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■■■ 健康の考え方 2014.11.1 ■■■


単純ヘルペス罹病の意味

少々長いが、単純なヘルペスウイルスの1型について、前段的お話をしておこう。

このウイルス、多くの人が保有していると推定されている。しかし、推定保有率はなんとも言い難し。
キスだけでも伝染する可能性が高そうで、母集団設定でいかようにも変わりそうだし。そもそも、ウイルス不活状況で診断できるのかという疑問もあるし。
1型とされているのは、2型を性器発症型として区別するためらしいが、素人からみれば感染部位が違うだけという印象しかない。

まあ、世間一般の人々には、あまり関心を持たれない類のウイルスだと思われる。
せいぜいが、口の周囲に極く小さな発疹ができる程度という印象なのでは。
それこそ一大事という職業の方もおられるから一概には言えないとはいえ。

だからといって、軽視してかまわない疾病という訳ではない。神経系に関与するウイルスらしく、痛みが発生することがあるからだ。患部が拡大一途だったりすると、耐え難い状況になったりする。それん、滅多に入り込まない部位に、入り込んだりすれば、重篤な症状を呈することになるのは間違いなかろう。

もちろん、治療方法は確立しており、抗ウイルス剤の塗り薬や飲み薬で、たちどころというまではいかないが、ほとんどの場合は症状が消え失せる。
この書き方でおわかりのように、体内に入ったウイルスが消滅している訳ではないから、再発することが多い。

ここが重要なところ。

潜伏中のヘルプスウイルスは、おそらく免疫機能によって抑え込まれている。
老化によって、免疫機能が低下すると考えるのは自然なこと。さすれば、このウイルスがどれだけ再活性化されているかを見れば機能の状況もわかろうというもの。

先日発表された研究成果によれば、このウイルスの再活性化度とアルツハイマー発症リスクに相関が認められるとのこと。約3,000人の10年以上の経過から。
この手のお話にとびつくメディアが少なくないが、思ったよりは少なかった。

このウイルスは神経に入り込むからアルツハイマー発症の引き金になるのかもという見方も成り立たない訳ではないが、発症過程の論理が無い以上、そういうことではないと思うが。

この手の罹病率検討は、対象としている母集団を吟味している訳でもないから、今迄どうしてそんなことにも気付かなかったのかという点にこそ注目すべきだろう。
この手のヘルペスは100年程度の歴史があるから、いくらでも民間伝承がありそうなものだし。

疫学的な調査というか、所謂、コーホート系のリポートはピンキリである。国家が国策として後押ししている場合もあり、ナンダカネというテーマや、統計的な検討に値するようなデータ数が揃っていない状態のものも多い。
そのような商売も成り立つ時代ということだろう。

従って、サイエンスという観点では読むに堪えない記事も少なくない。しかし、落語よりは時代性があって面白く仕上がっているから、娯楽としてはよい出来栄え。

(news)
"Cold sore virus linked with Alzheimer's disease" By/ Agata Blaszczak-Boxe/CBS News/October 23, 2014, 6:00 AM
"Cold sores may DOUBLE the risk of developing Alzheimer's disease" By Madlen Davies for MailOnline 16:52 GMT, 21 October 2014 DailyMail
(source)
"Cold sore virus increases the risk of dementia" Press Release from Umeå Univ. [2014-10-13]

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