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「我的漢語」
2015年11月26日

漢詩読解力レベルの検討

漢詩をママで眺めるのと、レ点附き漢文もしくは「書き下し文」を読むのは、全く異なる観賞行為だと思う。
前者は、さらに【1】漢字の意味を追うだけと、【2】頭の中で中国語での発声をするタイプに2分される。
後者は、【3】独自の翻訳文学。一般に、漢詩観賞は【3】を指す。

だが、漢詩の韻を楽しむなら【2】でしか味わえないだろう。いくら頭の中で、韻の文字に印しをつけたところで、たいした意味はなかろう。しかし、中国語の素養なき身には、この手の観賞はハードルが高すぎよう。【1】か【3】のどちらかを選ぶことになる。

【3】の場合、あくまでも翻訳でるから、様々な作品が生まれる。ただ、有名なものについては、すでに定番化しているのでバーションは限られているが、それ以外は結構多種多様の可能性があろう。しっくりこない訳に出会ったり、これは素敵とぬ馴らされるような名文を知ったりすることになる。
ただ、問題はこうした翻訳モノには著作権が生じてしまうので、おいそれとネットで読めない点。と言って書籍だと、一冊に掲載される詩の数はたいしたものではない。しかも、他の本と重複しているものが多く、購入する側にとっては面白いものではない。

従って、素人としては、やはり【1】しかない。
有り難いことに、ネット上にほとんどの漢文が出揃っている。お蔭で、気軽に接することができる。漢字のフォント上の問題はあるが、マ、そのうち簡単に変換できるようになるだろう。
ただ、問題は、注釈無しでどれだけ生の漢文を理解可能かである。現時点では、文字吹き出し辞書ではどうにもならないのは明らかだからだ。と言っても、部分的に語彙を検索するだけなら、多少の手間で済む。
そこで、どの程度読めるのか、試してみることにした。-----

結果を下記に示したが、どんなものか。はてさて、60点いくだろうか、と考えるのは素養を欠く輩の思い上がり。見た瞬間落第点なのは間違いなかろう。
しかし、注釈本を図書館から借りて検討するつもりは更々ないので、どの程度か自己評価のしようがない。
だが、間違いが沢山あったところで、全体の意味がわかれば、どうということ無しと勝手に考えている。これこそがこの手の観賞を楽しむための鉄則と言えよう。

   「七月」  詩經 國風 ・・・周の発祥の地[陜西省南部]

 七月流火,九月授衣。
   ・・・七月火の星流れ,九月衣授く.
 一之日發,二之日栗烈。
   ・・・一月刺すような風が発ち,二月烈寒。
 無衣無褐,何以卒
   ・・・衣も褐も無くて,何の歳越し?.
 三之日于耜,四之日舉趾。
   ・・・三月鋤に向かい,四月趾型用具を挙げる.
 同我婦子,彼南畝。
   ・・・我が妻子と同じように,彼の南の畝場にも食を運ぶ.
 田o至喜。
   ・・・田圃の神至りて喜ぶ.

 七月流火,九月授衣。
   ・・・七月火の星流れ,九月衣授く.
 春日載陽,有鳴倉庚。
   ・・・春日初めて暖か,鶯の鳴声あり.
 女執懿筐,遵彼微行,爰求柔桑。
   ・・・女麗しき籠を執り,彼の細い道に沿って行き,桑の柔葉を求める。
 春日遲遲。采祁祁。
   ・・・春日遅々として.蓬採り"祁祁"たり.
 女心傷悲,殆及公子同歸。
   ・・・女心傷悲にして,願わくば公子と同時に帰らん.

 七月流火,八月葦。
   ・・・七月火の星流れ,八月葦を刈る.
 蠶月條桑,取彼斧
   ・・・蚕月は桑の小枝の季,彼の方形斧を取る.
 以伐遠揚,猗彼女桑。
   ・・・以て遠くにとんでいる枝を伐採.ア〜、彼の女桑なり.
 七月鳴鵙,八月載績,載玄載黄。
   ・・・七月鵙が鳴き,八月忽ちにして紡績仕事,さらに黒色や黄色に.
 我朱孔陽,為公子裳。
   ・・・我朱色なら、まさに陽明.公子の裳と為す.

 四月秀,五月鳴蜩,八月其穫,十月隕
   ・・・四月姫萩出穂,五月蝉鳴き,八月其れ収穫し.十月墜落す.
 一之日于貉,取彼狐貍,為公子裘。
   ・・・一月行きて貉なり.彼の狐と狸を取りて,公子の皮衣と為さん.
 二之日其同,載武功,言私其,獻于公。
   ・・・ニ月其所に一同会し,武功を継承し,猪子は私用に,成猪は公へ献上.

 五月斯螽動股,六月莎振羽,
   ・・・五月イナゴ股脚動かし,六月バッタ羽振るわす.
 七月在野,八月在宇,
   ・・・七月野に在り,八月軒に在る.
 九月在戸,十月蟋蟀入我牀下。
   ・・・九月戸口,十月コオロギ我寝床下.
 穹窒熏鼠,塞向戸。
   ・・・覆いて塞ぎ鼠を燻蒸し,出窓を塞ぎて,戸口の隙間は泥〆.
 嗟我婦子,曰為改
   ・・・アア!我妻子よ.歳を改める為にと謂わねば.
 入此室處。
   ・・・此の室内に入って過ごそう.

 六月食鬱及,七月亨葵及菽,
   ・・・六月李と野葡萄を食べ,七月野菜と豆に火を通す.
 八月剥棗,十月穫稻。
   ・・・八月棗を剥き,十月稲の収穫.
 為此春酒,以介眉壽。
   ・・・これを春酒に醸し,以て寿者を敬う.
 七月食瓜,八月斷壺,
   ・・・七月瓜を食し,八月壺瓢箪を切る.
 九月叔苴,采荼薪樗,
   ・・・九月麻の実拾い,苦菜を選び取り,どうでも良き木を薪にす.
 食我農夫。
   ・・・我農民達を食べさせる.

 九月築場圃,十月納禾稼。
   ・・・九月乾燥圃場を築き,十月穀物を納める.
 黍稷重,禾麻菽麥。
   ・・・黍,稷,早生と晩生,粟,麻,豆,麦.
 嗟我農夫,我稼既同,上入執宮功。
   ・・・アア!我農民達よ.我穀物はすでに完了.宮内に入って執務に精出し.
 晝爾于茅,宵爾索綯。
   ・・・しかして昼間は茅刈,宵には縄綯い.
 亟其乘屋,其始播百穀。
   ・・・速やかに屋根に乗っての仕事を,そして穀物の種蒔きを始めなければ.

 二之日鑿冰沖沖,
   ・・・二月氷の切り出し、"沖沖"と。
 三之日納于凌陰,
   ・・・三月陸の日陰の室に納め,
 四之日其蚤,獻羔祭韭。
   ・・・四月,朝はやく出して,羊を献上,韮もお供え.
 九月肅霜,十月滌場。
   ・・・九月身が引き締まる降霜,十月作業場洗滌.
 朋酒斯饗,曰殺羔羊。
   ・・・樽酒2つで饗宴.子羊も屠って.
 躋彼公堂,稱彼
   ・・・彼の公会堂に足を運び,祝宴酒器で乾杯.
 萬壽無疆。
   ・・・"限りなく長生きしますように"

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