表紙 目次 | 「我的漢語」 2015年10月30日 時雨の候の漢字拝見「霎時施 こさめときどきふる」の候である。立秋-処暑-白露-秋分-寒露-霜降[霜始降-霎時施-楓蔦黄]-立冬 実に難しい漢字であるだけでなく、これを秋雨の範疇としてよいのかもよくわからない。 漢字としては「霖」の方が秋らしいようにも思えるからだ。と言っても、その文字を使った詩を知っているので、そのイメージが強いということではない。単に「雨+林」であり、「雨+妾」よりは秋にふさわしい感じがするだけのこと。淋しげな文字に映るに過ぎぬが。 雨[あめ] 霎[こさめ] 𩂴・・・霧雨? 霂・・・小糠雨? 霖[ながあめ] 霪・・・だらだら続く雨? 「?」がついているからおわかりだと思うが、辞書を確認したのではなく、小生の感覚で勝手に解釈しただけなので、そのおつもりで。 逆に、霎とは本当に小雨なのかという疑問もある。夕立と言えばまずは土砂降りだが、そんな詩に起用される文字だからだ。まさか、霎々となると小雨の2倍になる訳でもなかろうし。 「夏夜」 韓偓[844-923] 猛風飄電K雲生、霎霎高林簇雨声。 夜久雨休風又定、断雲流月却斜明。 これはどうみても大暑の大雨の部類。 立夏-小満-芒種-夏至-小暑-大暑[・-・-大雨時行]-立秋 もっとも、雨足が強い場合には別な文字があてられるのだろうが。 雱/霶・・・激しい雨? 雴・・・豪雨? 霅・・・ゴウゴウと音がする降雨? 靋・・・地表に水が溢れ出すような大降雨? ただ、季節的には雨は春だ。雪解け水と、モンスーンが太平洋から運ぶ膨大な水蒸気が引き起こす降雨。 立春-雨水-啓蟄-春分-清明-穀雨-立夏 といっても、"秋"時雨がある。この季節の代表的天候表現だ。常識的には旧歴10月に降る霧雨を指す。これこそが、「霎時施」だろう。 十月廿二日於左大辨紀飯麻呂朝臣家宴歌 十月 時雨の常か 我が背子が 宿の黄葉 散りぬべく見ゆ [大伴家持 万葉集十九#4259] もっとも、季語ではご存知のように晩秋ではなく、初冬とされている。 そういえば、雨の一歩手前のような気もする霧だが、立秋に入ると「蒙霧升降」となる。しかし、春だと「霞始靆」。寒気と共に降りてくるのと、地表が温まって上昇の違いか。どちらでもないと靄と見なすのだろうか。 霧[きり] 雺・・・深い霧?(モヤと読む人も) 雾・・・薄い霧? 靄[もや] 雲[くも] 霞[かすみ] 水の粒の用語は別な発想から来ている感じもするが、よくわからん。 雰・・・細かな水滴? 露[つゆ] 雫[しずく] 霤/𩅸・・・雨垂れ? 零・・・水滴がこぼれ落ちるような降雨? そうそう、雨があがっても、雨偏を用いた漢字表現を続けるのが礼儀かも。 霁・・・雨がやんだ後の晴天? 霃・・・まだ雨雲に覆われている状態? 霓・・・虹が出たゾ? 漢字なら、イメージが湧くから、なんとなく意味がわかるような気がしていたが、現実には結構難しいことがよくわかる。しかし、想像することが楽しい人種の場合、かなりの頭の体操にはなる。ただ、それが気晴らしになる人以外は止めた方がよいかも。 (C) 2015 RandDManagement.com |