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「我的漢語」
2014年5月3日

黴臭き漢詩を読む

東洋文庫に「中華飲酒詩選」という本がある。再販の序によると、愛飲家の支持で重版デキとのこと。しかし、「先生の著書は古臭くて黴が生えているので、今の若い人には向かない」と言われたそうだ。本の購入者は40歳以上とか。・・・コレ、1964年のこと。お亡くなりになった直前。
今は、2014年。と言うことは、読者はすべて鬼籍。そんな本がはたして売れているのだろうか。

うーむ。
それなら、酒の漢詩の手習いでもしてみるか。

ただ、安直に、この本から気に入ったもののピックアップという訳にもいくまい。
流石、唐の文人達というものもあり、残念なところだが。それに、読むと、「酒をのむには李白の詩にかぎる」という著者の感覚もなんとなくわかる気もしてくるので、そこいらを取り上げたくもなる。なにせ、「李白一斗詩百篇」なのだから。
「月下獨酌」をこよなく愛してらしたのではないかと拝察しているのだが、どんなものだろうか。

まあ、「獨酌」でマイナー扱いの漢詩を拾って観賞してみるかといったところ。素養を欠くので、手習いにもならないかも知れぬが。

と言うことで、色々と眺めてみると「獨酌謡」がなかなか面白いことに気づいた。
どうも、南朝の陳の皇帝か皇后が矢鱈にこの手の詩を好んだようである。政治に全く興味を持たず、日々酒宴の御仁だったということか。
民はたまらぬナ。しかし、戦乱よりは大いにましである。
多分、大宴会だったろうから、獨酌の詩ではあるが、言葉の綾と見た方がよいかも。

  沈炯 (502-560)
獨酌謡,獨酌獨長謡。
智者不我顧,愚夫余未要。
不愚復不智,誰当余見招。
所以成獨酌,一酌傾一瓢。
生涯本漫漫,神理暫超超。
再酌矜許、史,三酌傲松、喬。
許と史は貴種、松と喬は仙人。
頻煩四五酌,不覚凌丹霄。
倏爾厭五鼎,俄然賤九韶。
五鼎は食、九韶は楽を指す。
彭、殤无葬,夷、跖可同朝。
龍蠖非不屈,鵬鶉但逍遥。
寄語号呶侶,无乃太塵囂。

  偶效之作 (上記より前のことだろう。)
獨酌謡,獨酌且獨謡。
一酌 豈陶暑,
二酌 断風
三酌 意不暢,
四酌 情无聊,
五酌 盂易覆,
六酌 歓欲調,
七酌 累心去,
八酌 高志超,
九酌 忘物我,
十酌 忽凌霄。
凌霄異羽翼,任致得飘飘
寧学世人醉,揚波去我遥。
爾非浮丘伯,安見王子喬。
 浮丘伯と王子喬は仙人。

獨酌謡,獨酌起中宵。
中宵照春月,初花発春朝。
春花春月正徘徊,一樽一弦当夜開。
聊奏孫登曲,仍斟畢卓杯。
羅綺徒紛乱,金翠転遲回。
中心本如水,凝志更同灰。
逍遥自可楽,世語世情哉。

獨酌謡,獨酌酒難消。
獨酌三両碗,弄曲両三調。
調弦忽未畢,忽値出房朝。
更似游春苑,還如逢麗[言焦]。
衣香逐嬌去,眼語送杯嬌。
余樽尽復益,自得是逍遥。

獨酌謡,獨酌一樽酒。
樽酒傾未酌,明月正当(窓)。
是(窓)非圜甕,吾楽非撃缶。
自任物外歓,更斉椿菌久。
卷舒乃一卷,忘情且十斗。
寧復語綺羅,因情即山薮。


思い直して、掲載されていても、・・・。

  「獨酌」 王績 (585-644)
在生知幾日,無状逐空名。
不如多醸酒,時向竹林傾。

確かに、若者には向くまい。

(本) 青木正児「中華飲酒詩選」東洋文庫/平凡社 2008
(ご注意:漢詩はママ引用ではありません。)
(掲載サイト)
http://www.chinapoesy.com/YueFue817bfac-a645-445e-8b99-10358991ff21.html
http://www.chinapoesy.com/YueFub1e9eee1-4465-43e9-a545-6767813e2d6a.html


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