■■■ 「說文解字」 卷三 を眺める[11]  ■■■
巻三での「詩経」の引用一覧作成には梃子づった。と言っても、時間を喰ったというほどのことではないが。

正しい選定か否かとか、表現内容を調べるつもりはないから、探せばたちどころに該当していそうな箇所が見つかるものと考えて進めていたが、似ている箇所と思しき句がありそうに無いというに過ぎない。
  𧬨[言+歲] 有𧬨其聲

この文字の字体は全巻を通して見ていればどうということも無い一般的な構成の造字。
 口┐
 辛┴言┐
┌───┘
 弋─戊─戌┐
 𣥂────┴┐
 止─────┴─歲┐
└─────────┴─𧬨

しかたないので、𧬨の同義異字とされている。辛を省略している噦[口+歲]に代替されたのだろうと見たが、入れ替えたところで似ていそうな句が無い。

もともと、この文字の用例は熟語的なので当然ではあるものの。
  噦噦 乾噦 噦噫
重畳になるとオノマトペで鳥の鳴き声を意味していそう。詩で使用するとなると、緩い言い回しで節をつけて軽く発声している情景を表現していることになりそうだが、あくまでも、そのイメージは深幽昏暗ということになろう。
この辺りに言葉の使い方の原点があり、詩歌はそれを受け継いでいると言ってよさそう。

従って、「詩経」引用が多いということ自体が「說文解字」の依って立つイデオロギーを示しているとも言える。こちらの思い込みを壊すが如くに、儒教的統制の下での文字世界には、必ず、底流として、精神的自由を重視する文字使いの動きが存在していることを示している訳で。

現代人はどうしても辞書の掲題文字の"語"(字義ではなく、文脈依存で意味を示す表現。)としての用例表示を思い浮かべてしまうが、「說文解字」のメインテーマはそこにはないということになろう。極言すれば、文字表記は滅茶苦茶だゾ、と示すことこそが目的と云うことになろう。
詩歌はある程度の韻を踏むことこそが重要であって、類似音や関連言葉、はたまた暗喩的な当て字など、言葉はいかようにも変化し得ることを示すことに眼目があると言ってもよさそう。換言すれば、こうした自由度を容認しないと、儒教的官僚統制秩序は崩壊してしまうと見ていることになろう。

さて、その噦だが、こんな風に使われている。・・・
 君子至止 鸞聲噦噦[「詩經」庭燎]
   (君子が到着し、近くで何時もの様に知らせの音が鳴った。)

 其旂茷 鸞聲噦噦[「詩經」泮水]
 噲噲其正 噦噦其冥[「詩經」斯干]
 不敢噦噫[「禮記」內則]


螽斯羽詵詵
天難ェ斯 ⇒忱
詁訓
譪譪王多吉士 ⇒人
誐以溢我 ⇒假
謍謍青蠅 ⇒營營
無然詍詍 ⇒泄泄
翕翕訿訿 ⇒潝潝
善戲謔兮
蟊賊内訌
𧬨有𧬨其聲 ⇒n.a. (鸞聲噦噦)
民之譌言 ⇒訛
巨業維樅 ⇒虡
鞹鞃淺幭
𩱧亦有和𩱧 ⇒羹
兄弟鬩于牆
𠬢𠬢 ⇒挑
𨽿𨽿天之未陰雨 ⇒迨
何戈與祋
服之無斁
牧人乃夢
營營青蠅 止于棥 ⇒樊

㗊舌干𧮫只㕯句丩古十卅言誩音䇂丵菐𠬞𠬜共異舁𦥑䢅爨革鬲䰜爪丮鬥又𠂇史支𦘒聿畫隶臤臣殳殺𠘧寸皮㼱攴教卜用爻㸚 

巻二 

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