■■■ 「說文解字」 卷八を眺める[4]  ■■■
巻八は、メインの<人>部首が2桁の部首に連結することになると、とんでもなく広範囲に展開してまとまりがなくなりそうに思ってしまうが、そういうことでもない。<人>→<儿>を主脈としており、他は付属的存在として扱うので、系譜的に一塊の様相を呈する状況にまとめあげているからだ。

この辺りの「古事記」用例は以下の如し。
①<人>→巻九
①<人>→②<𠤎>→③<匕>┤
"匕": 非使用
   "頃": 「頃者 赤海鯽魚 於喉鯁 物不得食 愁言・・・
   "卓": 貢上手人韓鍛 名卓素
①<人>→②<从>→③<㐺>┤
"㐺": 非使用
   "聚": 乃悉追聚鰭廣物  將待擊云而聚軍
         然不得聚軍者 聚軍 不得聚者
         選聚軍士中力士輕捷而宣者

①<人>→②<从>→③<丘>┤
"丘": 非使用
   "虛": 既違正實 多加虛僞(序の漢文)
         天御虛空豐秋津根別 虛空津日高・虛空津比賣命
         自虛翔行

①<人>→②<从>→③<北>┤
"北": 御陵在畝火山之北方白檮尾上也
①<人>→②<从>→③<比>┤
"比": 475用例
①<人>→②<𡈼>→③<重>┤
"重": 18用例
①<人>→②<臥>┤
①<人>→②<身>→③<㐆>┤
"重": 非使用
   "量": 時量師~ 其持所切大刀名謂大量
         避上下衣服量身高

①<人>→②<衣>→③<裘>┤
"裘": 非使用
①<人>→②<老>
①<人>→②<毛>→③<毳>┤
"毳": 非使用
①<人>→②<尸>→巻八傍流
①<人>→②<儿>→巻八主流→巻九・巻十一

要するに、さっと一瞥できる程度の文字数でしかない。「說文解字」が大部だと考えてしまうのは、あらゆる資料を渉猟参酌して親字5万字に纏め上げた語諸橋轍次:「大漢和辞典」のイメージを被せてしまうからだろう。編纂上の構造化の流れを理解し、漢籍で見慣れている文字だけをピックアップすれば、なんということもない。
(この書の部首とは、現代漢和辞典の如く、文字に往き付くための分類ではない。あくまでも、文字社会の秩序観を提起しているのであって、それを読み取ろうとしないのなら眺める意味は薄かろう。尚、漢和辞典の部首設定は、思想性は極めて薄い。現代人の漢字使用に当たっての実用性を最優先していると見て間違いない。)
上記の③層目は、主流<儿>系・傍流<尸>系を除くと、8部首あるものの、部首文字以外に部首に属すのが1文字しかない場合が多い。・・・匕+8 㐺+3 丘+2 北+1 比+1 重+1 㐆+1 裘+1 毳+1 (傍流:尺+1 尾+3)
  


人𠤎匕从比北丘㐺𡈼重臥身㐆衣裘老毛毳尸尺尾履舟方儿兄兂皃𠑹先禿見覞欠㱃㳄旡頁 

├┐巻四
𠬪


𣦼
├┐

│           └─⑧⑨ ⇒巻五〜七

│ 巻八

├┬┐
││├┬┬┐
│││││𠤎
││││
││││├┬┬┐
││││③③③③
││││比北丘㐺
│││𡈼
││
│├┬┬┐
││││
│││
││├┐
│││
││

│├┐
③③
尺尾
├───────── ⇒巻九

├┬┐
││├┬┬┬┬┬┐
││③③③③③③③
││兄兂皃𠑹先禿見

│├┬┐
④④④
㱃㳄旡
│ └─────── ⇒巻十一
──────── ⇒巻九
     

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