳だが、残念なこと。 生存日数:6年158日(2350日) 絶食日数:5年 43日 (1869日) 当然ながら、追悼の言葉が溢れかえった訳である。 その解剖所見が報告されたので、感じたことを2点ほど。 なんといっても驚いたのは体重変化。外殻変化があるとは思えないが、肉質量が減少していないのである。 入館してから鯵を猛然と食べたことがあって肥満気味だったにせよ、水中の見えない餌から栄養分を摂取していたのは間違いなさそう。 入館時:体長29cm 体重1040g(2007年9月 9日) 死亡時:体長29cm 体重1060g(2014年2月14日) なにせ、"胃を含めた消化管全体に炎症、変色部位は認められず、これまで解剖したどの個体よりも状態が良い"のだ。その上、"軟組織の削痩(痩せ)"も無いという。 見かけ絶食というだけのことで、飢餓状態からは程遠かったことになる。 その点では、大方の予想通りと言ってよいだろう。もしもそうでないとすれば奇跡としか言いようがないからだ。 当然ながら、プロはすぐに胃の中の液体を検査する。なんと、そこにいたのは酵母様真菌。 なるほど、酵母が餌を与えていたのか。 コレ、重要な示唆を与える結果とはいえまいか。 ヒトも含めて、動物の食餌の第一義的目的は、消化器官に棲みついている菌類への栄養補給。その菌が活発に活動した結果、そ代謝物が動物の栄養として腸から吸収されることになる。・・・この当たり前のことが無視されすぎており、そこを突いた、貴重な事実と見てよかろう。 従って、健康を維持するためには、どんな菌叢がよいのか、その状態を保つには度の様な餌と何時とれ位与えればよいのかを知る必要がある。しかし、わかっているのはほんの一部だけ。 この解明にもっと注力すべきではないかと思うのだが。ただ、Probioticsという用語も定着しており、次第にわかってはいくだろうが。 さて、これを踏まえて、もう一つは、どうして絶食したかという方を考えてみたい。 こちらは、推定でしかないが、ダンゴムシが絶食好みということは考えにくい。又、消化器内の酵母が海水中の栄養分を取り込む働きをしていたため、カロリー不足がなかったとしても、食餌を止める理由はなかろう。冬眠的な行為で発生した訳ではないからだ。 と言うことは、これは明らかに拒食症である。ヒトで言えば、静脈注射による栄養補給しか手がない重症患者と見なせよう。そうそう、罹患するのは、ヒトだけではないのである。 それを間違うのは、ヒトは、精神的なダメージで発症するが、一般動物はそんなストレスなどなかろうと勝手に思い込んでいるから。これは、おそらく、高度に進化した脳の働きではなく、動物の先祖が保持していた機能が維持されていることによるもの。 と言っても、傍から見れば、ダンゴムシ君がとてつもないストレスに晒されていたと見る人はいまい。自然の棲み処と、人目に晒される水族館の違いは大きいとはいえ、大切にされていたのだから。しかも、一時は与えられた餌も食べていたのだ。 ここが肝である。重要な因子は、多分、生活のリズム感。照明の具合が、ダンゴムシの拒食行動の引き金になってしまったと考えると説明がつくのでは。 ヒトだって、リズムが狂うと、食欲を失ったり、逆に過食するもの。動物とはそういう仕組みを供えているのだ。 ダンゴムシ君の入館したては、おそらく、自棄の大食い。それが突然、逆スイッチに切り替わったのだろう。 こうなったら、いくら餌を工夫しても駄目。 この手の問題はヒトでも同じこと。いくら美味しい料理を出したところで、すぐに吐き出してしまったりするからだ。重篤になると、極めて恐ろしい病気なのである。確か、拒食症の死亡率は高かった筈である。 ヒトへのインプリケーションとしては、不規則な生活は、不健康の源ということになってしまう。これでは、当たり前の話で終わってしまうが、リズム感の維持を軽視しすぎてはイカンという警告となればよいのだが。 そもそも、ヒトの場合、時計機能は、頭蓋骨内にもぐりこんでしまった原始の感覚器官が司っていると言われており、そこは明るさに反応するとされる。 従って、そこへの刺激が居心地悪きものにならぬよう、十分な配慮が必要ということ。 おそらく、過食や拒食は、その反応の一端でしかなく、健康に大きな影響を与えること必定。 ダイオウグソクムシ君から教わること多し。 まさに遺訓。 健康の考え方−INDEX >>> HOME>>> (C) 2014 RandDManagement.com |